虐げられた少年と運命の逆転

にゃんポコ

第1話村の孤児



俺の名前はダリウス。貧しい村で育った孤児だ。村人たちは俺を、「魔物の子」と呼び、目を逸らす。幼い頃から、俺の心には悲しみと憎しみが根付いていた。


空は薄曇りで、冷たい風が肌を刺す。俺は今日も、村のはずれにある廃屋で過ごす。ここは、俺にとって唯一の隠れ場所だった。周囲の村人たちから差別され、蔑まれる日々の中で、この廃屋は一つの逃げ道だった。


「ダリウス、早く出てこい!」


外から聞こえる声は、いつものように村の子供たちのものだった。彼らは俺を見つけて悪戯をすることに夢中だ。俺を嫌う彼らに構われるのは嫌なので、ただ静かに身を潜めた。


村の広場では、今祭りの準備が進んでいる。人々は笑顔を浮かべて、楽しそうに話している。しかしそんな楽しい雰囲気が、俺の心を重くする。俺には恵まれた時間などなかった。俺の存在は、この村にとって、何の価値もないのだろう。


その時、俺の視界に一冊の本が目に入った。古びた表紙の魔法書だ。名前も読めないほどに擦り切れ、埃をかぶっていた。しかし、その本からは、まるで強い力が感じられた。


本を手に取ると、背表紙がパラリと開く。そこには何やら神秘的な文字が並んでいた。「力」という言葉が、異様に響く。俺は心惹かれ、その内容を読み始めた。


「すべての力は、条件を満たすことで目覚める。」


目が覚めたような衝撃を受けた。これか、これが俺の求めていた力なのか! 俺はこの村で、誰一人として手に入れられない力を持つことで、復讐を果たす事ができるかもしれない。村人たちを見返すことができるかもしれない。


その瞬間、周囲の音が途切れ、心の中で何かが燃え上がった。誰にも理解されず、誰からも愛されない俺の存在に、ようやく意味が見えてきた。復讐の炎、そして力を得ることで、この村を変えることができる。


しかし、今の俺に力を与えるには、まずは「条件」を満たさなければならない。どんな条件なのかはわからないが、俺はそのためにすべてを捧げる覚悟ができていた。


「俺はただの影ではない。俺は、自らの運命を変えてみせる!」


心の中に芽生えた決意は、雪解けの春のように、徐々に温かさを持ち始めた。次第に冷静さを失い、俺の中で取り憑かれるような情熱が燃え盛る。俺は村を出ることにした。俺の力を試し、条件を満たす旅に出よう。


この瞬間から、俺の人生は変わる。俺の中に眠る力がどれほどのものか、試してみたい。逃げ癖がある俺に、初めての挑戦が待っているのだ。


村の外れから、ダリウスは力強く一歩を踏み出した。運命の扉が、今、ゆっくりと開かれようとしていた。


---


次回へ続く。


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