おかしな横嶋くん【BL/ギャグ】
最近、彼の様子がおかしい……。
「おい、葛城!」
「何?横嶋くん」
「今忙しいからパン買ってこい!」
そう言って、スマホゲームに夢中で忙しいとかほざ……いや、仰って人をパシリにしたり。
「おい、葛城」
「パン買って来たよ!カツサンドでいい?」
「ノート」
「あっ、写す?横嶋くん授業中寝てたも…「よろしくー」
僕にノートを手渡して「写すの面倒くせぇから、お前がやれ」の合図を出したり。
「おーい、葛城?」
「はい!ノート写し終わったよ?5教科全部は意外と大変だっ「俺さぁ、今日はあんま動く気しねぇんだよなー」
「……あぁ、掃除当番ね。代わりにやっておくよ」
「おう。サンキュー」
面倒くさがりでよく当番代理をさせられる。
そんな自分勝手な横嶋くんが……。
「葛城!」
「何?横嶋くん。あっ、ノート写す?それとも飲み物買って来る?もしかして掃除当番代わって欲しいとか?」
「いいや、どれもやらなくていい」
「そっか、じゃあ何が……」
急に僕の頭をクシャリと撫でて。
「ん。いつもの礼」
それだけ告げると、スタスタと友人達の処へ行ってしまった。
いや、おかしすぎるだろっっ!!
色々やってあげても顔色一つ変えず、さも当たり前の様な横嶋くんが……。
たった今、ほんのり笑って僕の頭を撫でていく。
有り得ない。
あんなのいつもの横嶋くんじゃない!!
しかも、それだけじゃない。
「おい、葛城」
「横嶋くん何かっ…あ、お昼!購買に買い物だね?!そうだよねぇっ!!?」
「いや、もう買ってきたわ」
「ええっー!!」
思わず驚きを隠せずに声が出てしまった。
横嶋くんは「どうした?」と言いたげだったけど、僕は何でもないよと誤魔化す。
だって初めてだもの。
君が自ら購買に買いに行くなんて……。
「それより横嶋くん、僕に何か用事?」
訊ねると、横嶋くんは買い物袋から焼きそばパンを一つ取り出す。
「ほら、これやるよ」
そう言って手渡された焼きそばパンを見つめて固まる。
「えっ…僕に?」
「おぅ」
「は?えっ!?なんでっ?!」
またしても本音が出てしまった。
横嶋くんはキョトンとした顔で「はぁ?」と呟き、普通に告げた。
「なんでって、別に…いつもの礼だけど?」
最近それしか言わないよね……君。
え、なに、君ってそういう人だったの?
まさかの元から良い人でした的なオチ?
今まで凄い偏見な目で見ていたけども。
僕の中の横嶋くんはサル以下だったけど、チンパンジーぐらいにはランクアップしたくらい偏見持っていたけども……。
素直に「ありがとう」と御礼を言って受け取ると、横嶋くんは「じゃあ」と友人達と屋上に向かった。
▽
そういう日が続き、段々と横嶋くんがホントは糞なんかじゃないと思えてきた頃。
「おーい、葛城ー」
「何…ッ!?」
珍しく屋上に呼び出されて行ってみると、いきなり名前を呼ばれて振り返ようとした時、急に背後から抱きしめられた。
「よ、横嶋くん…?」
今までこんな事は一度たりともなかった状況に困惑する。
「どうしたの?僕に何か……」
わけを訊こうと横嶋くんの顔を見ると、彼が手の甲で僕の頬を撫でた。
えっ…何、その仕草?
瞬間、横嶋くんが僕の顎をクイッと持ち上げ、あれよあれよという間にキスされた。
は?
理解するのに数秒掛かって、顔が徐々に蒼白となる。
「うわあああっ!?」
「うぉっ!?」
大声を上げたら横嶋くんも僕に驚いていた。
「なななな、なんで、キキキ~~~!?」
「あ?」
動揺して上手く口が回らない。
横嶋くんは訝しげな顔で僕を見ると、平然とした態度で言った。
「なんでって、礼だよ、礼!」
「え!?」
んなわけねーだろっ!!?
そうツッコミを入れようとしたら、またしてもキスされた。開いていた口に横嶋くんの舌が入ってくる。
うわっ…濃厚っつか、ちょっ、、ま、ヤベェ…苦しっ死ヌゥッ!!
人生初のキスは舌入りのハードなモノだった。
それから数分間、何度も角度を変えてやっとこさ離れたキスに僕は息を荒げていた。
「ハァァァ…よ、よ、横嶋くん…君って奴は……」
「何興奮してんだよ?キスぐらいで」
「違うよっ!苦しかったんだっ!!キスなんて初めだし、息継ぎ出来なくて死ぬかと思ったよ!」
怒る僕に横嶋くんはフッと笑って頭を撫でる。
そんな彼に、何故このような事をしたのかと尋ねる。
「横嶋くん。なんでキ、キ、キッスなんかを……僕に?」
「キッスってガキかよ?だから礼だって……「普通は男同士でやらないだろっ!!?ここ、日本だぞっ!!」
やっとツッコめた。
内心でガッツポーズを決めながら、横嶋くんを見ると、彼は撫でていた手をピタリと止めて口を開いた。
「……お前、前に言ってたろ?」
「え?」
───それは、たまたま女の子の話で盛り上がっていた横嶋くん達を横目でぼんやりと眺めていた時の事。
「葛城~お前はどういうタイプが好きなん?」
「えっ、ぼ、僕……!?」
唐突に話を振られて咄嗟に答えていた。
「い…いつも一緒にいてくれる…優しい子、かな?」
「ギャハハ!お前、横嶋のパシリかボッチだもんなー?」
「言えてるー!」
あのあと散々笑い者にされたけど、何故あの時の話が今されているのだろう……?
不思議に思っていると、横嶋くんは照れくさそうに呟いた。
「お前がそう言ったから……その、」
「ん?」
この感じはもしや────ピンときた僕は迷いも無く訊いた。
「もしかして横嶋くん、僕の事好きなの?」
直球過ぎるその質問に、横嶋くんは頭から湯気が出そうな程に赤面する。
まさかの反応に僕は呆気にとられた。
うわぁ……こんな横嶋くん初めてみた。
「えっ…てか、キスは普通に出来るのになんで好きなの知られて赤面するんだよっ!?」
「バッ……うるせーな!ほっとけ!!」
顔を背ける横嶋くんに色々とツッコミたい事はあったが、その前に彼がボソッと呟いた。
「……お前はどうなんだよ」
「え、それって……」
「好きかどうか聞いてんだよ!葛城、どうなんだ」
真剣な眼差しで僕を見つめる横嶋くん。
僕はふと考える。
僕は横嶋くんの事を……、暫く考えて答えが出る。
「ゴメン、よく分からないや」
これだった。
僕は別に横嶋くんを嫌いじゃない。
かと言って、好きだと言うのも違う気がする。
横嶋くんは僕の返事に何処か納得した様に「そうか」と告げて、背を向けながら歩き出す。
僕はその去りゆく背中に思わず声を上げていた。
「横嶋くん!今はまだ分からないけど、いつかちゃんと答えを出すから!!それまでは今の関係を続けよう?君のキ…キッスは嫌いじゃなかったよ!!」
そう言うと、横嶋くんは振り返りニッと笑った。
「おう。待っててやるからなるべく早くしろっ!」
横嶋くんは、やっぱり横嶋くんだった……。
▽
次の日、横嶋くんはいつものように僕を呼び出す。
「おーい葛城!」
「何?横嶋くん。パンでも買ってくる?それともノート?」
手招きする横嶋くんに近付くと、いきなり胸ぐらを掴まれキスされた。
「ン”ンッ……っ、横嶋くん…!?」
慌てて離れると横嶋くんはフッと不敵な笑みを見せつけ言い放つ。
「俺は諦めてねぇからな……?」
変な処が大胆な横嶋くんに、僕は何も言えずに心の中で呟いた。
あぁ。
横嶋くん、君って奴は。
ここが教室だって事忘れてるよっっ!!!!
僕らの関係は瞬く間に学校中に知れ渡り、噂が噂を呼んで結局付き合う事になったのは言うまでもない。
終
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