前世の呪解【BL/ギャグ】

一度目の人生は生まれながらに孤独だった。


二度目の人生はそこそこ平凡で楽しかった。


三度目の人生は裕福だったけど退屈だったかな?


四度目の人生は色々失敗しちゃって悲惨な末路を迎えて。


「五回目は……」

「人生ゲームの話か?」


そう言われてフフッと笑う。


「いやいや、これはオレの前世の話だよ!」

「ふーん……」


彼は興味無さげに呟いた。


六回目は好きなヒトと駆け落ちし。


七回目は結ばれ無いからと無理心中。


八回目は無理矢理にでも関係を築こうとして。


九回目は一度も出会えずに。


すると、彼は訝しげな顔をした。


「途中から主旨変わってない?」

「何が?」

「前世の話は何処行った?」

「えっ、前世の話だけど……」


そう言ったら彼が『はっ?』と変な顔をした。


「いやいや、前世の話じゃ無いだろ!?」

「何言ってんの、前世の話だってば!」


間違いないでしょ。


オレが言ってるんだもの。


「違う。そうじゃなくて……」

「じゃあなんなのさ?」


彼は困惑気味に呟いた。


「それは、その……どちらかというと恋の話だろ?」


その答えにオレは目を見開いた。


「えっ」

「違う?さっきからずっとさぁ……」


好きだった奴との話になってるってさ。


「それで?」


無言のオレに彼が言う。


「何が?」

「続きは、どうなったんだよ……?」


どうやら前世の話の催促らしい。


「十回目の話?」

「うん……」


それは──────。


「現在進行中」

「えっ?」

「だから、十回目の人生は今のオレ自身なの!」


そう言ったら『そうか』と返された。


「叶うと良いな……」

「何が?」


彼は見透かしたように告げる。


「前世の恋」


オレはその言葉に瞼を閉じた。


「どうだろう……今回も駄目かも」

「なんで?」

「だってその人、恋人になれそうもないから!」


笑って言ったら、彼は眉を潜めて哀しそうな顔をした。


「そんな顔するなって!」

「でも……」

「仕方無いだろ?人生なんてそんなもんだよ」


諦め気味に呟くと、彼は暫く何かを考えてから口を開いた。


「いや。オレも手伝うから成功させよう!」

「はっ?」

「諦めたらホントに終わるぞ?いいのか!?」

「いや、だから……」

「諦める前に行動あるのみだろ!」


急に火が着いた彼に困惑する。


「いやいや、あのね?ホントにいいからそういうの!」

「いいや。良くない!!」

「いいって!」

「駄目だ。告白するぞ!!」

「ちったぁ落ち着けよ頑固者ッ!!」


互いに声を張り上げながらも一旦冷静になった。


「いいか?コッチにはこっちの事情があるんだよ!」

「けどさぁ……」

「“けど”じゃないの! 」


不服そうな彼を制止させ、事実を話す。


「告白も何も、相手に迷惑だろ?」

「なんでだよ?告白ぐらいなら別にいいじゃな「相手は男だぞ」

「……」


先程までとは打って変わり、今度は黙り込んでいた。


「な?迷惑だろ」

「うーーん"ん"ん"〜〜〜」


それから唸り声を上げ、腕を組み眉を寄せてただ只管に頭を傾げている彼。


ホラね。


普通はそうなるだろうよ。


「いや、ちょっとは……」


またなんか言い出したよ。


「相手はノンケで可能性はゼロだっ!」


そう言ってやったら彼は撃沈した。


「だ……駄目かなぁ〜?」

「駄目も何も、今世は最初から終わってんだよ」


それから溜息を吐いて項垂れる彼は、オレを心配そうに見つめた。


「悲しいなぁ……」


ポツリと告げるその言葉に眉を下げて彼を見る。


「まっ、来世(つぎ)に期待しとくさっ!」


そう告げれば、ボソッと彼が呟いた。


「オレだったらOKしたのに……」

「はっ?」


彼は残念そうに笑っていた。

オレは咄嗟に彼の手をとった。


「それ、ホント!?」

「えっ?」

「お前、オレでも付き合ってくれんの?」

「まぁ……うん?」


彼の承諾に、オレはおもいっきり彼を抱きしめる。


「じゃあ付き合って!お願いッッ!!」

「えぇっ!?前世の想い人は……!?」

「そんなことよりお前が良いッ!!」

「はぁっ!?」

「一生大事にするからッッ!!ねっ!お願いしますッッ!!」


腑に落ちないという彼に猛烈アタックした結果、やっと付き合って貰えた。

彼は仕方無いという顔をしていたが、内心満更でもなかったらしい。


「ところで、あの前世の話って結局ホントだったのか?」


彼はまだ拘っていたが、オレは笑ってはぐらかした。


「さて、どうでしょう……?」


それは前世が知っている。






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