罰ゲーム【BL/ギャグ】

いつもトランプゲームで負けている友人がいた。


なのにソイツは負けてもへのかっぱで、なかなかにつまらない男だった。


ある時、その友人と放課後たまたま残っていたので、またトランプゲームをして遊んでいた。


案の定、友人はそこまで強くない俺にさえ負け続けた。


そして負けたことをヘラヘラと笑っていたので、俺はある提案をした。


「じゃあさ、今度は罰ゲーム付きでやろう!」

「罰ゲーム?」

「あぁ。負けた方が相手の言うことを何でも聞くんだ!」


その提案に友人は暫く何かを考えた後、承諾した。


これで少しは楽しめる。


俺はそう期待した。


勝負するゲームはババ抜き。



俺はトランプを切り、自分と友人に配り終えると、手札を見る。


どうやらjoker【ババ】は友人の手札にあるようだ……。


同じ数字を省いて余ったカードを広げると、友人も同じくカードの裏面を此方に見せている。


「じゃあ、始めるか!」

「いいよ」


ジャンケンをして俺が勝ち、友人のカードを引いた。


そうして互いにカードを引き合い、順調にラリーが続く。


手札が徐々に無くなっていくと、段々と緊張が走り出す。


今の今までババは引いてない分、余計に慎重になった。


何より、友人の雰囲気が何時もに比べて真剣味を帯びていた。


そりゃあ、誰だって罰ゲームは嫌だろう……。


だから友人も必死なんだと確信した。


とうとう、手札に残るカードは二枚。


友人のカードから一枚引くと、現れたのは望んじゃいないババだった。


一枚多くなってしまった手札を切って翳し、ポーカーフェイスを装い友人を見据える。


友人は手を伸ばしてカードを選ぶ。


指先が二三回カードの上を行き来した後、一枚を掴んだ。


その瞬間、俺は喉を鳴らした。


友人の指が掴むカード、それはまさしくババだった。


悟られないよう、わざと顔を険しくさせる。


後が無い俺にとって、ババだってバレさせなければ此方にもまだチャンスがあるからだ。


今か今かと友人が引くのを待ちわびていると、友人は何を思ったのか、指を一瞬放して小さく呟いた。


「……ホントはね、もう分かってるよ」

「えっ…?」


友人の手が一枚のカードを引いた。


「でも、今は負ける気ないから……!」


そう言った友人の手にはハートのエースがこれ見よがしに翳されていた。


「なっ…!」

「ホント、君って分かりやすいよね?」


積み重なったトランプに放り投げた友人は不適な笑みを浮かべる。


「何回もやってるウチにだいたいの癖が分かってくるんだよ。その中で見つけたのは君の顔芸と喉を鳴らす仕草かな?」

「ッ……」

「ババに触れた時に喉を鳴らしたでしょ?そして違うカードであるかのように顔を歪ませた」


そこまで読まれていたとは……。


苦虫をかみつぶしたような顔をすると、友人に『悔しそうだね?』と心を読まれた。


「うるせー!!ていうか、そんな癖が分かってんならいつでも勝てるじゃんか!なんでいつも負けてヘラヘラしてんだよ!?」

「だって、たかがゲームだし……ムキになるような事でもないだろ?」


大人な反論に返す言葉が見つからない。


無言になる俺を余所に、友人は散らばっているトランプを掻き集めて束ねると、机上に置いて頬杖をつきながら笑顔で見つめてくる。


「な、何だよ……」

「さて、勝負も着いたことだし。早速始めますか!」

「は?」


何を、と聞く間もなく。


友人は立ち上がり俺に近づいて、いきなりキスをした。


「んン”ッ……!?!!」


思わず友人を押し退け文句を言う。


「なっ、何すんだよ!」

「罰ゲームだろ?」


しれっと告げる友人に俺は開いた口が塞がらない。


「何でも言うこと聞くんだよねー?」

「えっ、いや、あの……」


少し苛立った様子で近づいてくる友人に若干恐怖を覚えた俺は、後ずさりながら間合いを取る。


だが、背後には壁があり、すぐに追い詰めらてしまった。


「君が言ったんだよ?罰ゲームするってさぁ……」

「いっ…言ったけど、たかがゲーム如きにムキにならないんじゃ無かったっけぇ?」

「それとこれとは別だよ。だって─────」



罰ゲームなんて都合の良いモノ、わざわざ逃す奴いると思う?


そう笑顔で告げた友人にひん剥かれて美味しく食べられた俺は、それ以来ゲームが恐怖症となった……。





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