モテる奴の悩み【BL/片思い】
僕の親友は三度の飯より女の子が大好きで、常日頃から周りに花を侍らせていた。彼は日焼けした肌に金髪と見た目はチャラいが、顔が整っている為、女の子達には事欠かない。ましてや女の子の方から自然と集まってくるので、彼的にも都合が良いのだろう。今日も今日とて甘いセリフを吐いては、女の子を虜にしていた。
「“優”(すぐる)は本当に女の子が好きだね…?」
「だって可愛いし、癒されるじゃん!?」
「ま、まぁね…」
僕はよく分からない彼の返答に知ったかぶりをする。なんせ優と違い、僕は女性経験が無いのだ。少ない処では無い。微塵も無いのだ。優みたいに整った容姿も無ければ、甘いセリフさえ吐けないし、根暗でモヤシな俺には女性という者が高嶺の花なのだ。なのに優は己の生まれ持った才能で、宛も誰でも分かるだろ?みたいに言ってくるからたちが悪い。
「俺、やっぱり世界で一番女の子が大好きだわ~。女の子がいないと生きていけな~い!!」
「あぁ、そう……」
女の子にキャアキャア言われてデレデレしている優を見ながら小さく溜め息を吐いた。
僕が優と知り合ったのは、高校に上がってすぐの頃。
当時、“スゲェ奴がいる”って噂になっていたのが優だった。優は当初から女の子にモテまくっていて、『スーパーモデル来日』とか、『歩くハーレム』とか呼ばれていた。僕はそれを遠巻きに眺めていただけだったけど、優と同じクラスになり、席が隣同士になったのをきっかけに仲良くなった。
初めの頃は他愛ない会話をしていた。授業の事とか、天気の事とか、モテるって凄いね!みたいな事とかそんなの。今みたいに仲良くなるまであまり時間が掛からなかった気がする。
きっと馬が合ったんだろうな。見た感じは真逆なのにな……。
<そういえば、昔はあまり女の子に好き好きオーラとか出していなかったな>
そんな事をぼんやり考えていると、優が僕に話を振ってきた。
「なぁ、洋ちゃん!洋ちゃんも一緒に遊ばない?」
「へっ?悪ぃ、何が……?」
考え事をしていた矢先の質問を聞き返すと、周りに集る女の子達が茶化す様に返答した。
「すぐる~洋平クンは遊びに行かないって!!」
「そーそー!」
それと同時にただならぬ威圧を女の子達から感じ取る。彼女達の目は恐ろしいほどに座っていた。
「ねっ。洋平クン……?」
「…ハィ」
彼女達に半ば強制的に不参加への押し印を迫られた僕は、なすすべ無く返事をする。優はそれに『なら仕方ないね~』と、女の子達を引き連れて行ってしまった。僕は優に二度目の溜め息を吐いた。
〈優よ。女の子は可愛いし、癒されるんじゃないのかよっ……!!〉
僕はますます女の子達から距離を置きそうだ。
▽
俺は昔からこの容姿のせいで、色々苦労した。顔が良いとよく周りから羨ましがられるのだが、そんな事は無い。小学校の頃はよく告白されたり、ラブレターを貰ったり、女教師や女の子からは色々とちやほやされていた。それはそれなりに嬉しかった。
だけど。
その分、同性からの妬みや僻みが強く、男友達は中々出来なかった。遊んだり悪ふざけしたり、男同士で馬鹿騒ぎするのに毎日憧れていた。それから中学に上がると、俺は髪を染めたり、ピアスを空けたりして女の子が取っつきにくくなる様にした。
しかし、相変わらず女の子達は近づいてきた。
その頃から女の子と付き合い始めた。デートしたりキスしたり、男女の駆け引きを何回も繰り返して女性の扱いを学び、今の俺は出来上がった。今となりゃどんな子でも簡単に落とせる。周りに侍らせてる女の子を見渡してみれば一目瞭然だ。
「ねぇ、優。何考えてんの?」
「ん~?」
傍らの女の子を引き寄せ、腰に手を回す。それから耳元で優しく囁いた。
「お前のコト」
「もぉ~すぐるったら……!」
腕に纏わり付く女の子に微笑み掛ければ、顔を赤らめ幸せそうに笑う。
才能があるなら思う存分使えば良い……。
以前、彼が褒めてくれたものだ。
「女の子にモテるって凄いね!」
彼は笑って言ってくれた。嫌味でもなく、ただ純粋に。
「凄くないよ。これのお陰で俺は……」
「何言ってんだよ!あるもんに越したことないって!!そういうのは生まれ持った才能ってやつだろ?ならさ、ラッキーくらいに思えばいいじゃん!俺は良い才能だと思うよ?」
彼がそう言ってくれたから、今の自分は昔ほど後悔しなくなった。
あぁ、でも。
少しだけ後悔している……。
俺のこの才能に、“彼を落とす方法が何処にも無い”という事。
終
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