BL短編集

冬生まれ

アイラブユー【BL/死ネタ】

アイラブユーと彼が言った。

俺は隣でそんな彼を見つめる。

彼はもう一度、アイラブユーと今度は空に向かって言った。

彼の声は少し掠れていた。

そんな彼から目を逸らして空を見つめる。

雲ひとつ無い綺麗な青空だった。

俺は瞼を閉じて昔を思い出す。


よく遊んでいた公園。


一緒に登下校していた畦道。


二人揃って落ちた高校。


互いに金が無くてシェアしてたアパート暮らし。


待ち合わせしていた喫茶店。


瞼を開けるとそんな思い出が蘇り、消えていくのを感じた。

彼は隣で未だに空を見続けていた。

その横顔が何だか切なくて、俺は俯きながら呟いた。


「……ミートゥ」


彼は瞼を閉じて、静かに涙した。

そうしたら青空なのに急に雨が降ってきて、彼の涙を隠してくれた。

彼は雨に打たれながら少し眉を顰めて小さく笑う。


「ホント、気まぐれな奴……」


そう呟いて彼は近場の建物に戻っていく。

俺は彼の後ろ姿にいつかの約束を思い出した。


「───もしさ、いつかオレとお前に好きな奴が出来るじゃん?その時の為に互いの告白を考えよう!」「はぁ?なんだそれ……?」


人肌恋しい寒い季節に男二人で鍋を突きながらそんな会話をしていた。


「何がいいかなぁ!?」「おい、俺は考えるなんて一言も言ってないぞ?」「うーん……」「聞けよコラ!」


ビールを飲んでたのもあって、ほろ酔い気分で考えた告白。


「なぁ、まだかよ?俺から言うぞ!」「おっ、どうぞどうぞ!」「そんじゃあ……ア、アイラブユー!」「はぁ?何だよそれ~!」


笑いながら馬鹿にされたのもあり、彼を睨んで文句を言う。


「じゃあお前はいい告白あんのかよ!?」「えっ、オレ?オレはねぇ────」


あの時、彼が言った告白を今思い出す。


「これ、絶対使えよなっ!」


彼の後ろ姿が消える前にあの約束を彼の名前を叫んで大声で告げた。


「ユウキッ……世界中の誰よりもっっ、お前が一番っっ大好きだーーーっ!!」


俺の一世一代の告白に、彼は一瞬立ち止まり振り返った。

雨に打たれながらも彼に不敵な笑みを見せつけると、彼は目を見開き、それからぎこち無く笑って今度は先ほどよりも大きな声で告げた。



「あぁ……オレも大好きだった!ミサキ、アイラブユー!!」


そう言って泣き崩れる彼に、俺は最期のありがとうとサヨナラを告げた。

火葬場の煙突から立ち上る煙と彼の声は、天気雨が振る青空へと消えていった。





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