game 23. 声①
こういう時には、なぜか大学に行きたくなる。大学をサボってパブに行くようになったはずなのに、それが逆に大学へ行く原動力になるのだから、おかしなものだ。
それでも、二つほど講義を受けた頃には後悔し始めていた。
一時間講義を受けて、得られる知識量は知れている。何なら教科書や参考書を相手に自習したほうが理解できる場合だってあるし、実際教室で内職している学生もいる。講義に出ながら、別の科目の勉強をしているのだ。
そこに何の意味があるのだろう。
こんなことなら、やっぱりパブに行っておけば良かった。
今日も、サシャは来ているのかな(いや、べつに何かを期待しているわけではないけれども)。みんなでティータイムでもしているのだろうか。どんな話をしているのだろう。
そうは思っても、踏ん切りがつかずにいる。折角ここまで来たのだ、ついでだから次の講義も出ておこうかと。
「えぇーっ、うっそぉ! マジでえ!?」
うわ、ビックリした。
突然教室の隅から上がった奇声に、悠馬は思わず振り向いた。
少なくとも、ああいうのとは違う。パブで出てくる会話は、もっと落ち着いた、大人びたものだ。
例えば、そう……ケーキの端っこを取り合ったりとか? マカロンはどれがいいとか?
あれ。大人って、何だっけ。
ギャッハハハハ! バンバン。
別の隅からも奇声と騒音が発せられる。動物園か、ここは。
幸せなら手を叩こう、と昔の人は
面白かったら、面白いと。面白くなくても、面白いと。大声で笑い、手を叩き、机を叩き、自分がいかに面白がっているかを誇示することが、仲間の証しであるかのように。
あとは、いいねボタンを押すこととか。
何だそれ。毎日毎日、休み時間毎に集まって、しなければならないような話か? 学校なんて、必要なことが学べれば、それでいいじゃないか。
SNSがどうとか、何の動画がバズってるとか、ソシャゲでレアキャラをゲットしたとか。ふん、オレなんて、昨日もっとスゴイのを生で……いや、やっぱり今はやめておこう。
明日はやっぱり大学には来ずに、昼前には着くようパブに行こうと決めて、悠馬は次の講義のテキストを開いた。
一度、朝から行ったらお店が閉まっていて、やむなく引き返したことがある。閉まっていたというのは、ガラス戸の向こうにロールスクリーンが降りていたのだ。もしかしたら中に誰か居たかもしれないが、それを確かめる勇気はもちろんなかった。
いつ行っても開いているものと勝手に思い込んでいたので、ちょっとショックだった。
まあ、初めて会った時だって、三人揃って公園でチェスして遊んでいたわけだけれど。
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