第26話:初めての仲間
「私の名前はティアと言います。これからよろしくお願いします。」
彼女はあんな馬鹿な事をしたのに何事もなかったように挨拶してきた。
ある意味純粋なんだろうか?
「セイシロウと言う。これからは何でも言う事を聞いてもらうぞ。」
「はい、わかりました~。」
(ダメだこの子、危機感がまったくない。)
俺達は迷宮から脱出するために、入口に戻る。
進んだ時に倒したコボルトは復活しないらしく、安全に帰る事が出来た。
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。倒したモンスターは1日経過しないと復活しませんから。」
「復活?生き返るって事か?」
「うーん、どうも最下層に転送装置があって、そこから送り込まれるらしいです。今まで攻略してきた迷宮はその転送装置を破壊する事で攻略としているみたいです。」
「最下層には悪魔がいるんじゃないのか?」
「今まで悪魔に出会った人はいないので、迷宮に逃げ込んだ事自体、勇者ヤマトの勘違いじゃないかって現在は言われてますね。」
「じゃあその転移装置の先に隠れてるんじゃないか?」
「転移装置は一方通行でこちら側にモンスターを送り込む機能しかないらしいです。もちろん、機能を解析しようとした試みをおこなわれましたが、装置が自爆して大量の死亡者が出てから、基本破壊する事になってますね。」
「ずいぶんと詳しいな。」
「常識ですよ、常識。まあ私としては別に装置壊す必要ないんじゃないかって思いますけどね。」
「それは何で?」
「だって、そうじゃないですか。壊しちゃったらモンスターの供給が止まって魔石や特殊な武器防具が手に入らなくなるじゃないですか。私達冒険者も廃業ですよ。」
たしかにモンスターを倒した時の魔石を買い取ってもらう事で、冒険者稼業は回っている。
「魔石って・・・そんなに価値があるのか?」
「何言ってるんですか?魔石という新エネルギーでどれだけ都市が発展したのか知らないんですか?」
(魔石ってエネルギーになるのか・・・しかし、未知のエネルギーを無限に生み出せる悪魔が何もせず500年間平和なのは不自然だな。)
考えごとをしながら歩いていると、いつの間にか入口の転移装置に到着していた。
悪パーティの姿はない所を見るともう帰還したのだろう。
「とにかく早く帰りましょう。」
彼女は軽快に進んで行き、転移装置に手をつくと白い光と共に消えた。
出発した時と違って、謎の呪文は必要ないようだ。
俺も手をつくと少し眩暈がしたが、気付いた時には見知らぬ広間にいた。
雰囲気は今までいた迷宮と同じだが、周りに数多くの見知らぬ冒険者が立っていた。
「遅いです。」
立ち尽くす俺にティアがそう言って、広間の扉に駆け出して行った。
俺も他の冒険者と一緒に扉へと歩き出した。
「ここは出発した時の転移装置がある広間か。」
転移先は出発の転移装置の隣の広間のようだ。
俺とはレベルの違う冒険者達がいたという事は、どの迷宮でも帰還したら先ほどの場所に転移するよう設定されているようだ。
「しかし、色々あったけど無事帰還出来て良かった。」
今までの事を思い出し、どっと疲れが出てきた。
もう部屋に帰ってすぐ寝たいのだが、そうもいかない。
ティアと共に今回の事を警備兵に上手く説明しなければいけない。
「どうしました?」
彼女ののんきな声にイラっとしたが、後少しだと自分を鼓舞した。
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