第24話:救い
癒術士ハークル優しい笑みを浮かべながら、マルトに注意する。
「とにかく手を放してください。暴力では何も解決しません。」
「・・・。」
マルトは黙って手を放すと、彼女はまた抑え込まれないように、すぐに立ち上がってハークルに礼を言う。
「あ・・・ありがとうございます。」
「すみません、乱暴な事をして・・・私の名前はハークルと申します。ランクD冒険者です。まずお名前から聞いてよろしいですか?」
「は・・・はい。私はティアと言います。ランクE冒険者です。」
「ティアさん、私達は真実を知りたいだけなんです。あなたに罪を着せたいわけではありません。本当の事を話してくれませんか?」
「その・・・さっき言った通り勘違いなんです。」
「そうですか・・・わかりました。」
彼は目線を外し、少し思案してまた話し始めた。
「最近、新米の冒険者を襲う事件が増えているのは知っていますね?」
「それは・・・はい。」
「その手口は幼稚で無計画なため、組織的なものではないと思われていました。しかし、捕まえた者のほとんどが「指示されてやった」と供述しているのです。」
「・・・。」
「あなたもそうではないですか?もしそうなら・・・あなたは何も悪くない。正直に話してくれれば、神もあなたをお許しになります。」
終始優しい口調で話すハークルは、怪しい黒い衣装に身を包んでいても慈愛に満ちていた。
(さすが癒す力を持つ癒術士だ。属性が悪であっても人を救おうとする気持ちは一緒なんだな。)
「本当に私は助かりますか?」
「ええもちろんです。あなたは救われます。正直に話してくれますよね?」
彼女は意を決したように話し始めた。
「実は・・・私は迷宮探索が上手くいかなくて生活に困っていたんです。その時声をかけてくれたのが、ランクB冒険者のミレディさんのグループでした。初めは、なぜ私のような底辺冒険者に?と疑っていたんですが、同じ盗賊ギルド出身だから助けたいからと言われて、他に信じる者もいない私はグループに所属しました。」
「ランクB冒険者という事は「疾風のミレディ」ですか?それは随分と大物ですね。」
「それからは何事も上手くいきました。なぜなら、探索に必要な人材を用意してくれたからです。私は盗賊としての腕前も上がり、生活も安定していきました。」
「なるほど、なるほど。」
「しかし、最近になって今まで用意してきた冒険者は貸出していたから、料金として金貨30枚を払えと言ってきたんです。そんな大金今の私に払えるわけがありません。もし払えないなら新人を潰して来いと・・・。」
「なぜ冒険者ギルドに相談しなかったのですか?」
「そうしようと考えましたが、もしチクったら殺すと脅されて怖くて・・・。」
「なるほど、それで今回の殺人を強要されたと。なぜ彼を?」
「リストにあった新人なら誰でも良かったんです。ちょうど彼が1人で迷宮に入っているのを見て・・・もう殺すしかないと・・・。」
すると今まで沈黙していた、悪パーティの髭面の魔術師エントが会話に割って入った。
「今までの手口がずさんだったのは計画的ではなかったからか・・・とはいえ貴様はコボルトに殺させようとしたりと、なかなか姑息な手段を使っていたな。」
「すみません!卑怯と思われても助かるには・・・これしか・・・これしかなかったんです!」
俺は当事者なのに蚊帳の外でぼんやりしていた。
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