第22話:意外な敵
俺は通路から広間を監視していたが、矢を放ってきた者から何のリアクションもない。
(もういないのか?)
もう大丈夫な気がするが、もしまだ待ち構えているといい的になる。
どうしようかと悩んでいると、声が聞こえてきた。
「お~いセイシロウ~!この辺にいるんだろ?!セイシロウ~!」
広間の真ん中で男が俺を呼んでいる。
能力鑑定すると、悪の盗賊バルクだった。
(広間に出ていくのは危険だな。)
俺は身を潜めて様子をうかがった。
「なんだ~!いないのか~!」
彼は俺からの返事がないので、帰りの通路へと引き返していった。
彼が通路へと進んで行き、ある程度時間が経つと能力鑑定のためのステータスウィンドウが消えた。
(そうか、角を曲がって障害物で遮断されたから消えたのか。)
偶然だが重要な事が知れた。
(という事は弓矢で攻撃してきた奴のステータスが消えたのもそのせいか。じゃあ、あの時逃げたから消えたのか・・・。)
あれだけ警戒してたが無駄な時間だったようだ。
しかし、これを使えば色々とうまく立ち回れるかもしれない。
(もう帰るか・・・。)
俺は警戒しつつ広間に出て、コボルトの魔石と武器防具を回収して通路へと入る。
またウネウネとした長く暗い通路を戻る事になるが、知っている道なのでランプも使わず進んで行く。
何度かの角を曲がった時に、突然後ろから首を絞められた。
「ぐぇっ!」
予期せぬ出来事に俺は完全に無防備だった。
「よう、セイシロウちゃん。俺、何度も呼んだよな?」
顔は見えなくても、声で盗賊バルクだとわかった。
しかし、前を進んでいるはずの奴がなぜ後ろから現れたのか疑問だった。
「俺は盗賊だぜ、気配を消して待ち伏せするなんて簡単よ。それでもランプを使用して警戒しながら歩いていたら見つけられたかもな。人間慣れると余計な手間を省いちまう・・・それが致命傷よ。」
さすがレベル10の盗賊という事か。
だが、魔石の指輪の効果で体に薄い魔力のシールドが守ってくれているおかげで、強く首を絞められていてもそれほど苦しくない。
後頭部を強く叩かれて致命傷にならなかったのもそのおかげだろう。
(しかし、だからといって逃げれないな。どうする?)
「さて、じゃれ合うのもここまでだ。俺に敵意はない。俺の話を聞いてくれるなら放すが・・・同意してくれるなら俺の腕を軽く叩いてくれ。」
ここで抵抗しても得はないと感じた俺は、すぐに彼の腕を軽く叩く。
「物分かりが良くて助かる。」
彼は腕を解くと、素早く闇の中に紛れた。
「その割に警戒してますね。」
「そりゃそうだ。お前の持っている獲物は危険すぎる。」
「戦いを見てたんですか?」
「ああ、それも含めて話がある。とにかくこの通路を前に進め。俺はこれから喋らないが、ちゃんと見張っているぞ。」
「進めばいいんですか?」
「・・・。」
本当にもう喋らないようだ。
とにかく彼の言うように通路をどんどん進むと広間が見えてきた。
広間には知っている顔ぶれ・・・つまりバルクを除いた悪パーティの連中がいた。
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