第19話:迷宮挑戦
迷宮の入口をくぐると、大きな広間に出た。
広間の真ん中には人の大きさほどある銀色の円柱があり、それを守るように警備員が数人立っていた。
壁際には数人の冒険者がたむろしていたが、その中でひと際目立つ集団がいた。
全員体を黒い武具で覆っており、デザインもトゲが付いている物から髑髏の文様が刻まれてるなどかなり個性的だった。
気になって能力鑑定で確認すると、、食堂で見かけたレベル10の悪パーティだった。
関わりたくないので、出来るだけ視線を合わせないようにしたが、その中の盗賊だけは俺に気付いたのかこっちに近づいてきた。
「ようセイシロウ、俺の事知ってるか?」
「ええ知ってますよバルクさん。」
もちろん知るわけがない。
能力鑑定で名前を知っているだけで関係性などは何もわからない。
すると彼は俺の肩に手をまわし馴れ馴れしい態度で、
「お前には大きな借りがあったよなあ・・・返してもらわねえとなぁ。」
と言いながら手の平を出してきた。
(金の要求?こういう連中の借りってのはだいたい言いがかりだから、相手にしないのが一番だな。)
「俺には心当たりないですね・・・勘違いじゃないですか?」
「あ・・・なんだと?お前舐めてるのか?」
彼の感情を逆なでしてしまったらしく、怒りをあらわにしてきた。
「なんですか?やる気ですか?」
今までの俺だったらすぐ謝るところだが、手に入れたばかりの刀を使いたい衝動が抑えきれず、戦いたくて仕方ない気持ちだった。
少しの間にらみ合いが続いたが、そこに大柄な男が割り込んだ。
悪パーティの戦士マルトだ。
「やめておけ。時間の無駄だ。」
さすがレベル10の戦士、凄まじい威圧感と殺気だった。
いくら気が大きくなった俺でも彼と戦うと即座に殺されるのがわかる。
「わかってるよ、こんなところでおっぱじめるほど馬鹿じゃねえ。」
バルクもそれを感じたのかあっさりと引いて握手を求めてきた。
「これからは仲良くしようぜ。」
「はい・・・わかりました。」
俺は彼ととりあえず握手を交わしたが、信用する気はまったくなかった。
「そういえばお前、仲間はどうしたよ?」
「・・・。」
「ふーん・・・1人で迷宮挑戦か。そりゃ気を付けた方がいいぜ、迷宮内じゃ何がおこるかわからないからなぁ。」
脅しだろうか?
たしかに気を付けた方がいいかもしれない。
(ここにいるとまたトラブルに巻き込まれるかもしれない。さっさと迷宮内に入ってしまおう。)
俺は銀色の円柱の近くにいる警備員に話しかけた。
「迷宮に挑戦したいのですが・・・。」
「ランクE冒険者ですね。お一人で挑戦ですか?」
「はい、そうです。」
「なら一つ下のランクFの迷宮に挑戦するのが妥当ですがどうしますか?」
「選べるのですか?」
「はい、この始まりの迷宮ではランクF~Dまでの迷宮に繋がっています。」
「わかりました、ランクFでお願いします。」
「ランクFの23~31のどれにしますか?」
「ランクFだけでそんなにあるんですか?」
「ええ、1~22までは攻略されましたが、まだ未攻略の迷宮はそれだけありますね。」
どうも迷宮というのは無数にあるらしい。
とはいえ500年で22個しか攻略出来てないのは、迷宮攻略がそれだけ難しいという事なのだろうか?
「どれにしますか?」
(どれがいいのかわからないが、すべてランクFならどれでもいいか。)
「なら31でお願いします。」
「では地図を渡しておきます。最近見つかったばかりの迷宮なので、まだ1階の地図しかありません。どんどん書き込んで報告してください。」
「はあ・・・わかりました。」
そう言われて、印刷された地図と方眼紙を数枚渡された。
(いまだに紙の地図なのか・・・そういえば昔は方眼紙に地図描いてたよなあ。)
「では、転送装置に手を当ててください。」
「転送装置?」
彼らの言う転送装置が何かわからなかったが、促す方向を見ると銀色の円柱の事のようだ。
俺が手を当てると、警備員たちは距離を取って呪文?のようなものを唱え始めた。
「アルランエグロサイメジニヘシブク」
聞いた事もない言葉だが、呪文だから理解するものではないのだろう。
そう考えられたのも束の間で、突然意識が途切れた。
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