第17話:申請

俺はまた冒険者ギルドに来ていた。

オオクラ商会で武器防具を購入したのはいいが、街中で持ち歩く事は禁止らしい。

そのため、迷宮の入口にある倉庫で保管するというルールがあり、借りるために冒険者ギルドに申請しなければならない。


(街中で武器防具を着けている人がいないのはそのためか。実際刃物持ってる奴がウロウロしている街ってやばいしな。)


俺は収納袋の能力を持っているので倉庫など借りなくてもいいのだが、それだと購入したものを隠し持っていると疑われてしまう。


「22番の方、9番の受付にお願いします。」

「わかりました。」


俺は手書きの番号札を手に9番の受付を探すが、見つからない。

一通り探すと、そもそも9番の受付窓口などない事に気付いた。


(どういう事だ?番号間違えている?)


その時白髪の爺さんが、声をかけてきた。


「ああ、君が22番ですか?」

「え?あなたは?」

「私はあなたの担当をさせてもらう、マトリといいます。今回はどんな御用で?」

「ああ、武器防具を収納する倉庫を借りたくて・・・。」

「じゃあ、こちらに来てください。」


うさんくさい爺さんだが、制服を着ているところを見るとちゃんとした職員らしい。

俺は前と同じように奥の部屋に通された。


「ではここにサインをお願いします。」

「わかりました。」

彼はテキパキと申請書類を片付けていく。


「これで申請は完了しましたので、3日後から倉庫内の20番の場所が使用可能です。警備員に身分証明書を提示すれば案内してくれます。」

「ありがとうございます。」

「あとは2,3質問させていただきますがよろしいですか?」

「なんでしょうか?」

「冒険者が最終的に目指している目的を理解していますか?」

「え?」


思ってもみなかった質問がきた。


「それは今回の申請に必要なんですか?」

「もちろんです。お答えください。」


やはり関係ない気がするが、答えないと話が進みそうにない。


(最終目的って言われてもなあ・・・迷宮の宝やモンスターを倒した時の魔石目当てじゃないのか?)


彼の質問の答えがそんな俗な答えなわけがない。

何も心当たりはなかったが、ふとある答えが頭に浮かんだ。


「最終・・・世・・・救う・・・。」

「なんですか?聞こえませんよ。」


「冒険者の最終目的は世界の危機を救う事です。」


我ながら馬鹿な答えだと思ったが、女神様から言われた言葉しか思いつかなかった。

マトリさんはそんな俺を見てふふっと笑った。


(笑われて当然だよな・・・世界の危機を救うって小学生かよ・・・。)


「ちゃんと理解しているようだね。その通りだ。」


(そうなの!?)

心の中では激しく動揺していたが出来るだけ平静を保って返事した。


「・・・もちろんですよ。当然の事です。」

「500年前に世界を征服しようとした魔王ハマンが勇者ヤマトに倒されましたが、側近の悪魔達は姿を消した・・・迷宮に逃げた奴らを滅ぼし、世界の危機を救う事こそがわれら冒険者の最終目的なのです。」

「ええ、俺もそのために冒険者をしています!」


(始めて知った・・・女神様が言ってた世界の危機ってそういう事だったのか。)


「君は中々見込みのある若者ですね。最近は勇者ヤマトが冒険者ギルドを設立した崇高な理由すら知らん連中が多い。それもこれも迷宮のモンスターを生成している魔石が強力なエネルギーになるからだ。しまいには楽して儲けれるから冒険者しているなど言う奴までいる、本当にけしからん!」


丁寧語から激しい口調になっていく、これは話とは関係ない愚痴になっていく流れだ。


(良い事を聞いた。迷宮の探索にそんな大きな理由があったとは。しかし、500年もかけて迷宮攻略が出来ていないのか不思議だな。)


「そもそも・・・」

「あのー・・・少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「まったく・・・」

「・・・。」


どうも愚痴が止まらないようだ。

結局そのまま有益な情報は得られなかったが、申請は無事終わった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る