第12話:能力鑑定

「ここが食堂か。」


食堂は冒険者の寮の右隣にあった。

場所はティーノさんがぶっきらぼうながら丁寧に教えてくれた。

外見は寮と同じように灰色の無骨な建物で、中も予想通り装飾など一つもない倉庫みたいな場所だった。

入って右側にはカウンターと厨房があり、安っぽい長机と椅子が全体的に等間隔に並んでいた。

3時という中途半端な時間のせいか、固まって食事をしている4人しかいなかった。


(人が少なくて助かった。だいたいこういう所ではチンピラ冒険者に絡まれるってのが定番だからな。)


とりあえずカウンターの奥にいた、暇そうな給仕姿のお姉さんに声をかける。


「すいません、このたび冒険者に復帰しましたセイシロウと言いますが、ここで食事をいただけるんでしょうか?」

「・・・セイシロウ?あなたセイシロウじゃない!生きていたの?いや・・・死んでたんだっけ?」


どうも俺の事を知っている人のようだ。


「どうも。」

「どうしちゃったの?随分と謙虚になって・・・まあ一度死んじゃったらそうもなるか。」


そう言ってカラカラと笑う。


「腹減ってるでしょ。からあげ定食しかないけどそれでいい?」

「お願いします。」

「じゃあ、座って待ってて。」


彼女はそう言うとカウンターの奥の厨房へと消えて行った。


(異世界と言うから何を食わされるんだろうと思っていたけど、普通だったな。いや、もしかして怪物のからあげとかかもしれん。」


少し不安を感じながら、座る場所を検討する。

出来るだけカウンターに近くて、先に食事をしている冒険者達から離れた場所が望ましい。

変に絡まれると厄介だ。

レベルが高くて無双できたら問題ないのだが。


(そういえばレベルといえば能力鑑定の指輪を持っているはずだよな。食事している連中の能力を試しに確認してみるか。」


50ゴールを出した要領でイメージして収納袋から指輪を取り出す。

一番邪魔にならない左手の小指にはめると、サイズが変化し指にフィットした。

それだけでも驚いたが、付けている感覚すらない。


(とにかくこれで相手の能力が鑑定できるんだよな?しかし使用方法なんて聞いてなかったな、相手を見たらわかるんだろうか?)


俺は気付かれないように横目で彼らを視界に入れる。

すると視界にゲームのステータスウィンドウが現れ、それぞれの能力値が映し出された。


(なるほど、視界に入れた人物の能力値がゲームのように見る事が出来るのか。)


しかも収納袋のようにイメージすると人を選んで確認出来る事もわかった。

まずは4人の中で一番大柄な男のステータスを見てみる。


名前:マルト 種族:人間 性別:男 年齢:25 属性:悪

ランク:D 職業:戦士 レベル:10

能力

力:16 知恵:8 精神力:13 生命力:17 素早さ:12 器用さ:14 運:10


ステータス画面には名前や強さなどある程度の情報が表示されていた。

(凄い!見るだけで個人情報が知れるなんて神アイテムだな。前の記憶がなくて不安だったがこれで色々誤魔化せそうだ。)


それ以外も確認してみると、戦士、盗賊、魔術師、癒術士の悪パーティである事がわかった。


(悪属性で全員レベル10で俺より格上か。これは絡まれないようにしないと。)


「セイシロウ!出来たよー!」

その時カウンターから元気よく名前を呼ばれ、食堂内に声がこだました。

俺は顔を伏せながらこそこそと、カウンターに用意されたからあげ定食を席へと運ぶ。

気になって他の4人の様子を確認すると、案の定こちら見ていた。


(目を合わせないようにすれば大丈夫だろ。)


俺は彼らの視線に気付かないふりをすると、すぐに興味を失って雑談し始めたが盗賊の男だけは俺の方をずっと見ていた。


(バルク・・・レベル10の盗賊だ。俺の事を知ってるのか?)


視線が気になったが、異世界で初めての食事は美味しく夢中になった。

からあげ定食はご飯と鳥のからあげだけで、味付けも単純な塩味だったが現代のものとほとんど相違ない物だった。


(食堂も古い建物だが、清潔だし文明レベルは高いのかも知れない。)


俺は瞬く間に食べ終わり、給仕のお姉さんに軽くお礼といい自室へと戻った。


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