第11話:住居
「ここがこれから生活していくところだよ。」
「ここですか・・・。」
俺は各種手続きが終わり、これから生活する建物へと案内された。
3階建ての薄汚れた建物で、部屋の扉が何個も規則正しく並んでおり、まるでマンションのようだった。
ダルトさんが一階にある扉をノックすると、小柄な老人がゆっくりと出てきた。
「ティーノさん、セイシロウ君が帰ってきました。」
「お世話になります。」
俺はこの世界の礼儀など知らないが、とりあえず頭をペコリと下げた。
「セイシロウ・・・誰じゃ?」
「忘れちゃったんですか?彼は3ヶ月前に死んで生き返ったんですよ。」
「いちいち覚えていられるか。辞めたり死んだりが普通じゃからな。」
「それは、そうですね・・・とにかく今日からお願いします。」
「わかった。ここからはわしが案内する。お前は帰ってええぞ。」
ダルトさんは心配そうに帰っていった。
「・・・。」
老人は黙って階段を上り始めた。
俺は慌ててついていく。
(どうも、あまり歓迎されていない感じだな。死ぬ前の事も覚えてない感じだし・・・。)
思ったより足が速く、あっという間に3階についた。
すると振り返らずに語りかけてきた。
「せっかく生き返ったのに、また戻ってきおって・・・仲間の死を見てなんとも思わんかったんか?」
「え・・・覚えていたんですか?」
「ふん、まあいい。ここがお前さんの部屋だ。」
案内された部屋の広さは6畳ぐらいで、ベットと小さな机とタンスがあり、窓はなく全体的に灰色でまるで監獄のようだった。
「お前さんの私物はもう処分済だぞ。1ヶ月たったら処分するというキマリじゃからな。トイレは共同、風呂は隣に大浴場があるから迷宮に潜った後は絶対入れ。そうしないとすぐ臭くなってたまらん。」
「は・・・はい。」
「それと、何か問題あったらわしにすぐ言え。わかったな。」
「わかりました。」
そう言って足早に自分の部屋に戻っていった。
(なんだ、偏屈そうだが悪い人ではなさそうだな。)
自分の部屋が手に入ったのにホッとしてベッドに寝そべった。
(なんとか生活出来そうだ。でも、これからやっていけるかなあ・・・。)
色々と思案をしていると、唐突に腹が鳴った。
(そういえば、転生してから何も食ってなかった。なんか今まで夢みたいだったけど現実なんだよなあ・・・。)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます