第10話:冒険者
俺はダルトさんにこれからの事を相談すると、奥の部屋に通された。
「まず君には大きく分けて二つの選択肢がある。」
「選択肢ですか?」
「冒険者を引退するか、続けるかの二つだな。」
重要な選択肢なんだろうが、俺にはピンとこなかった。
とはいえ引退して無職になったら困るかもしれない。
「もし、引退するとどうなるんですか?」
「引退するとなると、君の身分証明書を取り上げてその実績に合わせた退職金を渡して終わりだな。そして、この街から一週間以内に出て行ってもらう事になる。」
「この街にもいられなくなるんですか?」
「そうだね。身分証明書がない人を街に滞在させるわけにはいかないからね。」
「・・・。」
「君は一度死んでいるし仲間も失った。冒険者は過酷な職業だ。まだ若いし、別の道を探すのもありだとは思うよ。」
(別の道って言われても、街出ていけって言われたどうしようもないな。)
「なるほど、わかりました。続けた場合はどうなりますか?」
「君が冒険者になった時と同じことを言うが、まずは住む場所と最低限の食事を無料で提供する。」
(なんだそりゃ、良い事ばかりじゃないか?)
「ただ、私達が指定した迷宮に潜ってもらって、戦果を報告してもらう。そして月に一回査定して、ギルドの要望以下だった場合は最悪解雇とさせてもらう。もちろん死んでいた期間はノーカウントだから過去にさかのぼって請求する事はないよ。」
「戦果って具体的には何ですか?」
「魔石だね。迷宮の怪物は悪魔が作り出した生物だから、倒すと元の魔石に戻るんだよ。買い取るからお金になるし、実績にもなるよ。それとは別に強力な武器を携帯している時もあるから倒したら一石二鳥だね。」
(なるほど、迷宮に潜って怪物退治とレア武器ゲットか。「ソーサラー」のゲームみたいで面白くなってきたじゃないか。)
「まあ、君は冒険者になって2年ぐらいだし、ランクも低いからそこまで求めない。サボっていないか確認する程度さ。」
「ランクがあるんですか?」
「ああ、ランクFからAまであるね。実績に応じてランクが上がり、ランクが上がれば毎月お金も支給するよ。ただ、上がれば上がるほど査定は厳しくなり、ランク落ちも発生するね。」
「ちなみに俺のランクは?」
「君のランクは「E」だね。」
(まあ、レベル5だとそんなものか。)
「さあ、どうする?」
(冒険者を続けるのが得策だろう。とりあえず一ヶ月は安泰だ。)
「わかりました、冒険者を続けますので手続きお願いします。」
「了解だ。これから何かあったら何でも相談してくれ。」
俺達は硬く握手をした。
とりあえずは食べ物と住む場所は確保できた。
その後どうするかは後で考えよう。
なんとかなるさ。
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