第8話:身分証明書

「これで問題ありません。」


寺院に蘇生のお布施を払い、各種手続きなども終わった。


「長時間お疲れさまでした。では身分証明書をお返しします。」

「身分証明書?」


渡されたものは手のひらサイズのカードで下記の事が記載してあった。


身分証明書  

職業:冒険者  登録名:セイシロウ


(冒険者か・・・俺のしていたゲームと同じ扱いなのかな?しかし、たいして記載されていないが、これで身分証明なんてできるのか?)


「無くさないで下さいね、再発行はかなり面倒なので。」

「この身分証明書って何に使うんですか?」

「何に・・・使う?」


彼は俺の顔をいぶかしげに見てくる。

どうも常識のようで、変な事を聞いてしまったようだ。


「いや、知ってはいるんですが、俺も蘇生したばかりで自分の記憶に自信がないんです。確認の意味も込めて教えてもらっていいですか?」

「記憶障害?・・・わかりました。身分証明書について教えます。」


なんとか誤魔化せたようだ。


「まず身分証明書はこの街に入る時に必要です。それ以外にも・・・・」


長い説明が始まったが、要約するとこの街のすべての手続きに必要らしい。


「それとあなたは国民ではなく、冒険者として特別に身分証明書を発行しているので色々と決まりがあります。詳しい事は、冒険者ギルドに確認してください。」

「わかりました・・・それでその・・・冒険者ギルドはどこにあるんですか?」


すると彼はため息をつき、

「そんな事も忘れてしまったのですか?まあ、いいでしょう、ちょっと待って下さい。」

そう言って、街の地図を持ってきた。

地図には「ヤマト国首都ヒノモト」と記載してある。


「ヤマト?ヒノモト?凄い名前だな・・・」

あまりにも奇抜な名前だったので、つい口に出してしまった。


「異世界から来た勇者ヤマトが作った国ですから、他の国に比べて奇抜ではある事はたしかですね。言語や文化なども他の国とは違いますからね。」


(異世界・・・って名前からして日本からの人間?今まで何の疑問もわかなかったが、言語が同じなのもそのせいなのか。)


「この街は円状になっており、周りを城塞で囲っています。そして、城を中心に北にはこの寺院がある「神聖区」、南は「商業区」、東は「工業区」、西は「探索区」となっています。」

「なるほど、この「探索区」にある冒険者ギルドに行けばいんですね?」

「そうですね。特にあなたは3ヶ月ほど死んでいたので色々と手続きが必要だと思います。」

「わかりました、行ってみます。それと迷うかもしれないので、この地図もらえませんか?」

「いいですよ、元々人に配るための物なので無料でいいですよ。ただ・・・」

「ただ?」

「服は有料です。」























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