第7話:換金
「私はオオクラ商会のブランといいます。以後お見知りおきを。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
寺院が紹介してくれた男は身なりがいいが、小柄で鼻と耳は醜く尖っており、まるでゴブリンのようだった。
「では早速この金塊が本物かどうかを鑑定させていただきますね。」
すると彼は机にある金塊をずっと眺めているが、別に何かをするわけではなかった。
(こんなので本物か偽物かわかるのか?)
「ふーむ、これは素晴らしいですね。これだけの純度のものは見たことがない。」
「触ってもいませんが見るだけでわかるんですか?」
「私もこの世界に長い間いますからね。見ただけでわかるんですよ。」
前の世界では仕事がまったくできなかった俺には羨ましい能力だ。
とはいえでたらめ言っている可能性もなくはない。
「そうですね1個金貨110枚でどうですか?」
「・・・・。」
相談員が言っていた金塊の価値である金貨100枚より10枚多いから得なのだろうか?
(金貨の価値がわからない以上交渉は難しいな。カマかけだけはしてみるか。)
「おかしいですね・・・ここの寺院の相談員のコルトさんは金貨130枚ぐらいになると言っていた気がしたんですが・・・。」
しかし、彼は顔色変えずに返してきた。
「彼は素人ですから、適当に言ったのでしょう。私共オオクラ商会はこの街で一番大きい商会です、信用してください。」
彼の目に迷いはなく揺るぎない自信に満ちている。
(ダメだな、俺が交渉できる相手ではなさそうだ。)
「わかりました金貨110枚でお願いします。」
「承知いたしました。ではここにサインをお願いします。」
俺は念入りに書類を確認しようとした。
「騙すような事は記載していませんよ。そんな事したらわが商会の信用にかかわりますし・・・私もこう見えて忙しい身なので手早くサインお願いします。」
「しかし、ちゃんと確認しないと。」
「では金塊の両替は一週間後になりますよ。それまで一文無しは大変でしょう?」
「・・・わかりました。お願いします。」
俺は言われたとおりにサインをして、金塊を渡し金貨110枚を受け取った。
「それと武器防具、アイテムなど必要ならオオクラ商会にお越しください。紹介状をお渡ししておきますので、来てくれたらお安くしますよ。」
「はあ・・・そうですか。」
「では私はこれで、相談員のコルトさんを呼んでくるのでお待ちください。」
彼はそう言うと素早く出て行った。
忙しいのは本当のようだ。
(失敗したかな?)
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