第5話:転生
「セイシロウさん・・・セイシロウさん・・・セイシロウさん!」
耳元で誰かが知らない人の名前を連呼している。
うるさくて仕方がない。
俺は誰が騒いでいるか確かめるべく目を開けた。
「目を開けたぞ!復活の儀式が成功した!」
俺をゲームの神官っぽいコスプレをした3人が覗き込んでいる。
状況が理解できない。
けだるい体をなんとか起こして周りを見回すと、知らない場所である事がわかった。
「ここはいったいどこなんだ?」
コスプレイヤー達は互いに顔を見合わせ、心配そうな顔になった。
「ここはクルスト寺院です。あなたは死んで、生き返ったのです。」
(聞いた事がない所だ。死んで蘇った・・・まさかここが女神様が言っていた異世界なのか?)
「あなたは混乱しているようです。一日ここに泊っていくといいでしょう。その後に今後のお話をしましょう。」
「それはありがたい。よろしくお願いします。」
まず俺は寝ていた祭壇?から降りようと思ったが力が入らない。
そして自分が裸である事もその時気付いた。
「動くことも困難とは、やはり灰から復活した負担は大きいようですね。私達が肩を貸しましょう。」
俺は両腕を支えられて、別室のベッドに連れてこられた。
その後はすっぱだかで放置されたが、自分ではどうしようもない。
(なんとかしたいが、もう意識が・・・なくなって・・・。)
そうして俺の意識は途絶えた。
◇◇◇
目に日の光が入り俺は起きた。
体に毛布を掛けてくれていたので、周りから露出狂と思われないで済んだようだ。
(昨日と違って意識も体もスッキリしている。)
確認のために自分の名前を思い出してみる。
(俺の名前は「倉木未来」、でも今は「セイシロウ」という侍だったな。)
自分の体を動かしてみると、自由に動くし軽い。
転生前の自分と違って、鍛えられた肉体がいかに凄いかを感じる。
(体も動くし、問題ないな。とりあえず服の事を誰かに相談しよう。)
ここは集団で泊まる場所らしく、他にも数人ほど休んでいる人がいた。
全員治療後らしく静かにしているが、みな暗い顔をしていた。
その時部屋にコスプレヤー・・・ではなく神官服を着た人が入ってきて声をかけてきた。
「気が付かれましたか?体の調子はどうですか?」
「ああ、大丈夫です。問題ありません。」
「それは良かった。ではこの服を着て、私についてきてくれますか?」
渡されたのは布の服とサンダルだった。
サイズはピチピチだったが着る事はできた。
「ではこちらへ。」
部屋から左に曲がると石壁に扉が並んでいる場所に出た。
案内人の後ろについて進んでいく間に、扉の向こうから怒鳴り声や嗚咽が聞こえる。
(何をしているんだろうか?ヤバイ感じがする。)
不安を感じつつも進んで行くと、案内人はある扉の前で足を止めた。
「ここに相談員がおりますので今後の事について相談願います。」
(相談員?今後?なんで寺院の人間と今後の相談をするんだ?)
言っている意味がよくわからなかったが、とりあえず部屋の中に入った。
中は思ったより狭く、真中に机が置かれており、その向こうの椅子には疲れた顔の神官服の男が座っていた。
俺が入ってくると立ち上がり、握手を求めてきた。
「あなたがセイシロウさんですね。私はクルスト寺院の相談員コルトと言います。今日はよろしくお願いします。」
「ええ・・・こちらこそよろしくお願いします。」
彼と硬い握手をして互いに席に座る。
「さて、さっそくお布施についてお話ししましょうか?」
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