第3話 剣風団たち

その夜、食堂では明日の依頼についての説明があった。シエルは明日の冒険を心待ちにしながら、仲間たちと食卓についた。


剣風団の食堂は、今夜も活気に溢れていた。長い食卓に集まった団員たちの笑い声や談笑が響き、焚き火の揺れる明かりが彼らの顔を優しく照らしている。中央の席には、一際存在感を放つ団長、ディアンドがどっしりと腰掛けていた。彼の強靭な体格と鋭い眼光は、初めて彼を見る者に威圧感を与えるほどで、誰もが自然とその姿に目を引かれる。剣風団の魂ともいえるその姿には、何年にもわたる戦闘で培われた威厳が宿っていた。


ディアンドの両脇には、彼を補佐する副団長のセト・ダフォディルとアヤメ・ムラサキが座っていた。セトは黒い胸当てに身を包み、騎士の風格を漂わせる。その端正な顔立ちと落ち着いた振る舞いは、歴戦の勇士であることを物語っている。一方、アヤメは長い紫がかった髪を背に流し、冷静かつ鋭い瞳で周囲を見渡していた。知的な雰囲気を纏いながらも、その内に秘めたる力が彼女の存在感を一層際立たせている。


セトの隣には、傭兵上がりの猛者、ローラン・グラディウスが座っている。彼は筋骨隆々の体を持ち、その豪快な笑い声が食堂の隅々にまで響き渡っていた。「戦場では酒と飯が何よりの友だ」と、いつも語る彼の言葉通り、彼の食欲は並外れている。アヤメの隣には、静かに矢を研ぐ弓の名手、ハイド・ランジアが控えていた。寡黙な彼はいつも冷静沈着で、まるで凪のように静かに動き、敵の急所を確実に狙う。その精密な腕前は、団内でも屈指のものだ。


ディアンドの対面には、シエルと、その隣にマーガレット、リアン、ユウリが座っていた。彼らの中でもひと際異彩を放つのは、参謀兼魔導士のマーヤ・シャクティだ。いつも深くフードをかぶる彼女は静かに微笑みながらも、その眼差しには深い知識と洞察が宿っており、時折言葉少なに発する助言は、剣風団にとって不可欠なものとなっている。マーヤは、まるで風景の一部であるかのように自然体で座っていたが、その周囲には一種の威厳が漂っていた。


剣風団の主要メンバーが揃うこの光景は、まるで一つの壮大な絵画のようだった。剣風団に依頼を持ち込んだ客や協力者たちも他のテーブルで談笑していたが、やはり団の中核を担うこのメンバーたちの存在感は圧倒的だった。彼らが一堂に会し、食事を共にする光景は、それだけで特別な意味を持つ。団員たちは、それぞれの役割を持ちながらも、一つの家族のように絆を深め、未来の冒険や戦いに備えていた。


食事が進み、会話が一段落ついた頃、ディアンドが静かに杯を置き、ゆっくりと口を開いた。彼の重厚な声が食堂の喧騒を一瞬にして鎮めた。全員の視線が団長に集中し、食堂に静寂が訪れる。ディアンドが次に何を語るのか、団員たちは息を呑んでその言葉を待っていた。食堂に漂う緊張感は、まるで嵐の前の静けさのようだった。


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