一つ目の村
儀式 壱
僕は彼女を探しにこの村へやってきた。
同じ大学に通う彼女は、オカルトサークルに所属していた。
しかし、サークル活動が忙しくなるかもと言って疎遠になってしまった。
大学にも来ていないし、家にもいない。
彼女の部屋から見つけたメモには、神社の住所が書かれていた。
「あの、ごめん下さい。誰かいますか?」
鳥居をくぐり、あたりを見回すが人の気配を感じない。
「あなた誰?」
幼い少女らしき声が後ろから聞こえた。
振り返ると、10歳前後の双子の女の子だった。
「お兄さんも殺すの?」
「殺す・・・?」
「祟りで殺すの?」
殺す?祟り?一体何の話だ?
「このお姉さんを探しているんだ。見ていないかな?」
少女たちに彼女の写真を見せた。
「知らない」
「見てない」
彼女について手掛かりなしか・・・。
「あ、じゃあ神主さんはどこにいるか分かるかな?」
「死んだ」
え・・・?
「えっと、ご冥福お祈りします。今は誰か代わりの人がいるのかな?」
「祟りで殺されるのが嫌だからいない」
「さっきから言っている”祟り”って何だい?」
少女たちは僕の顔をじっと見つめた。
日本人形みたいな無機質な表情で、不気味さを感じる。
「お兄さんが何も知らない人なら、大丈夫な人」
話によると、数週間前にここで神主が死んだ。
鳥居にもたれ掛って、恐怖に怯えた表情のまま・・・。
原因は、”存在しない祠”。
突如村に出現した祠について、村人は何もわからない。
だがその祠ができた次の日に、神主は亡くなった。
何かしら関係があると村人は考えているらしい。
「そ、そんな怖いことが・・・」
「その日以来、皆祠に来てお祈りしているの」
「怒らせないために」
「「お兄さんも行った方が良い」」
夕方を背にした少女たちがそう言うと、木からカラスが一斉に飛び立った。
祠の場所に案内してもらった。
村の入り口から遠く離れた場所にあり、到着した頃には夜になろうとしていた。
「ありがとう。もう夜遅いし、ご両親が心配していると思うよ。お家は近いの?」
「「うん。平気」」
「そっか・・・それなら良いけど」
「じゃあねお兄さん」
「「祠壊さないでね」」
少女たちが去ったのを見送って、改めて祠を観察した。
その祠は、随分小さく僕の胴体程度の大きさしかなかった。
しかし最近建てられた物とは思えないほど、材木は古びており何年も手入れされていないようだった。
「”存在しない祠”か・・・」
正直彼女ほどオカルトは信じていない僕は、疑っている。
あの少女たちに冗談を言われたんじゃないか?
よそ者が来たから、暇つぶしに怖がらせてやろうと。
祠がいきなり現れるなんて、あり得ないじゃないか。
そんなことを考えつつ、一応手を合わせてお祈りをした。
オカルトは信じていないが、一応日本人の精神は持っている。
「もう遅いし旅館に行くか」
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