日記風小説毎日料理

第15話

日曜日の朝、俺はいつもより少し早く目が覚めた。

心臓がドキドキしているのは、やはり今日が佐藤さんとの映画デートだからだろう。

まだ友達同士の関係とはいえ、彼女と一緒に過ごせる時間は特別なものだし、これから何かが変わるかもしれないという期待が、俺の心をそわそわさせていた。

朝食を軽く済ませて、早めに出かける準備をする。

服装はいつもより少しだけ気を使った。

普段の自分らしさを崩さず、でも気を抜きすぎない格好がいいだろうと考えながら、鏡を何度も確認する。

佐藤さんと一緒に映画を観るのだから、印象が悪くならないようにしたい。

家を出ると、今日は晴れていて天気も絶好調だ。これも何かの縁だろうかと、少しだけ自分に都合のいい考えが浮かんでくる。

自転車に乗って駅まで向かい、電車に乗って待ち合わせ場所へと向かう。

道中、映画の内容を思い出しながら、佐藤さんとの会話がどんなふうに弾むかを想像してみた。

待ち合わせ場所に着くと、すでに佐藤さんが先に到着していた。

彼女は少し気合の入った服装で、いつもより大人っぽく見える。

「おはよう、佐藤さん。早いね。」

「おはよう、烏丸くん！私も映画が楽しみで、早めに来ちゃった。」

彼女の笑顔は相変わらず眩しい。

俺もその笑顔に引き込まれながら、自然と緊張がほぐれていった。

お互いに少し世間話をしながら映画館に向かい、チケットを確認して映画の開始時間まで少し待つことにした。

映画が始まるまでの間、二人で座って予告編を観ていた。

彼女がどんな感想を持つのかを気にしつつ、俺も映画の世界に引き込まれていく。

アクション満載の映画で、スリルがあって見ごたえがある。

時折、彼女が小さく驚く声を出すのが耳に入るたび、俺は横目でその様子を伺ってしまう。

映画が終わると、二人で余韻に浸りながら席を立った。

「すごかったね！あのシーンとか、本当にハラハラしたよね。」

佐藤さんが目を輝かせて感想を言ってくれる。

「うん、確かに。あんな展開になるとは思わなかった。最後まで飽きずに見られたよ。」

映画を観終わった後は、カフェで休憩することにした。

二人で座って、映画の感想を言い合いながら時間が過ぎていく。

佐藤さんの楽しそうな表情に、俺は少し安心しながらも、彼女といるこの瞬間がもっと長く続いてほしいと思った。

「今日は本当に楽しかったよ。ありがとう、烏丸くん。」

佐藤さんが最後にそう言ってくれた時、俺の胸の中には温かい気持ちが広がった。

「こちらこそ、佐藤さんと一緒に映画を観られて楽しかったよ。また、こんなふうに出かけよう。」

「うん、ぜひまた誘ってね。」

そんな約束を交わして、俺たちは少しずつ距離を縮めていくことになった。

日曜日の映画デートを終えた翌日、俺は何度もその日のことを思い出していた。

佐藤さんとの距離が、確かに少し縮まったような気がして、心が浮き立つ。

それに加えて、彼女との次の約束を取り付けたことも、俺の中では大きな進展だった。とはいえ、まだ友達同士の関係を保っているのも事実で、そこに一抹の焦りも感じる。

月曜日の朝、いつも通りに目を覚まして、朝食とお弁当の準備をする。

牛蒡を使った料理を昨日の夜から考えていて、今日は牛蒡と鶏肉を使った甘辛炒めをおかずにすることにした。

手早く仕上げて、お弁当箱に詰めると、少しだけ満足感が湧いてきた。

料理に関しては、コツコツと積み上げてきた自信があるから、これだけは誰にも負けないと思える。

制服に袖を通し、カバンに教科書を詰め込み、自転車で学校へ向かう準備を整える。

まだ眠りの余韻が残る朝の冷たい空気が、少し気を引き締めてくれる。

学校へ向かう道中、頭の中には自然と佐藤さんのことが浮かんできた。

昨日の彼女の笑顔、会話のひとつひとつが、今の俺にとっては特別なものに感じられている。

これまでとは違う感覚だ。

友達という距離感の中で、もっと彼女を知りたい、もっと彼女と話したいという気持ちが強くなっている。

学校に着き、自転車を駐輪場に置くと、いつも通りの静けさが戻ってくる。

昨日までの浮かれた気分とは違い、また日常の流れに戻ったんだと実感する。

だが、どこかで期待している自分もいる。今日も彼女と話す機会があるだろうか、と。

教室に入ると、クラスメイトたちがいつも通りに談笑している。

俺もいつも通りの席に座り、机の横にカバンを掛ける。

ふと目を上げると、佐藤さんが教室に入ってきた。彼女もまた、昨日と変わらない笑顔で周りと話している。

俺は軽く挨拶をして、彼女も笑顔で返してくれた。

何気ないやり取りだが、昨日の映画を一緒に観たことで、確かにお互いに意識しているのを感じる。

そんな小さな変化が、俺の心をさらに浮かび上がらせた。

授業が始まると、さすがに頭を切り替えなければならない。

昨日の余韻に浸っているわけにはいかないし、学業も大事だ。

数学の問題集に集中しながら、ふと気がつけばもう昼休みの時間になっていた。

昼休み、また佐藤さんとお弁当を食べる機会があるかもしれないと少し期待して、教室を出た。

しかし、今日は彼女が友達と一緒にいる様子だったので、俺も無理に声をかけるのはやめた。

「まぁ、また次の機会があるさ」

と自分に言い聞かせ、いつも通りに昼食を食べることにした。

こうして、文化祭も映画デートも終えた平凡な日常が続いていく。

だが、俺の中で何かが動き始めた気がする。佐藤さんとの関係がどう進展するのか、この先も少しずつ見守りながら、ゆっくりと距離を詰めていきたいと思う。

昼休みの後、午後の授業が始まった。

俺はクラスメイトたちの話し声を耳にしながら、心の中で佐藤さんのことを考え続けていた。

彼女と過ごした時間が、何か特別な意味を持つようになっていると感じる。

友達以上の何かを築きたいと願う気持ちが、徐々に大きくなってきているのだ。

授業が終わり、帰りの準備を始める。

教科書をカバンに詰め込んでいると、背後から声がかかった。

「よしおくん、帰るの？」

振り返ると、そこには佐藤さんが立っていた。

少し驚きながらも、心の中が弾むのを感じる。

「うん、帰るところ。佐藤さんは？」

と、いつも通りの返事をする。

彼女は明るく笑って

「私も。よかった、途中まで一緒に帰れるね！」

と嬉しそうに言った。

俺は心の中で小さくガッツポーズをした。

この瞬間を待っていたのだ。

彼女と一緒に帰ることができるなんて、ただの友達としてでも嬉しい。

二人並んで歩き始めると、周りの景色が少し違って見える。

彼女の存在が、俺の日常に色を添えてくれている気がした。

「映画、どうだった？」

と佐藤さんが聞いてくる。

「すごく楽しかったよ！特にあのクライマックスのシーンが…」

と言いながら、映画の話に花が咲く。

彼女も楽しんでいたようで、目を輝かせながら感想を語ってくれる。

話が弾む中で、時折目が合う瞬間があった。その度に、俺はドキッとしてしまう。

これが、あのドキドキする感じなのだろうか。

彼女との距離が近づいている実感と同時に、胸の高鳴りが抑えられなくなる。

佐藤さんの自宅が近づくにつれ、別れの時が迫ってくる。もう少しこの時間が続けばいいのにと思いながら、心の中で何か言葉を探していた。

「また、映画を観に行こうよ」

と思わず口に出してしまった。

自分でも驚きながらも、言葉は彼女の耳に届いている。

「本当に？いいね！次は何を観る？」

と、佐藤さんは目を輝かせて反応してくれる。俺は心の中でさらに嬉しくなり

「うん、また一緒に行こう」

と返事をした。

彼女の自宅の前に到着すると、少し名残惜しい気持ちが胸に広がる。

「また明日ね」

と俺が言うと、佐藤さんは明るい笑顔で

「うん！また明日ね！」

と返事をする。

彼女が家に入るのを見送りながら、心の中に温かいものが広がる。

その日の出来事が、今までのどんな日よりも特別に感じる。

友達としての関係を大切にしながらも、少しずつ前へ進んでいる感覚が心地良い。

これからの二人の関係がどう変わっていくのか、少し期待しながら過ごす日々が続いていくのだろう。

翌日、目が覚めると窓から差し込む朝日がまぶしい。今日は日曜日。

心の中には、佐藤さんとの映画の約束が待っている期待感で満ちていた。

急いで朝食を済ませ、お弁当も準備する。何を持って行こうかと考えながら、俺は少しだけ特別な気持ちを込めてお弁当を作った。

早めに準備を終え、家を出る。外に出ると、心地よい風が吹いていた。

少し緊張しながらも、今日はどんな時間を過ごすのかワクワクする。

映画館へ向かう途中、何度も自分の心を落ち着かせようと深呼吸をする。

映画館に着くと、すでに佐藤さんが待っていた。

「おはよう、よしおくん！」

と彼女は元気に手を振ってくれる。

彼女の笑顔を見るだけで、心がほっこりする。

今日はどんな映画を見るのか、どんな時間を過ごすのか、すべてが楽しみだ。

「おはよう、佐藤さん！待たせちゃった？」

と少し照れくさそうに聞く。

「ううん、全然！今日は一緒に楽しもうね」

と彼女はにっこり笑って返事をしてくれた。

映画のチケットを買い、上映時間までの間、少し雑談をする。

最近の学校のことや趣味について話しながら、自然と笑顔がこぼれる。

「この映画、面白そうだよね」

と俺が言うと、彼女も

「うん、予告編を見て楽しみになってた！」

と返してくれた。

ついに映画が始まり、スクリーンに映し出される光景に夢中になっていく。

映画の中のストーリーに引き込まれ、笑ったり、ドキドキしたり、時には感動して目が潤む瞬間もあった。

佐藤さんと一緒に映画を観ることで、感情を共有できているような気がして、より一層特別な時間に感じた。

映画が終わり、劇場を出ると、二人とも感想を語り合った。

「最後のシーン、すごく良かったよね！」

と佐藤さんが言う。

「本当に！感動した！」

と俺も同意する。

その後、映画の内容を元に話が弾み、いつの間にか時間が経っていた。

映画を楽しんだ後、近くのカフェに立ち寄ることにした。

ちょっとしたスイーツを食べながら、さらに会話が盛り上がる。

「このケーキ、すごく美味しいね！佐藤さんはどれが好き？」

と俺が聞くと、彼女は嬉しそうに

「私はチーズケーキが一番好き！」

と教えてくれた。

「じゃあ、今度はチーズケーキを食べに行こうか」

と提案すると、彼女は

「いいね！絶対行こう！」

と目を輝かせる。

彼女との会話の中で、少しずつ距離が縮まっている気がして、心の中に温かい気持ちが広がっていく。

その後、カフェを後にして帰る道すがら、少し寂しさも感じる。

楽しい時間はあっという間に過ぎ去ってしまうものだ。

彼女の自宅が近づくと、別れの時が近づいている。

心の中で、もう少し一緒にいたいと思いながら、彼女の笑顔を見つめていた。

「今日は本当に楽しかった。ありがとう、佐藤さん」

と俺が言うと、彼女は

「私も！また一緒に行こうね」

と返事をする。

少しだけ照れくささを感じながらも、その瞬間、彼女との関係が少しだけ進んだように思えた。

別れの挨拶を交わすと、彼女は自宅へ入っていく。

振り返り、彼女が手を振っているのを見送ると、俺の心は幸せでいっぱいになった。

帰り道、今日の出来事を思い返しながら、どんどん期待が膨らんでいく。これからも、佐藤さんとの関係を大切にしていきたい。

次の約束をするのが、今から待ち遠しいのだ。

その後、日々が過ぎていく中で、佐藤さんとの距離感が少し気になり始めた。

映画を見に行ったり、一緒に過ごした楽しい時間の後、彼女をデートに誘おうと考えていた。

しかし、なかなかタイミングが合わず、彼女の友達との予定があったりして、誘えずにいた。

月曜日の朝、学校に行く途中、少しドキドキしながら彼女に声をかけてみることにした。

「ねぇ、佐藤さん。今度、どこか一緒に遊びに行かない？」

と心の中で緊張しながらも声をかけた。

すると彼女は、

「ごめんね、今週末は友達と出かける予定があるんだ」

と少し残念そうに返事をした。

その言葉を聞いて、心の中で期待が少しずつしぼんでいくのを感じた。

「あ、そうなんだ…」

と無理に明るい声を出すが、実際には少しへこんでしまった。

「また別の機会に行こう！」

と彼女が続けて言ったが、心の奥で

「本当にそれが実現するのかな？」

と思ってしまった。

彼女の友達との予定が続く中、自分がどれだけ彼女を誘うチャンスがあるのか、不安になっていく。

学校が終わると、友達と一緒に帰ることにした。

話をしながら、少し気を紛らわせようとした。

「最近、佐藤さんとはどうなの？」

と友達が聞いてくる。俺は

「うん、映画を見に行ったりはしたけど、今はあんまりデートの約束ができない」

と正直に答えた。

「それなら、また誘ってみたら？女の子って、誘ってくれるのを待っていることもあるんだよ」

と友達がアドバイスをくれた。

その言葉に少し元気が出た。

「そうだよな、まだ諦める必要はないよな」

と自分に言い聞かせる。

それから数日、何度か佐藤さんにデートに誘おうと思ったが、彼女の予定を考えるとタイミングを逃してしまった。

彼女の友達との約束を優先させているのだろうかと考えたり、逆に自分が遠慮しているのかもしれないと悩んでいた。

金曜日の放課後、帰り道にまた彼女に声をかけることに決めた。

「佐藤さん、今度の土曜日、空いてる？」

と聞くと、彼女は

「ごめん、また友達と遊ぶ予定なんだ」

と返事が返ってきた。

その瞬間、また心の中に小さな重りが乗っかるような感覚がした。

「そうなんだ、いいな。楽しんでね」

と笑顔を作りながら言うが、内心は少し落ち込んでいた。

彼女が他の友達と出かけているのを聞くと、なんだか自分が必要とされていない気持ちになってしまう。

放課後、帰宅すると、いつもよりも静かな部屋が待っていた。

自分の気持ちを整理するために日記を開き

「今日はまた佐藤さんを誘ったけど、結局友達との約束があった。どうすればいいんだろう」

と書き綴った。

言葉にすることで、少しだけ心が軽くなるような気がした。

それでも、諦めるわけにはいかない。

何かしらの形で、彼女ともっと近くなりたいという気持ちが強くなる。

佐藤さんとの仲を深めるために、次のチャンスを逃さないように心がけようと思った。

「次の土曜日こそ、何か特別なことを計画しよう」

と自分に約束し、翌日もまた学校で彼女と自然に話せるよう努力することにした。

いつか、彼女との距離がもっと縮まる日を信じて。