第16話

ある日の放課後、学校の廊下を歩いていると、佐藤さんが俺を呼び止めた。


「少し話があるんだけど、ついてきてくれる?」


と不安そうな顔をしている。

俺は驚きつつも、何か重要なことがあるのだろうと思い、彼女の後についていくことにした。

指定された場所は、学校の裏庭の静かな一角だった。

そこには、他の女の子の友達も集まっていて、俺の心は一瞬にして緊張感で包まれた。

周りの視線が集中する中、佐藤さんが口を開いた。


「この子が、あなたに嫌がらせを受けているって言っているんだけど…本当なの?」


と言った。

一瞬、頭が真っ白になった。

何が起こっているのか理解できず、目の前の女の子に視線を移した。

彼女は知らない顔だった。

緊張しているのか、少し怯えた様子で俺を見ている。

内心、(え、俺が誰かに嫌がらせなんてしてたの?)と思い、さらに混乱が深まった。


「嫌がらせ?何のことか全然分からないんだけど…」


と、俺は正直な気持ちを口にした。

佐藤さんもその言葉を聞いて、少し眉をひそめた。


「だよね、君がそんなことする人じゃないって思ってた」


と彼女が続けて言った。


「でも、彼女は本気でそう言っているみたいで…どういうことか教えてほしい」


と、俺に目を向けた。

俺は改めて、周りの女の子たちの視線を感じながら状況を整理しようとした。


「俺は、誰かを嫌がらせなんてした覚えはないよ。何か誤解があるんじゃないか?」


と言うと、女の子は少し動揺した様子を見せた。


「私、教室であなたが私のことを笑ってるのを見たの」


と、その女の子が言った。

俺は驚き、記憶を遡った。確かに、クラスメートたちと笑っている時に、彼女が周りにいたかもしれない。

でも、決して彼女を笑うためではなく、みんなで楽しい時間を過ごしていただけだった。


「俺はそんなつもりじゃなかったんだ。ごめん、何か気に触ったなら謝る」


と言うと、彼女の表情が少し和らいだ。


「うん、でも私が思ってたことを言えたから良かった。私も不安だったから…」


と小さな声で続けた。

佐藤さんはその様子を見て、ホッとした様子だった。


「じゃあ、これで解決かな?誤解が解けたなら良かった」


と言った。


俺は彼女の言葉に救われた気持ちがした。

その後、俺は女の子に


「これからも、何かあったらちゃんと話してほしい」


と伝えた。

彼女も少しずつ笑顔を見せ、頷いてくれた。これで一件落着だと思った。

その後、佐藤さんが近くに来て


「良かったね、誤解が解けて」


と微笑んだ。


「うん、本当にそうだね」


と心から思った。

これで、俺たちの関係に何も影響が出ないことを願っていた。

その日の出来事は、少しドキドキさせられるものだったが、最終的には俺と佐藤さんの絆をさらに深めることになった。

これからも、彼女としっかり向き合いながら、良い関係を築いていけたらいいなと強く思った。


佐藤さんとのいざこざを経て、俺は反省した。

誤解を招くような行動は避けるべきだと心に誓い、これからはより気をつけようと決意した。

そんな中、佐藤さんと次の予定をつけることができた。思い切って誘ってみた甲斐があったのだ。

来週の土曜日、彼女を家に招いて、お料理研究をすることになった。

そこには他の女の子の友達も誘って、みんなで楽しく料理をするつもりだ。


「これってデートっていうのかな?」


と少し不安になりながらも、楽しみな気持ちがどんどん膨らんでいく。

当日が近づくにつれ、俺は心の準備を整え始めた。

料理のレシピを何にするか悩んでいるとき、ふと考えた。


「みんなで作れる簡単なものがいいよな。」


そう思い、パスタやピザ、サラダなど、組み合わせていくつかのレシピを決めることにした。

これなら、みんなで協力して作れるし、楽しむことができるだろう。

数日が経ち、ついにその土曜日がやってきた。俺は朝からキッチンを掃除し、食材を準備していた。

佐藤さんや友達が来るのを考えると、ちょっと緊張したが、同時にワクワクもしていた。


午後、約束の時間が近づくと、玄関のチャイムが鳴った。


「やっと来た!」


と、心の中で叫びながらドアを開けると、そこには佐藤さんと他の女の子たちがいた。


「こんにちは!」


と元気な挨拶が飛び交う。少し緊張していたが、彼女たちの明るい笑顔を見て、安心した。


「今日はみんなで料理を楽しもう!」


と俺が言うと、佐藤さんも


「何を作るの?」


と興味津々の様子だ。

俺は用意していたレシピを見せて、今日作る料理の説明を始めた。

すると、みんなが楽しそうに話し合いながら手分けして食材を切り始めた。

料理を進める中で、自然と会話が弾んでいく。

笑い声や声が重なり合い、キッチンはまるで小さなパーティーのようだった。

佐藤さんと目が合った瞬間、彼女も楽しそうに笑っていた。


その瞬間、


「これが俺の理想のデートなんだ」


と実感した。(今さら思うとなんだが実感するなよ俺!?)


料理が完成する頃には、色とりどりの美味しそうな料理がテーブルに並んだ。


「みんな、上手にできたね!」


と感心しながら言うと、みんなから拍手が返ってきた。

美味しい料理を囲んで、楽しい会話が続く中、俺は


「今日は本当に来てよかった」


と心から思った。

食事を終えた後、みんなで後片付けをすることになった。


「片付けも協力してやるよ」


と佐藤さんが言ってくれたので、少し安心した。

普段は俺がやっていることが多いが、今日はみんなと一緒にできて楽しかった。


最後に、佐藤さんが


「またみんなで料理しようね」


と言ってくれた。

俺も


「絶対にやりたい!」


と答えた。

こうして、今日の特別な日が無事に終わり、彼女との距離が一層縮まった気がした。

心の中で


「これって、やっぱりデートに近いよな」


と、嬉しい気持ちが広がっていくのを感じた。

数日後、俺は学校での生活に戻ったが、心の中ではまだ佐藤さんとの特別な料理会のことが思い返されていた。

彼女との距離が縮まった気がするし、仲良くなったことを実感できて嬉しい。

そんな気持ちを抱えながら、日々の授業や宿題に取り組むことになった。


学校の廊下では、同じクラスの友達と会話しながら、時々佐藤さんを目で追うこともあった。

彼女が友達と笑いながら話しているのを見ると、つい笑顔になってしまう。

友達に


「どうしたの?」


と不思議そうに聞かれることもあったが、そのときは


「なんでもないよ」


とごまかして、心の中でドキドキする気持ちを隠していた。


ある日の放課後、俺は勉強を終えた後、友達と一緒に帰る途中、ふと佐藤さんに声をかける機会を持とうと思った。

彼女がちょうど廊下を歩いていたので


「佐藤さん、今度また一緒に料理しない?」


と聞いてみた。

佐藤さんは少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに笑顔になり


「いいね!いつにする?」


と返事をくれた。


その瞬間、心の中で小さな花が咲いたような感覚がした。


「来週の土曜日はどう?」


と提案すると、彼女は


「うん、楽しみにしてる!」


と元気よく答えてくれた。

嬉しさでいっぱいになりながら、俺たちは約束を交わした。

その週末が近づくにつれ、何を作るか考えるのが楽しくなった。

前回の料理会のメニューを少し変えて、今度はデザートも作ってみようと思った。

そこで、手軽に作れるチョコレートムースやフルーツタルトを考えた。

友達も誘うことにしたので、みんなで協力しながら作るのも楽しそうだ。


そして、待ちに待った土曜日がやってきた。

朝からキッチンを掃除し、必要な食材を整えていると、心が弾むのを感じた。


「また佐藤さんと過ごせる」


と考えるだけで、緊張と期待が入り混じった感情が湧き上がってくる。

約束の時間になると、佐藤さんと他の友達が来てくれた。

再びキッチンに集まり、それぞれが担当の料理を分担して作り始める。

前回と同じように、楽しい会話や笑い声が飛び交い、和やかな雰囲気が広がっていった。

今回もまた、みんなで料理をする中で、自然と距離が縮まっていくのを感じた。

佐藤さんが俺の横でチョコレートムースを作っているとき、彼女がふと


「よしおくん、料理上手だね」


と褒めてくれた。


「ありがとう、佐藤さんも上手だよ!」


と返しながら、俺は嬉しくて思わず笑顔になった。

料理が完成し、テーブルに並べると、その光景を見た瞬間、みんなから


「わー、すごい!」


という歓声が上がった。

自分たちで作った料理を囲んで、また楽しい食事が始まった。


「これ、めちゃくちゃ美味しいね!」


と佐藤さんが言ってくれたことが、俺にとっての最高の褒め言葉だった。

食事を終えた後、また片付けを手伝いながら、自然と会話が続いた。

佐藤さんと話すうちに、徐々に彼女のことをもっと知りたいという気持ちが強くなっていく。

彼女の趣味や好きなことについて聞いてみると、


「実は、絵を描くのが好きなんだ」


と教えてくれた。


「そうなんだ!どんな絵を描くの?」


と俺が興味を持って尋ねると、彼女は少し照れくさそうにしながらも


「風景画が多いかな。特に自然が好き」


と話してくれた。

彼女の目がキラキラしているのを見て、俺もその情熱を感じることができた。

その日の料理会を通じて、ますます仲が深まった佐藤さんとの関係。

帰り際、彼女が


「また一緒に料理しようね!」


と言ってくれたとき、俺は心から


「うん、絶対にやろう!」


と答えた。

こうして、俺たちの絆は少しずつ深まっていくのを感じながら、未来に希望を抱くことができた。

(((私たち途中から空気だった)))


楠田さんは、佐藤さんの親友であり、いつも彼女のそばにいる存在だ。

お料理研究会を通じて、彼女とも少しずつ打ち解けていった。

初めはお互いにぎこちない部分もあったが、共通の趣味を持つことで自然と会話が弾むようになってきた。

今では笑顔でおしゃべりする仲間になり、彼女の明るさに助けられながら、楽しい時間を過ごすことができている。


ある日の帰り道、楠田さんと一緒に帰ることになった。

二人ともふとした話題で盛り上がっていた。

そんな中で、楠田さんが俺のことを見ながら言った。


「烏丸くんは、本当に美佳のことが好きなんだねぇ。彼女のことを見てるとき、すごく優しい目をしてるもん」


と、ちょっとからかうような口調で言った。思わず顔が赤くなり


「あ、いや、その…」


と戸惑ってしまう。

自分でも気づいていることだったが、他の人に指摘されると恥ずかしさが増す。


「そんなに照れなくてもいいよ!私も美佳と一緒にいるときの烏丸くんの表情、素敵だなって思うし」


と、楠田さんは笑顔で続けた。


「もっと美佳にアプローチしてみたら?」


その言葉にドキッとする。


(アプローチ?)


俺は佐藤さんに気持ちを伝えた方がいいのだろうか。

だけど、どうやって伝えたらいいのかが分からなかった。

佐藤さんが本当に自分に興味を持ってくれているのか、少し不安だった。


「そうかもしれないけど…、でも、どうやって?なんか恥ずかしくて」


と言うと、楠田さんは笑いながら


「大丈夫、きっと美佳も烏丸くんの気持ちに気づいてるよ」


と励ましてくれた。

そんな風に言われると、少し自信がつく。


「ありがとう、楠田さん。頑張ってみるよ」


と返事をすると、彼女は嬉しそうに頷いた。


「烏丸くんが頑張るの、応援してるから!」


その日の帰り道、俺は心の中で考え続けた。

佐藤さんへの気持ちをどう表現すればいいのか。

もしかしたら、楠田さんの言葉を参考にして、もう少しアプローチをしてみるべきかもしれない。

思い悩んでいる間にも、俺たちは自然と楽しい会話を続けていた。

楠田さんとの会話が終わった後、佐藤さんとの関係について改めて考え直すきっかけとなった。

彼女に少しずつでも気持ちを伝えるために、まずは普段の会話の中で自分の気持ちを表現することから始めてみようと思った。


次の料理研究会の時には、少しだけ心の準備をして、佐藤さんとの距離を縮めるチャンスを待ってみようと決心した。

楠田さんの言葉が、俺にとって大きな勇気となったのだ。

これからの時間を大切にして、佐藤さんともっと深い関係を築いていきたいと思った。

どんな形でも、彼女と一緒にいることができるなら、それが何よりも嬉しいことだ。







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