第5話
起きたらアラームの鳴る時刻の五分前だった。
まだ薄暗い室内で、ベッドの中でモゾモゾしていると、目が覚めるのが惜しい気持ちが湧いてくる。
しかし、今日は朝食と昼のお弁当の準備が待っている。渋々とベッドから起き上がり、身支度を整えてキッチンへ向かう。
キッチンに入ると、まずはエプロンをつける。
エプロンを身につけると、なんだか料理をする準備が整った気がして、少し気持ちが高揚する。
時計を見ると、親たちが仕事に出かける時間は6時30分だ。
まだ少し時間はあるが、早めに準備を進めることにする。
「さて、今日は何を作ろうかな」
朝食のメニューを考えながら、冷蔵庫を開ける。今日はさっぱり系の朝食がいいと思い、パンとサラダ、そしてヨーグルトにすることに決めた。
栄養バランスも考えながら、家族が食べやすいメニューを選ぶのが大事だ。
パンは食パンをトーストし、サラダは新鮮なレタスとトマトを使って、さっと盛り付ける。
ヨーグルトはフルーツを添えて、見た目にも華やかに仕上げるつもりだ。
準備をしながら、ふと思う。
家族が喜んでくれる顔を想像するだけで、なんだか心が温かくなる。
料理をすることで、少しでも彼らの朝を明るくできたらいいなと思う。
まずは、食パンをトースターにセットして焼き始める。焼き上がるまでの間に、サラダを作ることにする。レタスを手でちぎり、トマトを適当な大きさに切ってボウルに入れる。
これにオリーブオイルと塩を振りかけて、よく混ぜる。
シンプルだけど、新鮮な素材を活かした美味しさが感じられるはずだ。
その頃、トースターからは香ばしい香りが漂ってきた。
ちょうどいい焼き加減になったところで、パンを取り出し、バターを塗る。
ふわっと広がるバターの香りに思わず笑顔になる。最後に、盛り付けたサラダと一緒に、ヨーグルトを皿に盛る。
これで朝食の準備は完了だ。
「よし、これで家族みんなが朝ごはんを楽しめる」
満足感を感じながら、朝食をテーブルに運ぶ。まだ早朝のため、家の中は静かだが、料理の香りが家を包み込んでいる。
しばらく待っていると、家族が次々と起きてくる。
父さんと母さんがリビングに現れたとき、目にしたのは朝食のテーブルだ。
「おお、今日は美味しそうな朝ごはんだね」
と父さんが言い、母さんも嬉しそうに頷く。
「ありがとう、簡単だけど、朝はこれがいいかなって思ったんだ」
と俺は照れくさく答えた。
こうして家族と一緒に朝食を囲む時間は、やっぱり特別だ。
会話が弾む中、皆が笑顔で食べる様子を見ていると、作った甲斐があったなと感じる。
朝食を終えると、次はお弁当の準備に取り掛かる。
今日のお弁当は、唐揚げを中心に作ることにした。
唐揚げは家族にも人気があるメニューで、特に父さんが大好きだ。
冷凍してある鶏肉を取り出し、解凍しながら下ごしらえを始める。
まずは鶏肉を一口大にカットし、塩コショウとおろし生姜、そして少しの醤油で味付けをする。
これを10分ほどマリネしておく。
下ごしらえの間に、他の付け合わせも考えることにする。
やっぱり唐揚げだけでは寂しいので、彩りを考えて、ブロッコリーや人参も蒸しておくことにした。
時間が経つにつれて、いい香りがキッチンに広がってくる。
マリネが終わった鶏肉に片栗粉をまぶし、熱した油で揚げ始める。
カラっと揚がる音とともに、キッチン中に食欲をそそる香りが漂ってくる。
揚げあがった唐揚げを取り出し、キッチンペーパーの上に置いて余分な油を切る。
その間に、ブロッコリーと人参が蒸しあがった。鮮やかな色合いが食欲をそそる。
これでお弁当のメインと副菜が揃った。
最後にご飯を詰めるため、炊飯器を開けて温かいご飯をよそい、白ごまを振りかけておく。
盛り付ける時には、唐揚げを中央に、ブロッコリーと人参を彩りよく配置する。
「これでお弁当は完成だ!」
自分の作品を見て満足し、食器をテーブルに運ぶ。
今日の朝食とお弁当の準備を終えたことで、なんだか達成感を感じていた。
時計を見ると、もうすぐ出かける時間だ。
家族が仕事に出かける準備を整え、俺も自分の持ち物を確認する。
「じゃあ、行ってくるね」
と声をかけ、家族と共に見送りを受ける。
家族の笑顔を見ながら、今日は特別な一日になりそうな予感がした。
自転車でいつも通る道を走る。
朝の空気は爽やかで、まだ太陽の光が柔らかく照らしている。
この時間帯は通勤の車や通学の生徒たちで賑わうが、心地よい風を感じながら、自転車をこぐのはやっぱり気持ちがいい。
もちろん、事故には最善の注意を払い、気をつけることを忘れない。
スマホを見ながらのながら運転なんてもってのほかで、そんなことは絶対にしない。
安全第一だ。
道の途中には、毎朝通る特有の景色が広がっている。
左手には色とりどりの花が咲いた小さな公園があり、右手には家々が並ぶ住宅街が広がる。
花が咲く季節になると、色鮮やかな景色に心が躍る。
特に好きなのは、向日葵が咲く夏の終わり。
青空の下で、彼らの黄色い花びらが太陽に向かって輝いている姿は、見ているだけで元気が出る。
信号待ちをしていると、周りにいる車や歩行者に目を向ける。
赤信号の間、周りの人たちの会話が耳に入ってくる。
中には、友達と楽しそうに話している高校生もいれば、親子で手を繋いでいる姿も見受けられる。そんな光景を眺めながら、やっぱり朝のひとときは心温まるものだと感じる。
信号が青に変わると、急いでペダルを踏む。周囲の状況を確認しながら、安全運転で進む。
やがて、学校へ続く道に差し掛かる。
通学路には、特に気を付けなければならない場所がいくつかある。
交差点や車が多く通る道は、特に注意が必要だ。
そういった場所では、自分のペースを落として、慎重に運転することが大切だ。
道の脇には、朝早くからジョギングをしている人や、犬の散歩をしている人がいる。
彼らを避けながら、少しスピードを落とし、自転車を走らせる。
時折、目が合ったりするが、そんな瞬間に小さく会釈を交わすことで、なんだか心が通じ合った気持ちになる。
こうした小さなコミュニケーションが、日常の中に心の温かさをもたらしてくれる。
やがて、学校の近くに差し掛かると、ますます周囲の人々が増えていく。
校門が見えてくると、心が少し高鳴る。自転車を駐輪場に停める前に、気持ちを引き締めて周囲を再度確認する。
自転車の駐輪場は、学校の裏側に位置しているので、周りの人に迷惑をかけないよう注意しながら、駐輪場へ進む。
駐輪場に到着すると、他の生徒たちがすでに自転車を停めている。
自分の自転車を停める場所を選び、しっかりと鍵をかける。駐輪場はいつも整然としているが、時々自転車が混雑することもある。
今日は特に混んでいないので、スムーズに自転車を停められて一安心。
自転車を停め終わると、少し深呼吸をして学校の校舎を見上げる。
クラスメートたちが集まってきている姿が見える。
少し緊張しつつも、友達の顔を見つけると、心が和む。
今日も一日、頑張ろうという気持ちが高まる。
校舎の方へ歩き出すと、同じクラスの山田と出会った。
彼も自転車で来たらしい。
軽く手を挙げて「おはよう」と声をかける。
山田もにっこりと笑い返してくれた。友達との挨拶があると、学校に来る楽しさが増す気がする。
「今日は何を作るの?」
と山田が尋ねてくる。
料理好きな俺のことを知っている彼に、思わず
「唐揚げを作るつもりだよ」
と答えた。
「いいね!俺もそれが好きだ」
と彼は笑顔で言った。
その言葉に嬉しくなり、早く家に帰って料理をするのが楽しみになった。
朝のひとときのわずかな会話が、学校生活を彩る大切な瞬間に思えた。
校舎の前に到着し、気持ちを新たに教室へ向かう。
今日はどんな一日になるのか、楽しみで仕方がない。
新たな学びや友達との交流、さらには料理のことも頭に浮かび、期待が高まっていく。
「さあ、今日も頑張ろう!」
と心の中で自分に言い聞かせ、教室の扉を開ける。
新しい一日の始まりに胸が高鳴る。
席に着き、鞄を机の横に掛けると、次第に生徒たちが教室内に入ってくる。
いつも通りの賑やかな雰囲気が漂っているが、俺の視線はどこか気になる存在、佐藤さんに向けられていた。
彼女は昨日のことを思い出させるように、微笑みながら友達と楽しそうに会話している。
その姿を見ていると、心がドキドキしてきて、思わず視線を外してしまう。
しばらくして、教室の空気が少し変わる。
顧問の先生が教室に入ってきたからだ。
彼は落ち着いた声で「おはようございます」と挨拶をし、全員が静かになる。
代表生徒が立ち上がり、しっかりした声で「起立、着席」と指示する。
みんなが揃って動く様子を見ていると、学校という場の一体感を感じる。
ホームルームが始まり、先生は今月の予定について話し始める。
まずは行事の案内からだ。
運動会や文化祭の準備が進められているとのこと。
聞いていると、やはりワクワクしてくる。
特に文化祭では、クラスの出し物をどうするか話し合うのが楽しみだ。
毎年、友達と一緒にアイデアを出し合うのが恒例行事となっているからだ。
「運動会の日程は、来月の第一土曜日です。全員参加ですので、各自練習に励んでください」
と先生が続ける。
クラスメートたちの間からは、期待の声が聞こえてくる。
運動会は体育の授業だけでなく、友情を深める絶好の機会でもある。
次に文化祭についての話が続く。
「文化祭は、今月の最終週に行われます。今年も、各クラスが出し物を準備しますので、積極的に参加してください。特に、実行委員は準備に追われると思いますが、協力して頑張りましょう」
と先生が力を込めて言う。
その後、先生は月ごとの行事の詳細を説明しながら、忘れ物や健康管理の重要性についても触れる。
「体調を崩さないように、特に忙しくなるこの時期は気を付けてください。何か困ったことがあれば、すぐに相談してください」
と言い添えられる。
みんな頷きながら、真剣に聞いている。
佐藤さんも、頑張る姿勢を見せている。
彼女の顔を見ていると、なんだか安心感が湧いてくる。
どんな時でも、彼女がいるだけで学校生活が明るくなるような気がする。
話してみたいと思いつつも、なかなかそのチャンスが訪れない。
ホームルームが終わり、教室がざわざわと騒がしくなる。
友達同士で話し合いながら、次の授業に向けて準備をする。
俺も急いで教科書を取り出し、次の授業に備えた。授業は数学だ。
得意な科目だから、少し余裕を持ちながら教科書を開く。
授業が始まる前に、佐藤さんが近くに来て
「おはよう、今日はどうだった?」
と軽く声をかけてくれた。
心の中で嬉しさが広がり、少し緊張しながらも
「おはよう、今日はいい天気だね」
と返した。
お互いに笑顔を交わすと、ほんの少しだけ心が温かくなる。
こんな小さな会話でも、俺には特別な意味があるように思えた。
数学の授業が始まり、先生の説明が続く。
俺はしっかりとノートを取っているが、時折視線が佐藤さんの方に向いてしまう。
彼女も真剣に授業を受けていて、その姿に思わず見惚れてしまう。
どうしても彼女の存在が気になってしまう。周りの友達が楽しそうに話しているのを横目に、俺は少しずつ授業に集中することにした。
授業が進むにつれて、頭の中で問題を解くことに集中し始める。思った以上に問題がスムーズに解け、理解も深まっていく。
佐藤さんが近くにいることで、逆に頑張ろうとする気持ちが強くなったのかもしれない。
次第に、授業も進み、問題を解く時間が始まる。自分のペースで取り組む中で、周りの友達も同じように集中している。
そんな中、俺は佐藤さんが問題に取り組む姿を横目に見ながら、心の中で「頑張れ、佐藤さん」と応援している自分がいる。
授業が終わると、また賑やかな教室が戻ってくる。
友達同士の会話が飛び交い、今日も一日が始まったばかりだと感じる。
どんな出来事が待っているのか、少しだけ期待を持ちながら、次の授業へと向かうのだった。
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