第24話 結婚 妊娠 流産 そしてまた妊娠、出産

「本当にごめんなさい。貴方の大事な赤ちゃんなのに……。順調に育って来ていたのに今日、検査に行ったら、『心音が聞こえないから、赤ちゃんは死んでいる』って言われたの……」と杏奈は感情の赴くまま、人間が崩壊していくのではと心配になるほどの大きな咆哮の声を上げて号泣し瑛太に告げ抱き付いた。彼はずっと彼女を優しく抱き締めていた。


「私、話したと思うけど二十代の頃、子供を下ろした事があって。体に悪い事、自分の体を傷付ける事を、沢山してきたから。その影響もあったかもしれない。本当にごめんなさい。折角、頂いた命を育てられなくて」とまた声を上げて号泣した。夕暮れの薄暗い部屋の中だった。


「大丈夫だよ。仮に、子どもが無理でもそれはそれで仕方ない事だよ。そういうのを全部、含めて杏奈の事が好きになったんだからさ! それに将来は他人様の子供が沢山、我が家に来るんだし、そうなったら大変だぞぉ!」と敢えて瑛太は明るく言った。


 この事で二人は更に心の絆が強くなり、相手の事を信頼し愛おしいと思うようになっていった。それから三年後の一月、杏奈は陣痛が始まり、産婦人科に入り帝王切開で無事に男の子を出産した。息子が小さい頃、いつも親子で手を繋いで遊びに行った。あれから十八年、子供は一人だけだったが、その子供も大学生になり保育士を目指して勉強をしている。


 杏奈は思っていた、瑛太と結婚して本当に良かったと。杏奈の周りには、子供を堕胎した経験から産めない体になってしまった人も沢山いたからだ。母になるという覚悟がなく、男たちに体を許すような女性とは付き合ってはいけないし、この女性を幸せにすると決意しなければそういった行為はしてはいけないと今、二人はそんな事を話して息子に伝えている。

子供が生まれるという事を夫婦で真剣に考えて、喜びに包まれた家庭の中で子供と対面し子供の幸せを願って抱き締めたいと思っていた。

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