第17話 杏奈の優しさと包容力

 しかし、このように瑛太がいくら遊んでいたと言っても杏奈やその仲間たちとは出会わない遊びであり生き方だった。世界が違うと言っても過言でなく全く違った色の世界で二人は生きていたのだ。


 そして、瑛太は子供が好きだった事で保育士になり、児童発達支援管理責任者児発管になった。


 瑛太が杏奈と結婚したい本当の理由は何かと言ったら、それは杏奈の生き方の違いに魅せられたからだ。杏奈は年上だけではない、人生の修羅場を掻い潜ったという経験したものの見方ができる女性だったからだ。


 瑛太が保護者たちから、「先生からの注意がストレスになると、うちの子が言っているんですが!」と言われる事も良くあり、また親達から様々な理不尽なクレームを付けられた事もあった。悩んでいる瑛太を見て杏奈が言った一言は。


 「そいつらを呼んで来いよ。私が話しを付けてやるからさ!?」と半分、冗談とも取れ、しかし目の奥は本気とも取れた一言だった。その後、「だったら、自分の子を他人に預けるなよ。そんなに指導員に不満があるなら、自分で育てろよ! 自分にできない事を人に頼んでおきながら人の所為にしている奴こそ、幸せになんかなれないんだよ! そんな親に育てられた子供は不幸になるだけだよ!」と言った。そして、「そんな無責任な奴らの事なんか気にしない事だよ!」だった。


 瑛太は杏奈がそこにいるだけで、元気になれたし前向きにもなれた。世の中で強く生きている男性は皆、陰で支えてくれている伴侶がいる。男は女性の広い心によって成り立っているのだ。


 瑛太が担当している生徒の親が離婚して父親と生活している子が、土曜日の昼食の弁当を持って来られない日があった。杏奈に相談すると、杏奈は愛情を込めた手作り弁当を作ってくれた。その子は大喜びだった。

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