第16話 瑛太が過去に関係した女性 8人目

 大学を卒業して以前の地元の会社に新入社員として入社し立ての頃に、瑛太二十二歳が保育士として勤務していた現場の児童発達支援管理責任者児発管が女性三十二歳だった。


 瑛太は同年代や年下の女性には全く持ってモテないが年上の女性に好かれるという特技なのか良く誘われ、その女性の部屋で酒を飲んでいた。透き通るような白さの肌を持つ透明感のある美しい女性だった。


 ただ仲良くなって、互いの身の上話をするようになると離婚歴があり前の旦那からDVを受けていた事を告白されてメンヘラぎみの性格でもあった。その内に一緒に住むようになり、毎晩のように「抱いて!」と言われていた。


「疲れているから今日は止めよう!」と言った日は泣き出すか、それでも気が収まらない時は、女性なのに手や足を使って瑛太に対してDVが酷くなり、度々ボコボコにされ、それでも飽き足らないと、物に当たり部屋の壁には殴ったり蹴ったりして穴が幾つも開いていた。


 多分、極度の性依存症だったのだと思っていた。彼女は妊娠が怖くてピルを飲んでいた。そして思う存分、気を遣った夜はスヤスヤと静かに眠った。セックスは何故か上手で激しく、締りも良く名器だった。バックが好きで、いつも自分から四つん這いになって「入れて! 激しくして!」と言われた。


 その後はお決まりの騎乗位になって、何度も何度も気を遣り咆哮の声を上げていた。それが離れられなかった理由の一つだった。


 ある日の仕事帰りに、道端で動けなくなっていた子犬を見付けたので抱いて、動物病院に連れて行き診察をしてもらうと骨折だった。一旦病院に入院をさせ、支払いをして手術してもらい、ギブスとエリザベスカラーをしてもらって、部屋に連れ帰った。


 彼女からは毎晩のようにセックスをせがまれても順調にして上げていた。しかしある夜、犬が変な泣き声をしたので、心配になって動物病院に連れて行き診察してもらったら何でもなかった。


 犬を連れて帰って心配だったので犬の傍で寝ていたら、彼女は急に怒り出して「私と犬とどっちが大切なの!?」と凄い剣幕で叫び、いつものように瑛太に暴力を振るった。


 その後、怒りが収まらなかったのか、何とその犬をマンションの十五階の窓から投げた。止める暇もなかった。呆気に取られて夢を見ているようだった。彼女が怖過ぎて、その時は声も涙も出なかった。


 瑛太は部屋から裸足で飛び出て、エレベーターのボタンを叩いたが直ぐに来なかったので、非常階段で下りて行った。犬はギブスとエリザベスカラーが飛び散っていて穴と言う穴から血が噴き出て死んでいた。 その場で呆然と立って涙が溢れてどうしようもなかった。


 一旦、端の方に犬をよけて、瑛太は部屋に帰り着替えて、毛布を取り、段ボール箱を探して、階下に降り犬を毛布で包み箱に入れてタクシーを拾い実家に帰って庭の隅に穴を掘って埋めた。


(このままだと僕も殺される)と思ったので、彼女の部屋には帰らず、明くる日に当時の部長に今までの全てを話して相談すると、その彼女は本社に呼ばれ、その後、職を解かれ家族と相談し精神病院に入院した。


 その後の彼女がどうなったかは知らない。

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