第14話 瑛太が過去に関係した女性 6人目

 大学生時代の当時、昼間に良く通っていた喫茶店のお客さんで音大に通っていた萌々香さん。大学近くの昭和時代に良くあった喫茶店で、その辺に住んでいる独身のオバサンやオジサンが夜な夜な盛り上がって過ごしていた当時の週末だった。


 たまたま夜の送迎のバイトが休みの日だった。そこで、その場からは完全に浮いていたピアノを弾いていた萌々香さんに出会った。


 最初は何処かの「ホステス?」と言うようなドレスを着ていたので、「何者だ?」と思ったら、音大に通う一つ上の萌々香さんだった。その素性が分かった時に清楚な女性が好きだったので一目惚れをしてしまった。


 結構、周りのお客さんから飲まされて酒が入っていた瑛太は、酔ったフリして萌々香さんに絡み、まんまとメアドを交換した。そして次の日に、おそるおそる一言送ってみた。


「瑛太です。昨日はメール交換ありがとうございました。これから連絡しても大丈夫ですか?」と。暫くして返事が来た。「大丈夫ですよ。こちらこそ、お会いできて良かったです」

何通か、やり取りをして「次の週末にデートしましょう」と返信が来た。


 その頃に瑛太は車を持っていなかったので、萌々香さんが家の近くまで迎えに来てくれた。当時、高価な外車のBMWで左ハンドルだった。もちろん、当時で出たばかりの新車だったらしく、走っていると車好きの人に見られていた。


「うちの両親が瑛太さんにお会いしたいと言っているので、我が家に来て下さい。」と言われて、瑛太は緊張した。萌々香さんの車が門の前に着くと、門が自動で開いた。


「こんな大きなお家に住んでいたのですか?」

「はい、あの喫茶店は親戚のお店なので。」

「だからたまにピアノを弾いていたんだな」と思った。


 車を駐車してイングリッシュガーデンの庭を歩いて様々な草花の名前を教えてもらって、大きなドアを開けて中に入ると、圧倒されるほどの様々な家具や壁に掛かっていた絵画などが物凄く高級そうで場違いな所に足を踏み入れてしまったと後悔した。


 両親に挨拶したら、父様が「酒を用意しているから飲もう!」と言われた。その頃の瑛太はそんなに酒が強い訳ではなかったので正直、困惑していた。物凄く飲まされた。多分、急性アルコール中毒の一歩手前までだったと思う。そして瑛太は怪獣になって、ゲロをテーブルの上で吐いてしまった。


 父様はその後に母様に怒られていた声は聞こえていたが、天井がグルグル回って数時間、その場で寝かせてもらった後に、タクシーを呼ばれて瑛太は自宅に帰った。


 その後には萌々香さんに電話が出来なくて、更には良く行っていた、お気に入りのあの喫茶店にも行けなくなってしまった。それ以降、音大に通っている女性には声を掛けられなくなった。


 今、考えると「うちの可愛い娘をナンパした奴を懲らしめてやろう」と父様は思っての事だったんだろうなと思った。

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