第13話 瑛太が過去に関係した女性 5人目
瑛太は昔、高級クラブの仕事をしていた。と言っても、お姉さんたちを送る運転手だ。昔と言っても本当に大学時代の頃で、深夜の送迎の運転手をしていた。
そういう時にお姉さんたちが良く言っていた言葉が「良い客」の条件はイケメンでもなんでもなくて、「金払いの良い人」だった。更には、店に金を払った上に、お姉さん方とゴルフに行って、同伴をした上に小遣いをくれて、土産やプレゼントをくれる人だ。お触りもしないし、嫌な事は言わず、しつこく誘わず、金払いの良い人だ。
そういう店だから、「女性は触っても良い」と思っている人も多い、「今日は、胸を鷲掴みされた」とか、「今日は、スカートの中に手を突っ込まれた」とか、「今日は耳元で下衆の極みのような汚言葉を囁かれた」とか、「それでも私たちホステスは笑顔で接客しないといけないからストレスが溜まるのよ」と言って、「今日はホストクラブに送って!」と言ったお姉さんもいた。
だから、ただひたすら楽しく飲んで、金払いの良い人の事は車の中でもお姉さん方は名前まで出して褒めていた。そんな時には瑛太にも小遣いをくれた。そういう仕事をしていたお陰で、瑛太は飲み屋に行っても綺麗に飲んでいる。
会社の金は使うんじゃなくて、自腹でも見栄を張らずに綺麗に飲む事をその時のお姉さん方に教わった。だからお水の杏奈の気持ちも良く分かっているつもりだった。
お客さんの前では、キャーキャーしているけど、裏では悪口しか出ていない。勿論、杏奈は客の悪口は言わないが。むしろ、金払いの悪くてゲスイ男の場合は名前ですら呼んでない。勝手にあだ名が付いていると思った方がいい。それも聞いていられないような、酷いニックネームで、車内は悪口大会だ。
お客様全員の乗った車を見送った後は、車が見えなくなるまで深々とお辞儀をして見えなくなった途端に「ボクちゃん(その時はこう呼ばれていた。運転手だけど)、今日は早く帰りたいからスタンバイヨロシク!」
お姉さん方だって生活の為にやっているだけで、お客様の奴隷じゃないんだから、あんまり威張られてもストレスが溜まるから車内では大変な事になる。
一番嫌だった仕事は車内でゲロ吐かれる事だった。お客様に極度の気を使っているから、しこたまお客様に飲まされて、そして車の中で綺麗な顔したお姉さんがゲロゲロゲローー!
特に新人のお姉さんが多かった。それの掃除がまた臭くて今、思い出しても吐きそうになる。だから今は子供たちのゲロの掃除も難なくできるようになったのは、その時のお陰かもしれない。他の男と呑んで帰って来てから、当時付き合っていた彼女には散々、やらされたからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます