第12話 瑛太が過去に関係した女性 4人目
あれは、瑛太がまだ十八歳の頃だった。
大学生当時の、レストランのバイトで送迎が暇な時に洗い場をしていて、厨房で仕事をしていた。カウンター越しに来る客は金持ちそうな淑女から熟女から、ダンディーな紳士、さらにはどう見ても怖い仕事の方々まで様々だった。
時々、淑女から熟女に、「瑛ちゃん、今度飲みに行こうよ~」なんてお誘いを受ける事もあったが社交辞令として受け取っていた。
「この人、俺をまた玩具にしようとしているのでは?」と思えるようなオバサマが多かった。その中で、とびきり目立つ女性がいた。まず、顔は童顔で可愛い感じだったので、もしかしたら年下? と思えるような感じだった。
後で聞いたら三十歳手前だったが、絶対に見えなかった。いつも、キチッとしたスーツを着ていて、「何をしている人なのかな?」と思って見ていただけだった。そう。彼女は有名な関西のホニャララ団の酋長の娘さんだった。
カウンター越しに話しをしていても、その娘さんは笑ってくれていたけど、その周りにいたボディーガードらしきお兄さんたちの顔が怖かった。そしてそのお兄さんたちの小指は普通ではなく、第一関節とか第二関節の先が無かった。話の内容がいつもちょっとズレていて、何を面白い話をしてあげても全く笑わなかった。
いつも鋭い目で瑛太を見ていて、「いつか殺されるのではなかろうか。何もしてないけど」と思っていた。ある日、ホールの人が休んで忙しかった日に瑛太はチーフに言われて、ホールに出てウエイターをして酒などを運んでいると、トイレに行く廊下でばったりその女性とかち合った。
「げっ! 何か言われる!」と思った瑛太は次の瞬間、腕をつかまれて、凄い勢いで引っ張られ女子便所の中に連れて行かれた。
「じょっ、じょっ、女子便所ですよ! ここは!」と……呟く間もなく、話し出す女性。
「瑛ちゃん、今度デートしない?」
「周りの男の人たちが怖いんで」
「その時は来させないから」
「なら良いですよ」
「じゃぁ、後でここに電話して!」と言ってメモ用紙に電話番号を書いて渡された。
電話をしたら、次の休みに会って、クラブのお姉さん同様に玩具にされた。年上の女性は皆、瑛太を玩具にした。それでもお陰で女性を悦ばす術を習う事が出来た。
その後はその女性に会うと、「瑛太、大丈夫か? 具合悪いんじゃないのか?」とチーフに心配されながらバイトをこなした。多分、今も鮮明に覚えている過去の女性たちの中では、この人が一番、怖かった。
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