第11話 瑛太が過去に関係した女性 3人目
当時の彼女の身長は百五十八センチでポッチャリ体形、可愛いが美人で大人びた顔をしていた。口の横の黒子があって八重歯が可愛かった。サラサラの少し茶色で長い髪。横を通ると、シャンプーの香りがフワッとしていた。
「歴代の瑛太の彼女で一番、顔が良かったのは?」の質問で、親友は。
「う~ん、道子かな?」と答えるくらい美しかった。
道子は、そろばんで、日本でかなり有名な子だった。だから数学はいつも学年で一、二位を争う秀才だった。瑛太はそれほど目立つ生徒ではなかった。
その後の彼女は太り出したので、陸上部に入った。そしたら練習を重ねるようになって、痩せて行ってスレンダーでまた更に美しさが増した。
高校時代に他の彼女、例のバージンを貰った子と付き合っていた時を抜かして正味で二年ほどの付き合いだった。あるあるだと思うが、アスリートは引退すると太る。力士は別だが。
今まで、凄い運動量だったから、食べても、食べても太らなかったけど、運動を止めて同じ量を食べるから皆、太る。道子も現役時代は四十五~五十キロくらいだったのに、付き合いが終わって大学に行った時に、彼女の体重は八十キロに到達していた。
その当時も付き合っていた酒飲み友達としての、クラスメイトの女子から話しを聞いたが、一緒に食事に行って、「何が食べたい?」って訊くと、「唐揚げや豚カツが食べたい」と言い、店に行くと二人前を注文してご飯もお替わりすると聞いた。そんな訳だから見事なまでにデブまっしぐらになって百キロに到達したそうだ。
そんな道子を先日、ネットで検索してフェイスブックを見たら、高校時代のそろばんや陸上そして大学時代の写真も出てきて、「おぉー! やっぱ可愛くて美人!」と思ったけど、その中に紛れて、ふやけた相撲取りのオバサンが写っていた。
「えぇ? こんな写真を恥ずかしげもなく公開していて良いのか?」と思った。
顔は確かに道子だった。しかし、体重は多分百キロどころじゃないだろう、と思うまで顔がパンパンだった。満丸く膨らんだ顔の真ん中に小さなパーツがのっていた。痩せれば間違いなく高校時代のあの時の面影になると思ったが、サラサラで長かった髪の毛は、脂ぎってベターとしていて、歳を取ったからか少々薄毛になっていた。
「いやぁ、俺はこんなオバサンは知らない」
フェイスブックの情報によると、結婚もして子供もいるようで、社会福祉関係の仕事に就いているみたいだった。あの頃の可愛くて美人だった道子は、もうこの世にはいない。そして瑛太の記憶の中の道子の思い出も消し去ろうと思った。
どんなに可愛くて美人だった子でも、いつかオバサンになってしまう。親友に道子の写真を送ったら、「嘘だぁ!?」と言っていた。
ちなみに、別れた理由は道子が他の男子と一緒に帰ったのを見たからだった。瑛太は気が小さかった。そして器も。それは今でもだ。
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