第4話 百円ショップへマグカップ購入

「このマグカップじゃ大き過ぎるじゃない、小さめのにしたら良いんじゃないのかな?」


「そうですね」


「これぐらいのが、良いと思うわよ?」


「本当だ。丁度いいかも? これにします!」


「店員さん! すみません! これを六十個、欲しいんですが?」


「こちらですと、在庫は二十四個しかないので、すみません」


「そうですか……。ではもう少し探してみます。お忙しいのにすみませんでした」


「アンタは偉いね。そうやって店員さんを労う事が出来るんだからさ」


「だって、ここの店員さんは人数が少ないからか、いつも忙しそうだし」


「アンタのそういう所をアタシは尊敬するよ。そんな事が普通にできるから他人の子供たちの面倒もみられるんだろうね?」


「そんな事ないですよ。そんなに褒められると恥ずかしいですから」


「話を元に戻すけど、こういう持ち手のある透明のカップも良いんじゃないのかな?」


「どうしてですか?」


「子供たちだから手を滑らせる事もあるじゃない。だから絶対に持ち手はあった方がいいと思っているんだ」


「それはそうですよね」


「でね。透明だと、中身の色も分かるだろ?」


「はい」


「アンタが徐々にお菓子作りの技術が上がれば、今度は層になるお菓子……例えばパフェやヴェリーヌを作った時に透明だったらその層の美しさが際立つじゃない?」


「ヴェリーヌって何ですか?」


「ゼリーやムースなどは分かるわよね?」


「はい」


「それらを層にしてグラスに盛り付けるスイーツのことで、見た目も涼しげでだし、爽やかな味わいが暑い日にぴったりなの。お洒落なフレンチやイタリアンなどで前菜やメイン、最近ではデザートにも良く使われる手法のことよ」


「それは良いですね。店長さん、お忙しいところ、すみません」


「はい、何でしょう?」


「このカップの在庫は何個ありますか?」


「これでしたら百個ぐらいありますよ。実はこれは夏のキャンペーンでサービス品として仕入れたのですが余ってしまったので、もし全部買って頂けるなら……、原価の一個三十円でお売りしますが如何でしょうか?」


「子供たちだから、割る事を考えれば百個を頂いていた方がいいかもしれませんね。では全部頂きます」


「ありがとうございます」


「杏奈さんと行動するとラッキーな事ばかりで嬉しい限りです」


「何をお世辞言っているのよ」


「本当じゃないですか? お菓子も作れるようになったし、キスも二回もしたし」


「声が大きいよ!」


「あっ、すみません」


「お待たせいたしました。百個以上ありましたので、お代は百個分で余りはサービスさせて頂きました。お代は三千円です」


「ありがとうございます」


「こちらのセルフレジでお会計をお願いします」


「そうか、最近は無人レジなんだね」


「スーパーもそうですよね」


「アタシはこういうのが苦手なんだ」


「でも簡単だからやってみますか?」


「うん。教えて!」


「では『スタート』を押して下さい」


「うん」


「有料レジ袋を買いますか?」


「いいえ」


「では押して下さい」


「店長さんから頂いたバーコード、これをこの窓口に翳して下さい」


「うん」


「『お会計』を押して下さい」


「うん」


「現金を確定して『支払いボタン』を押して下さい」


「うん」


「『領収書印字ボタン』を押して下さい」


「うん」


「はい以上です」


「簡単だね」


「僕はいつもカードで買うんですけど、これは学童の物品なので領収書にしたんです」


「そうだったんだね。やり方を教えてくれてありがとう」


「いいえ。では店長さん。今日はどうもありがとうございました。お陰で良い買い物ができました」


「本当にアンタは人を労う事ができて本当に偉いよ」


「そんな事ないですから」

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