第3話 歩きながらの会話と初キス

「はい。では先に百円ショップに寄って、マグカップを買って、それから行きましょう。僕の知っている所は安いお店ですけど」


「うん。どこでもいいよ」


「お好み焼きのつくしさん、知っていますか?」


「うん。知ってるよ。私も良く行くから」


「二軒とも、ここから近いからね?」


「はい。僕は結構、好きで良く一人でも行くんですよ」


「あそこのママさんは気風が良いからね?」


「そうなんですよ。それに関東では珍しいんですけど、明石焼き玉子焼きがあるので」


「三つ葉と万能葱を浮かべたお吸い物に入れて食べるんだよね? アタシも好きだよ」


「奇遇ですね。僕も大好物なんです。じゃぁ、行きましょう!」


「話してもいいですか?」


「うん」


「杏奈さんの仕事は何ですか?」


「今日は休みにしたんだけど、夜の飲み屋を三軒、掛け持ちでやっているんだ」


「それは大変ですね」


「頼まれるとイヤって言えないからさ」


「杏奈さんは美人だから引く手数多でしょうからね」


「そんな事ないよ」


「いや、僕の好みですから。僕は意外と女性を見る目だけは肥えているんですよ」


「何を言っているのよ。恥ずかしくなるからそんな事、言わないでよ」


「あれっ? 杏奈さん、赤くなっていますよ」


「ヤメてよ!」


「僕は杏奈さんの事が大好き、いや愛してるから」


「アタシも瑛太さんの事……大好きよ」


「そっか……、残念だな……僕の事は愛してくれてはいないんですね?」


「……そりゃぁ、アタシも愛しているわよ」


「本当ですか? 嬉しいです。相思相愛って奴ですね」


「何をするの?」


「誰も居ないからいいでしょ?」


「ムム、ムムム……」


「ダメよ、こんな所でキスなんて!」


「大丈夫ですよ。周りに誰もいないじゃないですか?」


「杏奈さんの事を僕は愛しています。僕の彼女になって下さい! お願いします!」


「……はい、こんなアタシで良ければ、こちらこそ、お願いします」


「ヤッター!」


「ムム、ムムム……」


「ダメって言ったじゃない、こんな所でキスしたら! 人に見られちゃうじゃない?」


「アパートだったら良いんですか?」


「キスは人に見られるような所でするもんじゃないでしょ? 日本人はさ!」


「分かりました。食事が終わってアパートに帰ったら、いっぱいさせてもらうから」


「そういう意味でもないけどね!」

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心を焦がし愛し愛されて @k-shirakawa

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