第2-2話 瑛太のお菓子作りの練習と杏奈の個人教授

「このボウルの水気をちゃんと取ってから、ここに卵白を二個分入れて見て」


「はい。入れました」


「そしたらグラニュー糖を五十グラム用意して」


「はい、五十五グラムになっちゃいました」


「さっきも言っただろ? お菓子は分量通りにしないとダメだってさ!」


「はい。すいません」


「五十グラムにしました」


「そしたらその半分量を卵白の中に入れて」


「はい、入れました」


「泡立て器で攪拌して!」


「はい」


「こんな感じですかね?」


「いや、未だだよ。もっと頑張って!」


「腕が……」


「アンタはひ弱かい?それに不器用なのかな? お世辞にも上手とは言えないよ。ホラッ! 貸して! こうやって大きく泡立て器を使えば空気が入るだろ?」


瑛太もまた杏奈がお菓子を作る女性的な姿に魅せられていった。


「なるほど……」


「ホラッ! やってごらん!?」


「こうやってやればいいんですネ!?」


「本当はさ、ハンドミキサーがあると簡単なんだよ。三千円ぐらいかな、電器屋で売っているからお菓子作りをするなら必需品だよ」


「今度、買っておきます」


「このぐらいですかね?」


「卵白の角がピンと立つぐらいまでだよ」


「こんな感じですかね?」


「うん。そんな所かな? それをメレンゲって言うんだよ。それはそのままにして。溶かしたチョコと卵黄のボウルに生クリームの多い方をゴムベラで手早く掻き回して」


「はい」


「そのボウルの中にメレンゲを二回に分けて入れて掻き回して!」


「そうだよ。ゴムベラで切るように混ぜれば、卵白の泡を潰さないから」


「本当だ。縦に切るように混ぜるんですね」


「そうよ。そう、そう。上手になって来たわよ。そしたらもう半分を手早く入れて掻き混ぜて!」


「はい」


「出来たじゃない。それを器に入れるんだけど無いみたいだから買った方が良いわね。この本にはココットだけど、子供たちだから小さなマグカップの方が持ち易いんじゃないかな? とりあえず、ここには無さそうだから湯呑みでもいいよ。入れて見て!?」


「はい。こんな感じですかね?」


「ラップで蓋をして。そうよ。それを冷蔵庫に仕舞って、固まったらさっきの生クリームを上にスプーンで載せて、この本ではミントになっているけど、子供たちだから癖のないセルフィーユやイタリアンパセリの方がいいかもね?」


「杏奈さんのお陰です。今日はどうもありがとうございました!」


「子供たちが喜ぶ顔を私も見たいよ」


「明日、見学に来て下さいよ」


「えっ、行ってもいいの?」


「はい、保護者の方々も良く見学に来ますから大丈夫ですよ。それにボクはこう見えて児発管児童発達支援管理責任者だから」


「そんな役職、初めて聞いたよ。児発管ってそんなに偉いの?」


「はい、管理者の先生が僕の大学の同級生で、その次ですかね。杏奈さん、では明日、十五時前に来てください」


「分かったよ。お邪魔するね。何か持って行った方がいいのかな?」


「手ぶらで大丈夫ですよ。みんなそうだから」


「分かったわ」


「教えて貰ったから夕食をご馳走しますよ」


「ホント、いいの? 嬉しい!」


「帰って来たらチョコレートムースの試食もしましょうね?」


「そうだね。食べてみないと分からないからね」

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