見知らぬ事件

天川裕司

見知らぬ事件

タイトル:見知らぬ事件


(取り調べ)


警察「…では、あなたとピクニックに行ってる時に息子さんは?」


母親「…そうです。あの子、私が止めるのを無理やり振り払って。うう…うぐぐぅうぅ…」


現場は断崖絶壁。確かに向こうに海が見える。

息子の遺体は水●体で上がった。


崖の所には、息子が脱ぎ捨てた靴2つと、

飛び降りる前にポケットから出した遺書が

投げ捨てられるように置かれていた。


警察「それでこれが、息子さんが以前に書き認(したた)めていたという遺書ですか?」


母親「…グス…ええ。なんであの子…どうしてあの子の悲しみに気がついてやれなかったんでしょう!おぉおぉ…」

母親はその場に泣き崩れた。


警察は無理やり母親を立たせ、こう言った。


警察「遺書はこれ、ワードで打ち込んだものですね?て事は誰にでも書けるということです」


警察「なぜこの場所を選んだんですか?」

母親「…え……?」

警察「時間的に見て、ここから飛び降りたとして、水●体で遺体が上がる筈ないでしょう?」


警察「経過も無理ばかりだ。息子さんと一緒にピクニックで来ていて、さっき飛び降りたと言う。遺書にしても脱ぎ捨てられた靴にしても、あまりに滑稽に出来過ぎている」


警察「それにこの崖のすぐ下は、ホラご覧なさい。少し向こうまで広がってる岩場です。ここから飛び降りて入水する筈がありません」


母親「そ、そんな…わ、私が嘘ついてるって言うんですか!?」


警察「あなたをこの場で逮捕します。殺人容疑です…そう言って良いほどの状況だと思いますが?」


母親「な、なんてことを…本当なんです!本当に息子は自分で海に飛び込んだんです!」


母親「今、状況を見て納得させられるところも確かにありますけど…でも本当なんですよ!」


母親がこのとき言ったのは本当だった。

この母親は、息子を手に掛けていない。


念のため調べたところ、

母親は精神を犯されていた。


息子は少し向こうの断崖なから身を投げていた。

そこは海面が近く、飛び降りれば入水する。


そして警察と母親が今立っているこの断崖は、

息子と母親がその昔、

よく遊びに来ていた場所だったと言う。

その息子がまだ子供の頃の事だった。


母親の精神の空白が見たその時間差だけが、

このとき嘘をついていた。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=DZqFehj3zoM

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見知らぬ事件 天川裕司 @tenkawayuji

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