初めての蕾。

 エルのベーサルシュートがニョキニョキ伸びて、元の枝を追い越した頃。

 薔薇を育てている先輩から、挿し木の子を頂きました。

 挿し木の子はさらに育てるのが難しいです。

 新苗が子供なら、挿し木は赤ちゃん。

 なのに、本には、挿し木の仕方は書いてあっても、挿し木をしたその後の育て方が載ってないんです。

 頂き物だし、枯らしたくない。

 エルと、他に挿し木が二株加わって、三株になった薔薇たち。

 私は毎日写真に撮りながら、せっせと世話をしました。

 

 やがて、エルのベーサルシュートの先には、蕾の赤ちゃんができました。


 どの本にも、新苗の蕾はポキっと折って摘むと書いてあります。


 植物は種を残したい。だから花を咲かせようとします。けれど、花を咲かせるにはかなりのエネルギーがいるんですね。なので、花を咲かせてる間、株の成長は止まってしまうんです。まだ子供の新苗は枝葉と根を充実させるのが一番。

 それで、新苗の子は、秋までは花は咲かせずに育てるそうです。


 小さな蕾を手折った時。私は涙が出そうになりました。ごめんね。せっかくつけてくれたのに。

 写真にその蕾を撮って、可哀想ですが捨てました。お墓を作りたいぐらいでしたが、流石にやめました。


 あの頃は本当、初めてのことだらけで、毎日発見の連続。


 今では、夏の間、暑さで薔薇がバテないように、毎朝蕾を摘んでも、何も思わなくなってしまいました。ああ、あの日の私よ、カムバック! 

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