トンチンカンな薔薇育て

 エルを迎えて3年経った今なら、わかることが増えています。けれど、エルを迎えた時は、わからないことだらけでした。薔薇を育てるなんて初めて。


 まず私は大きな間違いを犯します。


 初めてなのに新苗(前年の秋から冬に接ぎ木したものを鉢上げした、一年目の若い苗木のこと)を買ってしまった!

 

 新苗は安く手に入ります。販売店で育てられてないから安いんですね。けれど、若過ぎるから育てるのが大変なんです。


 しかも。


 大は小を兼ねる。

 と、大きな鉢を買ってしまった私。

 新苗は少しずつ鉢増しをして育てるのがセオリーなのに、いきなり3号ぐらい大きな鉢に植え替えてしまったんです。


 それでもエルは今までより環境がよくなったと感じたのか、新しい葉を展開し出しました。


 私は大はしゃぎ! 


 私は薔薇の育て方の本を三冊買い込んで、それを見ながら、毎日エルをスマホで撮って観察しました。小さな芽の出かけ写真がスマホにいっぱいになりました。

 もうね、ちょっとした変化でも嬉しかったんです。


 すると、台木(ノイバラなどの強い品種の根を利用するため、大体の薔薇はノイバラを台木として、接木をされています)のところから、何やら芽が出てきました。この根本から出る芽は重要で、ベーサルシュートと言って翌年に花を付ける大切な枝に育ちます。

 

 薔薇の本に書いてある通り、ベーサルシュートが二本も出たことに私は歓喜しました。


 この子、弱ってたけど、やる気はある!


 私は嬉しくなって水をちょこちょこやりました。が、これも、ブッブーでした。

 鉢が大きくしたのですぐには土が乾かないんです。根は水分を求めて伸びます。鉢の中が濡れたままだと、根を伸ばそうとしません。水があるから。根が張らないということは、貧弱に育ちます。


 水やりは3年経ったいまだに難しい、永遠の問題。


 そして、次の難題が。


 日当たりです。 


 薔薇は日光が大好き。

 うちはベランダ南側だし、と思ってましたが、エルを育て始めてからわかったことがあります。5月中旬から、日の高さが高くなる関係で、うちのベランダには直射日光の当たる場所が一本の線しかないということ。その線は時間と共にズレて行くこと。

 10年以上住んでるのに気づかなかったことです。


 これにはかなり苦労しました。

 私はバイトが入ってない日は、とにかく1時間おきに薔薇の場所をその線上に動かす作業をしました。

 いやいや、これはないでしょうと今では思います。薔薇はちょこちょこ場所を動かされるのを嫌います。


「私の場所どこ!?」


 となりますし、自分のいる場所に適応しようとするからです。


 大真面目に薔薇のためにしていたことです。

 エルは不満だったかもしれませんが。

 ただ、「薔薇は足音で育つ」なんて言われるほどですから、私の薔薇愛が行き過ぎていていても、薔薇も「ありがた迷惑よ」とは思いつつ、嫌ではなかったのではないかと思います。


「このご主人、毎日私のところばかり来るわ」


 薔薇じゃないのでわかりませんが。苦笑


 まあ、日が何時間かでも当たってれば多少は育つ。もう少しどしんと構えて育てていいのだと今は思っています。

 日当たりがいいところよりかは発育が悪いとは思いますけれどね。



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