黒白銃声シューベルト

涙空希跡

第1話

歓声が響き渡る――――――――――――


僕は、生まれた――――――――――――


銃口に接吻けた――――――――――――





そして、一緒に引き金を弾いた。

バンッ







-真冬の季節-


雪の音が聞こえる。


しんしんと積もる。


銀色と真っ白な粉。





春は、まだ来ないかな――――――――――


-国際音楽館-


僕の名前はクレイドル。日本国籍に住む普通科の一般人だよ。そうだね、お金がもう少しあったら一流の音楽学校に通いたかったかな。…なんてさ。僕には無謀な果し状かなみたいな?


さてと。僕は今照明のスポットを浴びていた。一礼をし、舞絵をしっかり見つめて頭を下げる。同時に息を吐く。僕は祭壇上階段から涼しく降りた。


スッ…と、擦れ違い様にある彼女に見つめられた。目と目が合う、アイズ。彼女のかおは涙していた。僕は見て見ぬ事にして去り際に花束を頂いた。と、同時に愛のコクハクを承けたわまった。



「キミは目立つ事が嫌いじゃなかったかな?」


「貴方の口は黙って、指先を動かしてればいいのよ明日の正午一時に¨雪ノ光公園に来て。」


僕の胸板に手紙を押し付けてブーツを鳴らし帰るあの人。名前はスイムさんと言ってね、超有名音楽高校に通う可愛いレディなんだよ。生憎今日は機嫌が悪かったみたいだ。

僕の演奏会を久しく鑑賞し過去の熱意が覚醒したのでは?


-雪ノ光公園-


「なんだい、話って?」

「貴方、私の捨てた楽譜の断片ヒロタでしょ。」


察知が良い。彼女は元々同じ学科に通っていた生徒だったのさ。金欠で通えなくなり一段レベルを下げ転校し故に時は経ち―――――



「で、僕を追って帰って来たと。」


「なんでそうなるのよ ! 」


まぁ、彼女とは馬が合わないと言うかね…

話の蟀谷に亀裂を刺してしまうのさ。


「もうっ、どうでもいいけどねぇ、貴方、あの楽曲を弾く気はあるの?」


!


「その楽曲はシューベルトかい?」


「そうよ。」


何故か思わず笑顔を見せてしまった。

攻めた。

銃口を彼女のハートに押し付ける。


「彼の作品の事で悩んでいたんだね?」


彼女は一度、深呼吸をした。雪の降る空気と共に、ブレスを、吐く。



「私ね…昔っからピアノが上手く弾けなくて、正直ずっと辞めたかったの。けどね、私の為に、お金を掛けてくれた両親の事を想うと無念で、成長と共に、感情も麻痺していったの。成長過中、学校の悩みとか、人間関係とか、バイトの事とか……。私は下手だから辞めたかった。それでも、辞めなかった。どうしてだと思う?」


「…キリが良かったから?」


「…ある意味ね。でも最後にどうしても弾けるようになりたかった楽曲があったの。」


「その楽曲とは?」


「自分の中の卒業ソングよ。その楽曲は結局難しくて¨できなかった¨だからもっと素直に優しい楽曲に還って良いと、情けない自分を許してあげたの。」


「その…曲の題名は、シューベルトの子守唄。」


スイムは手提げカバンから一冊の楽譜を取り出すとクレイドルに押し付け大声で銃声を叫びました。引き金を弾くと、言葉は弾と成り、彼のハートを射貫きました。




「好きだって告ってんのよッ…!」



ジャキッ…と、、二度目の銃口を額に向ける。


「次、また好きにさせたら、『弾く』から。 」


そう告げて行った彼女はもう居ない。この冬再び転校したらしい。今年最後の国際音楽館コンクールか。最後、彼女にこの曲を届ける事はできなかった。かつて、君が大切に温めていた ずっと ずっと 弾きたかったこの楽曲

その曲を 今 この僕が 星詠みの語り手だ。今日、僕はこの日の為に生まれた。


[エントリーNo.31 クレイドル。

曲はシューベルトの子守唄。]


それではどうぞ。

クレイドル…。




職人のプロに仮面が掛かる瞬間――――――

これを人は、神憑りと伝う――――――――

指に鍵盤に愛情が触れる―――――――――

楽器は唄い僕は叫ぶ―――――――――――

愛の黒白銃声――――――――――――――

クレイドル―――――――――――――――



ピアニストクレイドル

僕が受け器になるから

あの人を乗せてあやす

泣きやむまで揺蕩うよ





…スイム 君が好きだ…










終わり

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