第25話 柚子、デコポン、グレープフルーツ
「ね、じょーたー。ゴールデンウィークさ、久しぶりに旅行でも行こーよー」
翌日。晩ご飯中だというのに、またまた華乃は僕の腕に抱きついてくる。
でも、こんな風に猫撫で声で甘えてくるのは結構珍しい。胸は当たっているが、いつものエロイジりとはまた違い、素で甘えてくるときのトロンとした表情だ。まぁ僕のちんぽはエロイジりのときと同様のフル勃起なんだが。
「え? うーん、僕も行きたいけど、でも父さんも母さんも忙しそうだからなぁ。休み取れないんじゃないかな、借金もあるし。華乃んちもいつも通りだろ?」
華乃の両親は中学教師だ。顧問をしている運動部の試合やらがあるせいで、例年、ゴールデンウィークにも連休は取れていない。華乃が言っている旅行というのも、うちの家族旅行に華乃がついてきた――ということが昔何度かあっただけの話だ。
「うん、そだけど。だから、さ。二人でいーじゃん。もうあたしら、子どもじゃないんだし」
「うーん、難しいんじゃないかなぁ、それは」
「えー、なんでー? あはっ、もしかして、さ、じょーた……なんかイケない妄想しちゃってるのかな……♪」
「イケない妄想もしちゃってるけど、それ以上にヤンデレの目があるからだよ。今もまさに僕の目の前10センチの距離に光を失ったギョロ目があるからだよ。震えが止まらないからだよ」
これだけ怖いのにフル勃起が収まらないのは、生命の危機を感じた脳が子孫を残そうとして――だとか言ってる場合じゃない。紫子がまた怖くなってる。対面の席から身を乗り出して、僕にヤンデレ顔を突きつけてきている。体からバニラのような甘い匂いが湧き出ている。これ、ヤンデレ臭だったのか。
「兄さん……そうやって……意中の女性の前であえて他のメスと親しげにしてみせることで……嫉妬心を煽ろうする小細工……恋愛のテクニックなのかもしれませんが……紫子は……大嫌いです……」
「ひっ」
「落ち着くんだ、柚木」
「放っておいてください、文先輩。これは妻としての務めなのです」
「大切な後輩が犯罪者になるのを放ってはおけないな。とりあえず、ナイフとフォークは手放そうか。それは白石特性ハンバーグを食べるための道具だからな」
文の両手がヤンデレの両腕をそっと下ろさせてくれた。助かった。ナイフが僕の首元に、フォークが華乃の目の先に向けられていたからな。本気で死ぬかと思った。
「ぷ。なにこの子。憧れのお兄さん取られちゃってヤキモチ焼いちゃったかー、うぷぷっ! 可愛すぎなんですけどー」
あの状況で全く動じてなかったの、ほんと凄すぎる。この白ギャル、ポンコツなくせに、修羅場におけるメンタルだけ異次元レベルで強い。
一方の紫子も、文にだけはすっかり手綱を握られている感がある。モジャモジャ先輩になだめられて、ある程度落ち着きを取り戻した様子で、
「……というか、デカ乳輪ギャルさんは、なぜ平気な顔で兄さんの腕にデカ乳輪を押しつけているのですか? 恥とかないんですか、デカ乳輪のくせに。下品極まりないドデカ乳輪のくせに」
「うぷぷっ! ほんっと、メスガキ紫子はわかってないなー、じょーたのこと! なーんにもわかってない♪」
「はぁ? わたしほど兄さんのことを理解してあげられる人間なんてこの世にいないんですが。兄さんがわたしのモサモサを好きだと言ってくださったのと同じように、わたしも兄さんのお余りになったお皮まで……ね、兄さん……?」
「ぷ。モジャモジャ好きとか、じょーたが気を使ってくれただけなのに勘違いしちゃって……♪ じょーたがほんとーに大好きなのは、デカ乳輪なのに……♪」
「は……はぁ?」
華乃は幸せそうな顔で僕の腕にギューっと抱きついて、
「ね、じょーた♪ デカい乳輪の方が母性を感じられて、自分の赤ちゃん任せたい気持ちになるって言ってくれたもんねー?」
言ってない。乳輪サイズで女性の魅力を判断することなんてないから気にするなと伝えただけだ。拡大解釈が過ぎる。
だが、言われてみれば確かに華乃の言う通りだった。拡大解釈っていうか、僕の気持ちを読み取って言語化してくれただけだった。乳輪がデカいほど母性を感じられて僕の赤ちゃん任せたい気持ちになっちゃう。あと陥没乳首の方が、僕と僕の赤ちゃん以外には授乳しないぞという強い意志を感じられて僕の赤ちゃん任せたくなっちゃう。
「そ、そうなんですか、兄さん」
「まぁ、大げさだけど、だいたいは」
「あれれー? もしかして紫子ちゃんはー、じょーたが自分の赤ちゃん任せられないような、母性皆無のチビミニ乳輪さんだったのかなー? うぷぷっ! 乳輪大きくする手術なんてあるのかなー? あはっ♪」
「…………いえ、別にわたしだってHカップなりに? そこそこ乳輪は大きいですからね。Hカップなりにというか、世のHカップの平均値よりはだいぶ大きいですね。デカ乳輪ではないですが乳輪は大きいです。デカ乳輪というのは品のないデカさのことを指しているわけですが、わたしの場合は上品さを保ちつつも大きく育った乳輪ですので。実りに実った柚子サイズですので。華乃さんのはドス黒いタイプのブラッドオレンジ」
「は? デコポンなんだけど?」
なるほど、素晴らしい情報だ。いっぱい我慢汁出ちゃった。ちなみに文はグレープフルーツ。
「なんか良い匂いするんだけど」「何か良い匂いがしますね」「何か良い匂いがするな」
デカ乳輪女子三人の目が一斉にバッと僕の股間の方に向けられる。こいつらの嗅覚どうなってんだ。本気汁ちょっとだけ甘出ししちゃったわ。
セフレ持ちなのにヤンデレと同居するハメに。セフレが有能なおかげで何とかなりそう アーブ・ナイガン(訳 能見杉太) @naigan
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