第9話 人気のない階段の踊り場でセフレに詰め寄る
「文。返答によっては許さないからな。僕だって本気で怒るぞ」
「こんな風に胸を揉まれながら凄まれてもな。校内でそんなに勃起させているのは問題だと思うぞ、丈太」
「確かに」
屋上へと続く階段の踊り場。薄暗く人気のないこの場所で、僕はポニーテールの小柄な女の子に詰め寄っていた。物理的にも精神的にも。左手はいわゆる壁ドン状態で、右手でブレザーの上からGカップを揉みしだいていた。めっちゃ勃起していた。
だが、仕方ないのだ。
今日も朝から大変だった。何と言っても、紫子の居候が始まって最初の朝なのだ。何が起こるかわからない。
小学生の紫子が春休みに泊まりに来ていたときと同様、目を覚ましたら隣にモチモチ美少女が寝ているパターンもあり得るし、小学生の紫子が夏休みに泊まりに来ていたとき同様、毎朝僕の上に乗って起こしに来てしまうパターンだってある。一時期は華乃とどちらが7時ぴったりに僕の上に乗って起こせるかで毎朝ビーチフラッグ状態になっていたっけ。でもあのころはまだ僕が小三だったからよかったのだ。今の僕では本当に毎朝ギンギンのフラッグが立ってしまっているわけで。あんなもんを美少女に握られようものなら僕が我慢できない。
というわけで熟睡できぬまま5時半に起床した僕がリビングに行くと、既に紫子がキッチンに立ち、朝食とお弁当の準備をしていた。気合いが入りすぎである。
そこまでやる必要なんてないと止めたが、「お嫁さんの予行練習ですっ」と言って引かないのが僕の従妹だ。申し訳ない気持ちもあるが、おかげで早朝ビーチフラッグ大会は開催されずに済みそうなのでよかった。僕のご飯作ってくれる美少女が渋滞している。まぁ全部食べればいっか。全部美味しすぎるし。
朝食後、紫子の目を盗んで僕はさっさと学校に向かった。普段は使わない自転車で走った。文から短いラインが来ていたからだ。場所だけを伝える数文字。いつも通り、念のためトーク履歴は削除し、そしてこの場所に来た僕は、一人ポツンと立ち尽くすセフレのムチムチ生足を見て昨日の立ちバックを思い出し、フル勃起してしまったのだった。
振り返ってみたら、うん。別に何も仕方なくないな。勃起したのは単に僕の性欲が異常なせいだった。あと文の肉付き具合が都合良すぎるせいだった。
「とりあえず私の方から確認だが。昨夜の電話で丈太が報告したかったことをまとめると――従妹の柚木紫子がこの高校に通うため、丈太の家に居候することになってしまった。しかもメンヘラを拗らせていて、昔以上に丈太への異常な執着を見せてきている。彼女が幼い頃から秘めている暴力性を鑑みても、このまま私との関係がバレたりすれば、地獄を見ることになるのは必至――ということで間違いないか」
「間違いないどころか、僕以上に僕の抱える不安を言語化できてるよ。あの一瞬でそこまで察してくれたの、もはや怖ぇーよ」
おかげでフル勃起が半勃起くらいにまで収まってくれた。
「まぁ、君達の文通を見せつけられ、代筆までしていた身だからな。君の従妹がこんな手段に打って出てくる可能性も、僅かながらあると思っていたんだ。とはいえ、まさか本当に、しかも事前予告なしで来るとは予想出来なかった。おそらく、『浮気』の痕跡を事前に隠滅させられることを、防ぐためだったんだろうな」
「ああ、うん。入学してからのこの一週間ちょいも身辺調査してたとか言ってた……」
「誤魔化せたんだよな、私達のことは」
「たぶん……」
華乃にバレぬよう、校内ではただのクラスメイトのフリしてたからな。それが紫子を欺くことにも繋がっていたわけだ。
だが、あのお淑やかな従妹は、華乃みたいにチョロくはない。ましてやこれからはうちに住むのだ。今までのような華乃バレ対策だけではあまりにも不十分。だって僕らのセックスは常に僕の家で行われてきたのだから……。
そう、そうなのだ。そこなのだ、僕たちにとって最も重要な点は。僕の身を守るためだけだったら、文との関係を絶てば何とかなる。だが、それじゃダメなのだ!
うん、僕もちゃんと言語化しよう、自分の気持ちを。言葉にするのが大事なんだ。
「文。僕が君に伝えたかったこと、つまりこの作戦会議の目的は、僕たちのセフレ関係をこれからも維持するためにはどうするべきかということだ。メンヘラ従妹が同棲していても、僕は絶対君と都合の良すぎる関係を続けるぞ! そのためにどうすればいいのか僕じゃわからないから君が考えてくれ!」
「ああ、もちろん。わざわざ言われなくても分かっている」
言語化必要なかった。
やっぱいちいち言葉にしなくても全部わかってくれるこの関係最高だわー。言葉なんていらない。都合が良すぎる。
「そのために私はわざわざ彼氏まで作ったのだからな」
「――おい」
自嘲気味に言う文。しかし、そんな軽口が、僕の頭に血を上らせる。
気づいたときには、文の腕をつかんで再度壁に押しつけ、至近距離から睨みつけていた。
「そうだ、その件も忘れてないからな、僕は。お前に彼氏がいるだなんて、あれは僕を救うための嘘だったんだよな?」
「当たり前だろう。私のような愛想のない女に彼氏なんて出来るわけがない」
「……本当だな?」
「本当だ」
「証明しろ。証明させろ」
「分かっている。今日も私の体を隅々まで調べてくれればいい。君以外の人間には傷一つ、汚れ一つ付けられていないことを、君の目と体で調べ上げてくれ」
「勃起止まらん」
「知っている。さっきからずっとお腹に当たっているからな。私の子宮を押し潰そうとしてきているからな」
頭に上っていた血が全部亀頭に回ってしまった。
「しかしな、丈太。実際、この彼氏設定はかなり使い勝手が良いと思うんだ。実は前々から温めていた作戦でな。白石の目を逸らすために。まぁ白石が想像以上にチョロかったから使わなかったのだが、メンヘラの同居人が出来てしまった今なら、必要になってくるだろう」
「……つまり?」
「私は彼氏を作ろうと思う」
「ふざけるな。ちゅーするぞ」
「ちゅーっ。……いや、だから設定上の話だ。あくまでもそういう噂を流すだけであって、実際に誰かに彼氏役を頼むようなことすらしないぞ? 君以外の男と関わるなんて私だって嫌だし、君との関係には一切の影響を与えない」
「そういう問題じゃない。設定だけでも無理。噂だけでも吐く。絶対やだ。お前は僕だけの都合の良い女なんだから僕を嫉妬させるなよ! 想像させるな! 泣いちゃうだろ!」
「受け入れてくれ。これも君の都合の良い女でいるために必要なことなんだ」
「やだ。絶対やだ。お前が一瞬でも僕以外の男のこと考えたり僕以外の男の名前出すだけで許せない」
「メンヘラじゃないか」
「確かに。でもやだ。僕のちんぽのことだけ考えて生きろ」
「しかし……うん。やはり、そこは我慢してくれ。合理的になろう」
「文!!」
「代わりに、その怒りや、やり切れない思い、鬱屈とした感情は、全て私とのセックスにぶつけてもらっていいから。私の体でめちゃくちゃに発散してくれればいい。乱暴にしてもらえると助かる」
「都合が良すぎる。都合が良すぎるけど、実はお前がされたいだけだろ、ド変態」
「バレたか」
そりゃそれだけ顔染めて内ももモジモジこすり合わせてればな。表情は崩そうとしないところが却ってエロい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます