第3話

女が桜賀紫電の顔を見て怪訝そうな表情をした。

金髪の女性だ、レッドカラーのパーカーを着込んでいる。

夏場の様に熱い砂漠だからか、彼女の恰好は水辺で燥ぐ様な、黒いビキニにホットパンツを着込んでいた。


「誰だ、てめぇ?」


自動拳銃を向けながら聞く。

桜賀紫電は手ぶらだが、臆する事無く彼女に言う。


「鉄屑屋だ、同業者だろ、お前」


同業者ならば、分かっている筈だと言う。

だが、その言葉を受けても彼女は不遜な態度を取る。

一歩近づくと、自動拳銃で桜賀紫電の足元を撃った。


「おぉっと、それ以上近づくなよ?」


満面の笑みを浮かべる。

鮫の様に鋭い牙が見えた。

機械神に自動拳銃を向けて主張する。


「これはなぁ、あたしたちンものなんだよ」


彼女は脅しが足りないと思ったのだろうか。

深く被った黒パーカーを外した。

金髪の頭頂部に、機械改造された猫耳型拡張デバイスが装着されていた。


「いや…正確には、このキャスパリーグさまのもんだ」


キャスパリーグ。

その名前を聞いて、少なからず桜賀紫電は反応した。


「(悪名しか轟かねぇ、悪辣猫キャスパリーグか)」


横領、掠奪、殺人。

鉄屑屋の中でも、先ず出会いたくない人物の一人だった。


「…鉄屑屋の鉄則があるだろうが」


苛立ちを隠しながら、鉄屑屋としての矜持を語る。


「先に撃破ヒットした奴の取り分だ」


それが暗黙の了解である筈だ。

だが、彼女にはそれが通用しないらしい。


「ああ?そんなもん、ここじゃ意味ねえだろうがバーカバーカ」


自動拳銃を再び桜賀紫電に向ける。


「いま、ここで、ミンチにしてやってもいいんだぜ?」


後ろに居るKGキル・ギアに目を向ける。

機体は同様のグレーカラーをしている。

その見た目は鳥類を模した様に頭部に嘴が付いている様な見た目だ。

〈イーグルTypeタイプGyグレイ〉であった。

軽量化されたボディ、速度重視の機体。

射撃時に安定した精密射撃を可能とする為に、腕部が通常KGよりも太く幅が大きく、翼を広げた鳥の様な形状をしている事からKG名称に鷲の名が付けられた。

二体のKGキル・ギアは、他の機械生命体が来ないか警戒していた。


「こっちはKGキル・ギアが二体いんだぞ?」


彼女の命令次第で、このまま桜賀紫電を殺害出来ると言っている。


「…脅してんのか?」


お道化た様子でキャスパリーグは言う。


「死にたくなけりゃ、脅しだけで済むぜ?」


桜賀紫電は溜息を吐く。

そもそも、彼は許す気は無かった。

トラックに向けて弾丸を打ち込んだ時点で、だ。

このキャスパリーグの後ろにどれ程の後ろ盾が居たとしても。

桜賀紫電には関係の無い話だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る