第2話

「…機械神、撃破」


トラックの走行を緩めながら、桜賀紫電は告げる。

荷台の上で射撃を完了した狙撃兵。


『やった、早く機死片回収しようよ』


ラヴィは上機嫌だった。

しかし、桜賀紫電は悩んでいる。


「後になって気が付いたんだがよ」


前置きに、ラヴィは狙撃兵の機体から運転席側へを視線を向ける。


「馬鹿にデケぇ機械神を、どうやって街まで持っていくつもりだ?」


と、桜賀紫電は言った。

解体する為の技術は持ち合わせている。

だが、解体する為の道具を持ち合わせて居なかった。


『…じゃあ、倒し損?』


「…せめてフラッグでも建てるか、誰が倒したか揉めない為によ」


機体には記録データが存在する。

他の鉄屑屋との権利主張の際に、記録データがあれば誰が撃破したか一目瞭然だ。


艶媚エンヴィ辺りに回収を頼むか」


『あの女、嫌いなんだけど』


贅沢言うな。

と、桜賀紫電が言った時。

ラヴィを乗せた機体が機械神の方に顔を向ける。


『…機械神の奥、他に来てる』


「なんだと?」


急いで双眼鏡を手にする桜賀紫電。

機械神…その通って来た道の方を見た。

二台のトラックだった。

恐らくはKGを乗せているのだろう。

トラックが停車すると、KGを展開。

改修用のKGであるらしく、数多くの分解パーツを装備している。

そして、そのまま機械神の機死片を回収し始めた。


「ハイエナが…降りろラヴィ、後方で支援しろ」


そう言って、桜賀紫電がトラックを発進。

機械神の元へと急いで向かった。


桜賀紫電が機械神の元へと到着した。

既に、二台のトラックからは、人が降りている。

機械神の状態を確認していた。


「クソ…俺達の獲物だってのに」


トラックから降りようとした時に発砲音が響いた。

トラックのフロントガラスに弾痕が刻まれている。


「あ!?」


銃火器を構えている別業者の姿。

機械換装を済ませている改造人間だ。

屈強な肉体をした男が二人、機関銃を所持している。

しかし、発砲はしていない。

その二人の間に挟まれている、恰幅の良い女性だ。

自動拳銃を横向きに構えていた。

恐らく、彼女が撃ったのだろう。


「この…ッ」


既に、桜賀紫電は話し合いをする事は出来ないと悟った。

インカムから、ラヴィの声が聞こえて来る。


『撃つ?』


「待て…俺が合図をしたら、だ」


機械神の周囲には、回収用のKG以外にも、戦闘用のKGも二体居た。

護衛として動いている様子だが、桜賀紫電には大して注目していなかった。

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