改造人体ヒロインたちを粗末に扱う元最強のロボット操縦士は荒廃した世界で機械生命体を壊して売って生活する、現代ファンタジー
三流木青二斎無一門
第1話
じわじわと。
肉体から滝の様に汗が滴る。
雲一つ無い空。
赤く滾る太陽が燃える。
天面直下の砂漠の地。
無風の地には安息は無い。
それでも。
砂漠の上で、トラックは走る。
大型トラックには二名が乗車している。
一人は運転手。
男性で大柄だ。
燦爛と輝く太陽を遮る為に帽子を被る。
首には、タオルが巻かれていた。
もう片方は、セーラー服を着た女性だ。
銀色の髪に、所々ピンクのメッシュが入っている。
片手には水筒。
もう片方には双眼鏡を所持している。
窓を開けて、砂漠の地を覗いていた。
「あつい」
少女が声を漏らす。
その言葉に、男は舌打ちをした。
「言うな、ラヴィッ」
彼も熱さを我慢していた。
なけなしの金で購入したトラックだ。
当然、新品では無く中古車だ。
外れを引いたと、男も内心思っている事だった。
「クーラー効かないなんて、外れトラックにも程があるでしょ」
彼の顔に視線を向ける。
「…ねーぇ、オーガ、なんでこんなの選んだの?」
彼女は素足をあげる。
助手席の空調部分に向けて踵で蹴った。
素行の悪い行動だった。
それを見ても…
「途中までは動いてただろ…クソッ」
桜賀紫電も同じ様にトラックを殴った。
それが原因かは分からないが、途端にトラックが減速を始める。
「あ!?」
「あーあ…壊した」
ラヴィはそう言って水筒に口を付けた。
戦禍の中でも生き残ったトラックだ。
そう簡単に、生身の人間の一撃で壊れる筈が無い。
メーターを確認する桜賀紫電。
何故減速しているのか原因を発見した。
「あぁ…クソ、ガソリン切れだ」
ガソリン容量が底をついていた。
「これだから無免許は…」
「じゃあテメェが運転しろパイロットッ」
彼女の言葉にイラつきながらエンジンを切る。
帽子を取って汗を拭うと、深く溜息を吐いた。
「燃料は?」
「積んでるっ…クソ、イラつく、休憩だ、休憩ッ!!」
その言葉と共に彼は帽子を深く被った。
「イラついてるのならさ」
運転席へ移動する。
桜賀紫電の上に跨る。
汗で濡れたセーラー服。
「いっその事、汗だくでさ」
布地が透けて肉体の輪郭が見えた。
胸部には、つんと尖った胸が浮き彫りになっている。
彼女は、下着を着けてはいなかった。
「やめろ、暑苦しい」
離そうと彼女の額を掴んで押し込んだ。
しかし、それでも彼女は行動を止めようとはしなかった。
「いいじゃん、きっと気持ちイイよ?」
彼の手を掴む。
汗に濡れた手だ。
その手を自らの口に近付けて指を舐め出した。
「やめろ」
「いいひぇよ?」
顔を赤くさせているラヴィ。
しかし、彼が静止したのは別の理由だった。
「駆動音…影が見える」
その言葉と共に、性的興奮を抱いていた彼女は行動を止める。
同時に、助手席に置いていた双眼鏡を掴んで窓から顔を出した。
「何処?」
「丁度お前が見てる方角だ」
砂嵐を巻き上げながらトラックの方へと近付く影。
生物…である事は間違いない。
だが、人間や動物の様な炭素生物では無い。
肉体が機械で構築された…地球外からの侵略者だった。
機械生命体。
星々の物資を奪い、同族を増やしていく侵略する生物。
自らの肉体と同じ材質である金属を糧に増殖していく。
人類にとって金属は生活に必要なもの。
金属を掠奪する機械生命体との戦争が始まった。
この戦争により数多くの犠牲者と土地と文明を喪った。
だが人類は機械生命体を倒し、撤退させる事に成功した。
それでも、今でも機械生命体は地球に存在する。
地球の地層に製造された機械生命体の工場が存在し。
それを使い、機械生命体が製造されているのが、現在の状況だった。
「…機械神?」
双眼鏡で影を見ていたラヴィはそう言った。
「貸せ」
ラヴィの双眼鏡を奪う桜賀紫電。
此方へと向かって来る影を観測する。
三十メートル級の二足歩行型〈機械神〉。
装甲の外殻には鉄骨の様な避雷針が至る箇所に装備されている。
鋭利に尖った先端からは、紫色の電力が放出されていた。
鋼鉄の電気生物を認識し、双眼鏡から目を離す。
「放電してるな」
「二足歩行型なのに四つん這いになってる」
巨腕を使い肉体を引き摺る様に動いている。
損傷が激しく、自制が効かないのか電力を漏らしていた。
それを見た桜賀紫電は想定した事を告げる。
「恐らくだが…脚部を破壊されているんだろう」
脚が無ければ手で動かせば良い。
至極当然な行動だろう。
その事は、ラヴィも理解している。
だからこそ、彼女は微笑んだ。
「じゃあ、チャンスじゃない?」
「…チャンスって、馬鹿を言うな、戻るぞ?」
桜賀紫電は行動を起こす気にはならなかった。
ただでさえガソリンが切れたトラックに燃料を投入する手間がある。
今はまだ余裕があるが、このまま機械神が追い掛けてくる可能性がある。
トラックで全力で逃げても、逃げ切れるかどうかの瀬戸際だった。
しかし、彼は撤退の意思を示しているのに対して。
「なんで?ここで
ラヴィは、機械神の討伐する気だった。
彼女の言葉に、思わず日柴鬼銀は叫んでしまう。
「何言ってんだ、お前は」
彼女はトラックの奥に手を伸ばす。
後部座席にある位置に、扉があった。
このトラックは、通常の大型トラックでは無い。
機械を運ぶ運送車両である。
日柴鬼銀の窘めに、論理的に彼女は言う。
「装甲が抉られてる、他の『
言われて、桜賀紫電は双眼鏡で確認しようとした。
だが、止めた。
所詮、生身である桜賀紫電と、機械生命体の母胎で作られた人造体にして、
「中枢核が剥き出し、狙えば撃破出来る」
彼女はセーラー服とミニスカートを脱ぐ。
裸体となった彼女の背中には、鉛色の皮膚が見えた。
それは機械改造による賜物。
脊髄神経と機体を接続する為に必要なものだった。
首と後頭部の間に穴が一つ。
肩甲骨の近くに穴が横に二つ。
脊柱腰椎に穴が三つ。
これが、機体と接続するのに必要な挿入口だった。
「そしたら、
機械生命体の部品は金になる。
種類によって値段は違うが。
機械神となれば、それなりの金額になるだろう。
だから、ラヴィは機械神を欲した。
「
機械神の機死片を売却し、残った機死片で、新しいKGの製造を求める。
桜賀紫電は拳を口に沿えて考える。
もしも成功すれば…確かに、かなりの金額になるだろう。
「だから言ってよ、
彼女に言われて彼は渋々頷いた。
「…距離からして三発は行ける、だがな」
目測。
限界の際を攻める。
「お前の
機械生命体を人間が搭載出来る様に改造された機体。
戦闘破壊兵機=
それを省略して
彼女のKGは、遠距離に適した量産型だった。
だから、接近してくる機械神との近距離での戦闘は避けたかった。
「三発以内で仕留めろ」
指を三つ立てる桜賀紫電。
その指を見て、彼女は鼻で笑う。
「それ冗談?一発で十分過ぎる」
そう言って、彼女はトラックの荷台へと移っていく。
桜賀紫電は、早急にトラックから降りた。
積み込んだポリタンクでガソリンを注入する。
戦闘の準備を始めていく。
ラヴィはトラックの荷台に積まれたKGに乗り込んだ。
別電源で別離されているので、トラックが稼働していなくてもKGには乗り込む事が出来る。
ハッチを開けて彼女は乗り込むと、操縦席へ搭乗した。
「ふぅ…痛くしないでね」
そう言いながら、ラヴィは操縦席の背凭れに体を預ける。
「狙撃型KG、起動」
その言葉と共にKGの節電状態が稼働。
体重を預けた背凭れから、
「んあっ」
特別痛覚と言うものは無い。
声が漏れるのは、端子挿入部位が金属由来の冷たさで驚く事が稀にあるからだ。
しかし、痛覚は無いが…肉体に異物が挿入されるのは、中々に嫌悪を感じる事だった。
頭の中でノイズが疾走した。
最初に視覚、味覚、嗅覚が消えていく。
次に聴覚を喪い、視覚が復活。
最後に触覚が無くなっていき、聴覚が蘇ると、彼女の肉体はKGへと意識が移り込んだ。
KGを操作する事が出来る
『ラヴィ、聞こえるか?』
脳内に響く声。
トラックにガソリンを入れた事で電気系統が復活。
備え付けのインカムからKGと同調しているラヴィに話し掛ける。
『聞こえてるよ、オーガ』
彼女はそう告げると、脳内に「よし」、の一声。
『ドアを開ける、十分に狙えよ』
その言葉と共に。
暗いトラックの荷台の天井が観音開きで開かれる。
『狙撃型KG、駆動』
ラヴィが発言。
そして、トラックの天井から出て来るKG。
量産型機械兵・『
銃火器を搭載している機械兵を改造した
機械兵専用狙撃銃『遠射砲』を搭載している。
長距離に適した射撃を得意とする。
銃口の長い銃火器を構える狙撃型KG。
脳内に響き渡る桜賀紫電の声が話しかけて来る。
『お前、さっき一発で十分って言ったな?』
『うん、言ったけど?』
脳内で話し出す二人。
『弾代もバカにならねぇからな、マジで当てろよ?』
軽口を言う桜賀紫電。
当然、その発言に対して軽口を叩こうとした時。
此方へと接近してくる、機械神を視認する。
狙撃型KGの能力では、往来の『
その際に、機械神の行動を確認したのだろう。
一瞬、ラヴィの息が止まった。
そして、我に返る様に、叫び出した。
『オーガ、トラック、発進してッ』
そう言われて、桜賀紫電は聞き返そうとした。
『機械神、攻撃準備してんの!!』
急かす様に言われる。
『攻撃準備だ!?くそッ』
ラヴィの視界に映る機械神。
体内に蓄積された電力。
外殻から生える東京タワーやエッフェル塔の様な刺々しい鉄骨から電気の束が跳ねて散っている。
その中でも特に細くて長い鉄骨を二枚挟みにした様な銃器が展開されていた。
『あれ、え、きゃはっ!』
機械神の銃器を見て興奮を隠せないラヴィ。
此方を狙われていると言う肝を冷やす状況に笑っていられる状態では無い桜賀紫電はトラックを急発進させながら彼女に聞く。
『なんだッ!何笑ってやがる!!』
叫ぶ彼を逆撫でする様に興奮した声で口にする。
『だって、電力のエネルギーをそのまま飛ばしてるッ!めっずらしい!!』
『あ?!エネルギー兵器!?』
紫色の雷が銃器の間に収束されていく。
トラックを発進させ、少しでも標的になるのを避けようとしている。
桜賀紫電はインカムでラヴィに射撃命令を送る。
『さっき、言ったのは忘れろ!!あのエネルギー兵器、撃って破壊出来るだろ!!』
彼女の腕ならば、走行中でも遠距離の敵を撃破出来る。
だから、エネルギー兵器に向けて撃てと言うが。
『出来るけど…だめ、あれ欲しいっ』
彼女は拒否した。
『はあ!?』
そして、ラヴィは遠射砲を構えた。
『壊したら、使えないでしょ!』
エネルギー兵器の充電が行われている隙を狙い、精密射撃を行う。
KGが引き金を引き、弾丸が射出されると、遅れて発砲音が響き渡る。
機械神の背負うエネルギー兵器。
それを固定しているのは二つの腕だ。
その片方の腕を狙い、装甲の薄い関節部分に直撃。
弾丸は貫通し、機械神の姿勢が崩れる。
後になってエネルギー兵器が射出された。
狙いは大きくズレてしまい、砂漠の砂に直撃。
砂はドロドロになって溶けていた。
『すっご…絶対に欲しい、オーガ、私の専用機、絶対あれ取り付けて!!』
『分かった、分かったからさっさと壊れ!!』
ようやく、桜賀紫電の言葉に頷いたラヴィ。
遠射砲を改めて機械神の方に向けると、引き金を引いた。
発砲された弾丸、銃火器は反動により上空へと仰け反る。
高速で回転しながら空を裂く弾丸が、破壊された装甲の隙間に着弾。
如何に装甲が破壊されていると言っても機械神が四つん這いになった状態だ。
この状態では胸部にある中枢核までは被弾しない。
しかし、首と肩の装甲が剥がれており、首筋を狙って打ち込み機械神の骨格の隙間を掻い潜り多数の機体制御用の機械筋肉帯を破壊しながら中枢核を撃ち抜いた。
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