第四話 夕暮れに揺れる心
夕暮れの山道。風が強く吹き、木々の葉がさわさわと揺れる音があたりを包んでいた。陽が沈みかける空は淡いオレンジ色に染まり、
「なんだか、今日はいつもより風が冷たいわね」
「ああ、今日は風も強いし、冷たく感じるな」
彼は一歩前に出て、自然と
(昔はこんなに気にしてくれなかったのに……)
「いいのよ、これくらい。私だってもう子供じゃないんだから」
わざと元気な声を出し、彼女は
「子供じゃないかもしれないけど、無理はするな。俺が守るって、お前のお父さんとお母さんに約束したんだからな」
(私が守られる側だなんて……こんな状況、なんか悔しい)
「随分と偉そうになったわね。生意気よ」
彼は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに小さく笑って返す。
「生意気?......それは
「何よ、それ。私が生意気だって言いたいの?」
「おいおい、自覚がなかったのか?」
「ほんと、落ち着いたわね」
二人の言い合いに、ふと幼少の頃の記憶が蘇る。
「落ち着いたように見える?それならよかった。――だけど俺は、ずっとお前のことを考えてる
......最近、無理はしてないか?」
彼の真剣な口調に、
「ま、まあ、それはありがたいけど。大丈夫よ……貴方こそ、少しは私を頼ってくれてもいいのよ」
(私よりも、
二人は無言のまま歩き続けた。
――頼もしいと感じるか、寂しいと感じるか、はたまた嫉妬か......。
やがて、
「
その言葉に彼女は驚き、言葉を失った。彼がそんな風に自分を見ていたとは気づいていなかった。
「……何もないわよ。ただ、少し考え事をしてただけ」
――本当は、貴方を心配して声をかけたはずなのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます