タダより高いものはない。もし1000円なら?~~藍上視点~~

※前回の「タダより高いものはない。もし1000円なら?」から読むとより楽しめます。


 ある女には好きな人がいた。恋をしていた。しかしなかなか想いを伝える機会がなかった。


 しかし、想い人からのメッセージが送られてきた。聞くところによると、どうも金欠で月末まで耐えきれないらしい。こんな千載一遇のチャンスを逃す手はない。時は来た。家に招待し、彼が来るのを待つ。


『』の枠・・・主人公、一人称が私、藍上 志織(アイガミ シオリ)

「」の枠・・・想い人、一人称が俺、織成 千鶴(オリナシ チヅル)


『はぁ~・・・』


 私、藍上志織には悩みがあった。想い人、織成千鶴がなかなか振り向いてくれないのだ。これでも、全くこちらからアプローチしなかったという訳ではない。例えば、そこそこ際どい水着を着てみても恥ずかしがる素振りすらも見せず、身体を押し当ててみたら指摘されることも無く無言で避けられ、彼の家に居る時に酔って寝たフリをしてみてもベッドに寝かせられ……それらにまるで効果はない。

 半年前に奮発して買った家も、彼の家に行った時に配置を覚えて置いた家具も、今となっては無用の長物。今日も今日とて彼を想いながら1人寂しく……

『オナニーでもするかぁ・・・』

 自慰行為に耽けるのだった。


 私は基本掃除がめんどくさくないように風呂で済ませるのだが、面倒くさくてベッドでしてしまった……まあいいか、二人用で無駄に広いことだし。

 家用のなんともない服を脱ぎ、下着姿になる。脱いだものはそのままに、早速下着越しに豆を擦るように弄り始める。

 思わず声、というか息が漏れる。といっても別に色っぽいものではなく、ただ酸素を補給するためだけの呼吸。刺激が足りず、胸にも手を伸ばす。呼吸が加速し、手の動きも速まる。その繰り返し。私は絶頂に至った。

『ハー、ハー、ああ・・・』

 多少の高揚感、そして虚無感に包まれる。

 何してんだろ、私。

 明日から休日なのに、隣には誰も居ないで、ただオナニーしてるだけ。無駄に広い家の無駄に広いベッドで無駄な行為をする。

 ……そんな思いになってもまだ、性欲は留まるところを知らない。……道具を使うべきだ。

 そういった道具の入った引き出しから、男性器の形をしたものを取り出す。俗に言うディルドというやつだ。

 せっかく未経験のまま今まで来たのだから、処女は彼のために取っておくべきだったかもしれないが、日に日に増大する性欲を前にはそんな誓いは意味をなさなかった。

 やっぱりそういうことしてない子の方がいいのかな……などと思ったこともあったが、もはや半分諦め……いや、諦め切れはしていない。

 ともかく、この熱を一刻も早く収めたい一心でショーツを脱ぎ、せめて床は汚さずベッドの上だけで済むようベッドの上に欲望の塊を置く。幸いもう股の間は湿っており、特段潤滑剤が必要そうでは無かった。

 何度目かは忘れてしまったが、自分の中に逸物を収め始める。

『んっ・・・はあ、はあ、』

 たとえ何度目でも、一度目のように身体は強ばってしまう。ゆっくりと挿入し、一番奥まで来たところで一息つく。

『はぁぁぁぁ・・・』

 我ながらだらしない声だとはわかっているが、漏れてしまうものは仕方ない。圧迫感をしみじみと感じながら、膣の手前にある、所謂Gスポットに擦りあてるように上下を開始する。

『千鶴ぅ・・・』

 自分でも思いもよらない声が漏れる。そして理解する。私には彼が必要なのだと。そして、こんなことはいくらしても満たされないと。

『千鶴ッ♡千鶴ッ♡』

 名前を呼ぶ声が止まらない。足りない。クリトリスに手を伸ばし、弄り倒す。足りない。胸にも手を出し、揉みくちゃにする。足りない。

 足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。足りないのに……

『千鶴ッッッッッ♡♡♡♡♡』プッシャアアアア

心は物足りないまま、身体が達してしまった。心地よい脱力感に身が包まれていく。どうせ明日も休日だ。今日はこのまま寝てしまおう……



 目が覚める。うわ……酷い状況だ……そういえば、散らかしっぱなしで寝ていたな……

 今は何時だろうか? どうせ関係もないが、と思いながらおもむろにスマホを手に取り、時刻を確認する。10時か、どうせ関係もないし、もう一眠りしてしまおうか、と思った瞬間、

 一つのメッセージが私に向けて送信されたと通知される。

「ごめん、ちょっとお金ないから貸してほしいんだけど……」

 千鶴、だった。

 寝ぼけ眼はすぐに全開になり、脳の全細胞が活動を始める。何と返せばいい?何と返せば彼を手に入れられる?

 ひとまず様子を見るため、金額を確認する。

「自由に使えるのは、1000円」

 これは行ける。そう確信し、たった今思いついた妙案を送信する。

『じゃあ、ウチ来たらその1000円で光熱費、水道代、何より食費も負担してあげるよ?』

 頼む。食いついてくれ。

「いや、俺がどんくらい食うかって知ってるよね? 1000円って……」

 根拠や金銭のことは後で考えればいい、今は勢いが重要だ。気にしなくていいという旨を伝え、確認作業を始める。

『大丈夫だから。ただ、ご飯については私が作ったやつになっちゃうけど……』

「それは大丈夫だけど……昼も作るってなると朝もお弁当作りが大変にならない?」

 大丈夫というなら、もうNOを言わせる隙を与えてはいけない。

『いやいや、そんなの気にする仲じゃないじゃん。まあ一週間だけだしさ、来週必要な荷物まとめたら家きてよ。住所は______』

 もうあとは来ることを祈るだけ……と思った瞬間、自身の顔が白くなるのを感じた。

 私は全裸で、この部屋は汚れており、他の部屋も埃まみれ。

 彼の家の位置は覚えている。ここには1時間も経たずに着くだろう。

 思った時には、身体は先に動いていた。

 ベッドシーツを替え、ディルドを片付け、シャワーを浴びる。最低限の身だしなみを整え、彼のための部屋の埃を払い、まず間違いなく見られるであろう玄関などを最低限掃除する。あとは子供部屋と、脱衣所と、浴室と、「ピーンポーン」

 終わりの鐘がその時を告げる。だがもうここまで来たら祈るしかない。急いでドアを開け、門の前に彼を迎えに行く。

 確かに、会いたかった、会うべき人がそこに居た。

『いやーよく来たね、今開けるから』

 そこからは言うまでもない。頭が真っ白になりそうになりながら、一週間、いや、一生住むことになるかもしれない家を案内していく。

 子供部屋の事は誤魔化した。浴室が使いっぱなしなのはバレていないはず。もう細かいミスのことは忘れるしかない。

 勝負に出るしかない。

『で、ここがダイニングとキッチン。紹介はこんなところかな、というか、今日ご飯食べたの?』

「いや、まだだけど……」

『そうだよね、お金ないんだもんね……じゃあさ、今から作ってあげるよ。』

 胃袋を確実につかみ、そして……この薬で、全てを掴む。

 彼が自室へ戻った間に、料理を開始する。とりあえず今ある食材でできそうな料理を確認し、作り始める。こんなに大量に同時の料理を作ったことは無いが……己の腕と、広いキッチンを信じる。


 何とか作り終えた。と、同時に、彼もこちらへ来たようだ。……彼はどうやら湯上がりのようだ。拭き残しか汗か、首周りの水滴にそそられる。

 だが、もう少しの辛抱だ。常備している黒烏龍茶に粉薬や、あるいは砕いた錠剤を入れ、混ぜ始める。睡眠薬、精力剤、筋弛緩剤……拙い知識で入れ、混ぜ始める。薬を混ぜたら危険だとか、効能が競合するだとか、そんなことを考える余裕はなかった。

 あとは彼が食べるのを見守る。

 邪な感情ばかりを抱いていたが、彼の笑顔はやはり好ましい。いくらでも見ていられる。だがそれだけではもう収まらない。塩気の多い料理を作ったのだ。薬ごと茶を____飲んでくれた。思わず顔がニヤけてしまう。彼はもう、きっと私のモノ。

「ごちそうさまでした!」

 皿を片付けつつ、いつでも倒れた彼のことをベッドまで連れていけるようにしておく。

 皿の二枚目を片付けようかという手前、彼がふらつき、倒れ込む。すかさず意識を確認する。

『・・・!大丈夫!?私の声聞こえる?聞こえて、ない?』

 返事はない。

 そっか……♡聞こえて、ないんだ……♡

 千鶴が目覚める前に、ベッドルームに彼を運ぶ。多少重いが、これなら私でも運べそうだ。なにより、今はそんなことを言っている場合ではない。

 彼をベッドの上に置き、しばらく眠っていた拘束具を取り出す。ベッドの足にかけ、そして彼の手足にかける。ともかくこれで一安心。時々彼をカメラで確認しながら、きっとある明日のためにも、皿の片付けと買い出しに行っておく。


 買い出しから帰ると辺りはすっかり暗くなり、もう夜になっていた。

 買ってきたものを冷蔵庫にしまい、スマホからカメラを見る。すると丁度起きたところのようで、キョロキョロと辺りを見回している。可愛いなあ……♡

 足取りは軽く彼の元へ向かう。ドアを開け、部屋に入る。

「なあ、これどういう……」

彼が突然口を開く。

『いやあ、本当に待った甲斐があったよ。にしても警戒してくれないで助かったな。本当に何も無しに1000円で全部負担してあげるわけないじゃん。』

 たまらない。彼が本当に私のモノになる。それだけで脳が多幸感に包まれ、身体が震える。

 彼のズボンを脱がし、薬によって肥大化した彼のモノを顕にする。熱い。硬い。こんな物がこの後私の中に…と思ったが、千鶴がチラチラと私の胸を見てくる。この後散々満足させて貰うんだし、ちょっとサービスしてあげようかな?

『うーん、すぐにそういう事してあげてもいいんだけど、まず君が気になってるのはこっちかなー?』

 服を脱ぎ、胸を見せる。彼の視線は釘付けになり、目を輝かせて息を荒らげている。やはり興味津々なようだ。

 彼の肉棒を挟んであげると、彼の顔が歪む。嗚呼、堪らない。

 乳を上下させると、その度に汁が溢れてくる。そろそろ限界かな?と思い離そうとすると……

 ビュルルルルッ!

 彼のタマは暴発してしまったようだ。

 許せない。これでは私の中に出す分が減ってしまう。彼を睨む。

『はあ、なんでもう出しちゃうわけ? 自分だけ勝手に気持ちよくなっちゃうなんてお婿さん失格じゃないかな?』

 彼は何か言いたそうにしていたが、言わせない。言わせるもんか。矢継ぎ早にまくしたて、

 パチュン!

 恋人繋ぎ、ディープキス、そして、挿入。三つの点で深く繋がる。

 なんて気持ちいいのだろう。単なる刺激だけではなく、相手が抵抗できない状況で貪る征服感、ずっと一緒になりたかった相手と繋がれているという充足感、見つめ合える満足感等で脳は快感まみれになっていた。

 彼の鼻息も荒く、下半身の接合部から脈を打つのが伝わってくる。

 ・・・想いを伝えるなら、今かもしれない。

『……その、さ。実はこの家、投資で一発当てて買ったんだよね。しかもさ、それでもまだお金余ってるんだ。でももちろん私も仕事は続けてるし、ちょっとは余裕のある生活させてあげられると思うんだ。

だから……その……君は働かないでいいから、ずっと家にいて欲しいんだけど……ダメかな?』

 唐突な話だった。でも悪い話じゃない。きっと乗ってくれるはずだ。

「嫌だ。」

頭が真っ白になる。どうして?なぜ?だって「もちろん」

「もちろん、志織に頼りっぱなしのヒモになるなんて嫌だよ。一緒にここで暮らすのはもちろんいいんだけど、でも食も住もお世話になりっぱなしじゃ申し訳ないからさ、自分の食費くらいは稼がせてほしいんだ。」

 よかった。本当に良かった。これでもう一緒になれる。

『うん!』

「……その代わり、一旦ゴムはして欲しいなって……」

 今更逃がすわけが無い。

『駄ー目♡』パチュン

「ッッッッッッッッ♡♡♡」

 何度観ても彼の表情は飽きない。

「ごめッ、止めてッ、赤ちゃんッ、出来ちゃうッ、からぁ」

 無駄なのに、なぜ懇願するのだろう?可愛い♡

「もう無理、出る」

『出せ♡出せ♡出せ♡出せ♡』

 あーあ、出しちゃった♡もう責任取るしかないね♡

「なんで♡まだ♡うごいてッ♡」

『だってまだ私イってないし♡あと♡一晩中これやるから♡』

「ひとっ……♡むり♡しんじゃう♡」

『大丈夫♡たっぷり栄養取ったもんね♡』

「だめっ♡またイク♡」

『あっ♡一緒にイこ♡』

『イクッ♡』「イクッ♡」プシャアアビュルルル

 私たちは同時に絶頂した。そして千鶴は気絶してしまったようだが、まだ止めない。

 それから、私は一晩中、今までの鬱憤を晴らすように彼を犯し続けた。彼のうわ言のような喘ぎを聞きながら、何度も、何度も腰を打ち付ける。

 ひとしきり欲が収まった頃には、もう朝になっていた。


 朝8時、千鶴の拘束を解き、シャワーを浴びる。さすがに私も身体が疲れている。とはいえ、せっかく同棲相手が出来たのだ。張り切って料理の準備を開始する。

 パンの焼ける匂い、肉汁の弾ける音、今日の朝食はシンプルに洋風のブレックファストにしておいた。サラダを盛り付け、スクランブルエッグを皿の上に乗せ、さあ食べ始められるぞという時に、ちょうど千鶴も一通りの支度を終えたようだ。つくづくタイミングのいいことである。

 「おはよう、志織」

 『おはよう、千鶴』

 朝起きて、名前を呼び合えるだけで、幸せが増えていることを実感する。

 もうあとは机に並べるだけなので彼を座らせ、料理を運ぶ。

『いただきます。』「いただきます。」

『いやあ、一緒にこうして朝を迎えて、一緒にご飯を食べられる日が来るとは思ってもなかったよ。』

 本当に。彼を家で飼う……とまではいかなかったが、一緒に暮らしてもらえることになって本当に良かったと思う。

「しかも、肉体関係まで持ってね……」

 ……彼に意識してもらえていると思うと、なかなかクるものがある。また今日もいっばいしようね、なんて言ってみる。

「い、いや、そういうのはもうしばらくいいかな〜」

『えー? まだ私行けるけどなー?』

 さすがに冗談だが、彼の反応は見ていて飽きない。

 ともかく、こうして私は無事に彼を手に入れることができた。たまにいじめすぎてしまうこともあるが、大抵はお互い愛し合いながら暮らせている。

 もちろん、

「だめっ♡おかしくなるっ♡」

『なれ♡おかしくなれ♡』

夜は私の方が上である。


藍上 志織(24):週3回ほど千鶴のことを食べている。同棲するための家を用意してから半年ほど待ったが家に誘うチャンスや勇気がなく諦めていたが、今回ようやく成功した。彼がよく食べると知ってからは料理を作るようになり、今では多くの料理を作ることができるようになった。

織成 千鶴(23):週3回ほど志織に食べられている。過去に一回だけ彼女の住んでいるアパートにお邪魔したことがあったが、その時は準備不足もあり難を逃れている。料理はできなくはないが、量が食べられればいいというパワー系の料理なので、たまに志織が忙しい時に作っては栄養バランスを考えろと叱られている。


【報告枠】

このシリーズ以外にも一話完結の話も書くつもりなので、お楽しみに。

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タダより高いものはない。 なまくら刃 @namakurayaiba239

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