第47話 鋼の男との戦い

獅子王アーサーは、鋼の男と対峙しながら、その圧倒的な硬さに対抗するための方法を思索し続けていた。

彼の全身はまるで炎のように赤く輝き、炎をまとわせた拳をふるったり、白い『気』を纏わせた拳を様々な角度から繰り出したり探り探り様々な方法で攻撃を試みていた。

しかし、鋼の男の体は非常に頑丈で、獅子王の攻撃を難なく受け止めていた。


巨大な拳が轟音とともに振り下ろされるたびに、獅子王アーサーは一瞬の遅れもなくそれを躱すか受け流し、足取りを変えて次の一手を考えた。

鋼の男は鈍重ながらも一撃が強力で、一度でも受ければ致命的だった。

そのため、アーサーは一瞬の油断も許されなかった。


「お前の攻撃は何も通じない!」鋼の男は自信に満ちた笑みを浮かべながら、再び拳を振りかざした。


獅子王アーサーはその一撃を何とか躱しつつ、彼の体を注意深く観察していた。

鋼の男の動きは鈍いが、油断すれば握りつぶされてしまう。

彼は絶え間なく動く中で、小さな違和感に目を向けた。


ふと、彼の目に一箇所のへこみが映った。

それは、先ほど炎を纏わせた攻撃で何度か打ち込んだ場所だった。

ほんのわずかな変化だったが、獅子王アーサーにはそれが希望の光に見えた。「この硬き壁を崩すには、今考えつくのはこれしかない…!」


決意を固めたアーサーは、再び鋼の男との戦いに意識を集中させた。

彼の黄金色に輝く瞳が鋭く光を放ち、彼の動きは一層機敏になった。

獅子王は鋼の男の攻撃を巧みにかわしながら、ひたすらにそのへこんだ部分を狙い、一撃、一撃と力を込めた攻撃を加えていった。


鋼の男は最初こそその攻撃を笑い飛ばしていたが、次第にその部分へ蓄積されるダメージに気付き始めた。

彼の表情が僅かに変わる。獅子王はその微細な変化を見逃さず、さらに攻撃の速度と強さを増していった。


時計の針が刻々と進む中、獅子王の執拗な攻撃は次第に成果を見せ始めた。

へこんだ部分は徐々に大きくなり、鋼の男の体の防御がついに揺らぎ始めたのだ。

一筋の汗が獅子王の顔を伝いながらも、彼は止まることなく集中攻撃を続けた。




激しい戦闘の中、森は獅子王と鋼の男のみが織り成す舞台となり、周囲の自然がその激闘を静かに見守っていた。


獅子王は炎を纏わせた拳を振るい、鋼の男の拳が空を切る音が鳴り響くたびに、獅子王はすれすれの動きで攻撃をかわす。

そして狙うは一点のみ。


「ぐっ…この野郎!」鋼の男はついにその頑強な表情にひびを入れ始めた。

彼の表情は徐々に汗に覆われ、獅子王の攻撃が彼に確実にダメージを与えていることを示していた。


そして、その瞬間が訪れた。アーサーの全力を込めた拳が鋼の男のへこんだ部分に見事に命中した。

一瞬の静寂が森に訪れ、次いで響き渡るのは金属の破砕音。ついに鋼の男の体表が砕け散り、防御は崩壊した。


これが最後のチャンスだと悟った獅子王は、全身のエネルギーを一つの拳に集中し、砕けた部分に向かって渾身の一撃を放った。その一撃は鋼の男にとどめを刺し、彼の巨体を揺らしながら崩れさせた。


「やった!」アーサーは声に出さずとも、その達成感を全身で感じ取った。

鋼の男は白目をむき、気絶してゆっくりと地面に倒れた。




勝利の余韻に浸りつつ、獅子王はゆっくりと背後にいる気の弱い男の方へ振り返ろうとした。

しかし、その瞬間、背中に鋭い痛みが走り、それが体全体を駆け巡ると同時に、力が抜けてその場に倒れてしまった。


手足がピリピリとしびれる。

獅子王の意識はぼんやりとしながらも、かろうじて顔を上げて、ひ弱な男の安否を確認しようとその方に目を向けた。


―――その男はにやにやとした表情で獅子王アーサーを見下ろしていた。

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