第43話 スタートダッシュ

獅子王アーサーは、マイクの試合開始宣言とともに力強く走り出した。

森の中を駆け抜けながら、彼は獲物を探した。

冷たい木陰が心地よい。彼の目は凝り固まるように集中し、どこに隠れているかもしれないロボットたちを注意深く索敵した。


すると、近くの茂みがざわめき、青いロボットが獅子王の背後から飛び出してきた獅子王アーサーは瞬時に反応する。「ハッ!」と体を翻し、足元に集中させた『気』を炸裂させ、鮮やかに青いロボットを蹴り返した。


吹き飛ばされた青いロボットは、空中でぐるりと体勢を整え、その軽快さを誇示するように地面に着地した。

獅子王アーサーの眼前に迫ったロボットは、まるで鋭敏な獣のように彼を狙っていた。


彼は一瞬安堵の息を漏らしたが、周囲を見渡して、彼を包囲するようにさらに4体の青いロボットが静かに動くのを目にした。


ロボットたちは一斉に獅子王アーサーに襲いかかってきた。


「来い!」彼の声は低くしぶりながらも力強く空に響いた。


ロボットの一体が先駆けて獅子王に突進し、前足を振り回す。

獅子王は一歩後退して体を低く構え、瞬間的に青いロボットの側面に入り込み、その機敏な動きでロボットの脚を掴んだ。

「行くぞ!」全身に力を込め、ロボットを頭上に持ち上げ、地面に叩きつけた。


その間、他のロボットたちが旋回し、嵐のようにアーサーに引き続き襲いかかる。

彼はすぐに体勢を立て直し、振るわれる鋭い爪を跳ねるように避け、相手の肩に飛び乗る。

「いやっ!」と叫び、後ろからロボットの首に一撃を加えて押し倒した。


すべてのロボットが攻撃を交代で行い、獅子王アーサーを取り囲む動きは止むことがなかった。

しかし彼は決して屈することなく、まるでダンスをするかのように戦場を舞い、次々と攻撃をさばいた。

彼は太陽に向かって誇らしげな獅子の咆哮を放っていた。




ふいに周囲の静けさに気づいた彼は、息を整えながら無力化したロボットたちに目をやった。

青いロボットから取り出したかけらは、ボロボロに砕け散っている。


「うーん、このままではポイントにならないぞ」と、彼は口元に手をあてた。


すぐに彼の頭に響いてきたのはアレクの言葉だった。「本番ではできないことを無理にやるのではなく、今持っている力でどう戦うかなにが最適かを考えろ」と彼は自分に語りかけるように呟いた。


彼は素早い数の多い青いロボットと戦いは避け、緑のロボットに狙いを絞ることを決意した。




獅子王アーサーは森の中を進もうとしたその瞬間、背後から聞き覚えのある声が響いた。


「なーっはっは、また会ったな!」


その声に反応し、獅子王アーサーが振り返ると、そこには本人の倍以上の長さはある長い太刀を背中に抱えたモモンの姿が立ちふさがっていた。

彼の歯が特徴的にちらりと覗き、目はどこか意地悪げに輝いている。


「君と会ったのは初めてだが?」と獅子王アーサーはあくまでも平静を装おうとし、優雅に言葉を紡いだ。

「それに、どうして予選会場のここにいるのだ?」


モモンは鼻を鳴らして笑いながら応えた。「俺様は何でも知ってるんでな、王国内の情報は俺に筒抜けなんだよ。予選会場に紛れ込むことなんて大したことないんだよ。」


その言葉に、獅子王アーサーの眉がわずかに動く。内心の動揺を表には出さない。


続けてモモンは挑戦的な目を細め、「おまえ、森で会ったガキと、近くに隠れてた小さいやつだろ」と何気なく口にした。


獅子王アーサーは一瞬どきりとしつつも、笑みを浮かべて断固として否定した。

「そんなわけないだろう。私はどこからどう見てもひとりだが?君が言っているのは小さい子たち2人のことだろう?」


モモンは彼の言葉を軽く受け流し、くすくすと笑った。

「みんなに広めちゃおうかなー。」


その一言に、獅子王アーサーの心にさらなる焦りが生まれる。だが、彼は冷静を保ち話す。「なにがしたいんだ?」


「広められたくなければもう一度俺様と戦え!」


「もし、戦えば広めることはしないのか?」そんなことでいいのかとカエデは安堵した。


「お、てことは認めるってことだな、いいぜ!俺様は約束を守るんだ。」




森の中、獅子王アーサーとモモンが睨み合い、緊張感が静かに漂っていた。

森を通り抜ける風が彼らの皮膚を撫で、木々がざわめく音が耳に聞こえるだけだった。

獅子王アーサーは、試合の制限時間を考えて手早く決着をつけようとする。


彼は腕に白い『気』を集中させ、さらに体全体に炎の如き力をみなぎらせた。

その炎は彼の腕から燃え上がり、黄金色の瞳が鋭くモモンに向けられる。

獅子王アーサーはまるで正義の剣を振るうかの如く全力で突撃した。


「覚悟しろ!」と叫び、彼は一撃でモモンを仕留めようとその拳を振り下ろす。


しかし、モモンは驚くほどの身の軽さで背中の太刀を抜くと、その太刀で滑らかにその獅子王の攻撃を受け流した。

獅子王アーサーは、不意を突かれて一瞬にして大きくバランスを崩させられた。


「もらったぜ!」とモモンは挑発するように声を上げ、獅子王の攻撃を受け流しながら、くるりと体を回転させるとその勢いのまま太刀を獅子王の首をめがけて振り下ろした。

まずい!獅子王は防御しようとしたが時すでに遅し、モモンの太刀が獅子王の首に触れる。


獅子王の首から大量の血が―――出ることはなくモモンの太刀は獅子王のたてがみにモフッと当たりとまった。




その瞬間、モモンの顔に驚愕と動揺が広がる。「こ、これは…まずい…!」と青ざめた表情になり、観念したように手を引っ込めようと試みたが、時すでに遅し。獅子王アーサーの拳が赤々と炎に満ちる。 


「いざ行くぞ!」その拳がモモンを捉え、彼は吹き飛ばされて森の奥へと消えていった。

「くそー覚えてろー!」モモンの声が風に乗り、彼の姿は遠ざかりながら見えなくなっていった。


獅子王アーサーは肩をすくめ、モモンが去った方を遠く眺めた。

「本当に彼は面倒な奴だな」と、心の中でカエデが小さく呟く。

しかし、彼にとって重要なのは時間を無駄にせず予選を勝ち進むことだった。


「よし、気を取り直してロボットを探しに行かないと」


獅子王アーサーは再び歩き出した。

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