第44話 咆哮
獅子王アーサーは森の中を駆け巡り、慎重に緑のロボットを探し続けた。
日の光が木々の間を差し込み、柔らかな緑の絨毯が視界を覆う中で、彼の心に次第に焦りが募り始める。
そしてようやく、獣のような筋骨隆々たる体格をした緑のロボットが姿を現した。
彼は、素早く茂みの中に隠れ静かに息を整える。
ロボットはこちらに気付かず、なぎ倒した木を乗り越えるたびに重低音を響かせる。
獅子王は今が好機と判断し、静かに回り込み、背面から一気に距離を詰めた。
颯爽と跳躍すると、彼の手は力強く緑のロボットの首元に飛びついた。
緑に輝くパワージェムが目前に迫る。獅子王アーサーは腕に白い『気』を集中させ、そのパワージェムを無理やり引きはがそうと気合を入れるが、瞬く間にロボットは激しく横に振り払おうとし、ブンブンと音を立ててその場から獅子王を振り落とした。
彼は一瞬のうちに地面に叩きつけられ、四つん這いで再び立ち上がる。
緑のロボットは連続して追撃を試みようとしたが、獅子王は敏捷な足取りで軽やかに攻撃を避けた。
次々と繰り出される鋭い振りの中で、彼は素早く新たな作戦を練る必要があった。
「そうだ、足を狙おう」彼の心にひらめく。
足を破壊することで動きを止め、再びパワージェムを狙う作戦だ。
そして、その作戦通り獅子王はロボットの攻撃を避けながら低重心で足元に近づき、片足を狙った。
流れるような動きで、彼は足払いの要領で『気』を纏った蹴りを叩き込み、緑のロボットの一方の足を見事に破壊した。
膝から崩れ落ちたロボットの鈍い振動が地面に伝わる。獅子王はその機会を逃さず、飛びかかり再び背後に回り込んでパワージェムに挑む。
「さあ、逃がさないぞ!」確信に満ちた声を響かせ、獅子王は無数の精緻に組み合わされた機械を視界に片方の足で踏み込み、グリップを利かせた。
動きが封じられたロボットは、手で獅子王を引きはがす動作を試みるが、彼は粘り強く、何としても引きはがさせまいと力を込める。
『気』を腕に漲らせ、爆発的な力でパワージェムを引きはがそうと奮闘した。
パワージェムが引きはがされた。
獅子王アーサーはその途端、勢い余って彼の体は後ろに飛躍した。
そして、背中から地面に落ち、かすかな痛みに顔を歪ませながら起き上がる。
「いてて」と小声で呟きながら、しかしすぐに手に握られたパワージェムに目を移した。
緑の宝石は無傷で、太陽の光を受けて輝きを放っていた。
欠けることなく保たれたその美しさに、獅子王は安堵した。
彼がふと顔を上げ、先ほどのロボットを見やると、装甲に覆われたその巨体は手をだらんと下げ、動きを止めて物言わぬ鉄の塊と化していた。
だが、気を緩める暇もない。彼の右手から微かなピピピという機械音が響き、リストバンドのようなものが装着されているのに気付いた。
「4ポイント」と表示されていた。
彼はその要領で緑のパワージェムをもう一つ手に入れ、合計8ポイントを集めることができた。
その時、風に乗って聞こえてきた戦いの音が彼の注意をひいた。
獅子王アーサーはすぐさま反応し、忍者のごとく気配を消して静かにその音へと近づいた。
慎重に動きながら木の陰に身を隠し、そっと顔をのぞかせた。
音の発生源には、銀色の髪が風に揺れるクリームの姿があった。
彼女は青のロボット5体と対峙し、その手から凍えるような冷気が漂っている。
その冷徹な瞳は鋭くロボットたちを見据えていた。
青のロボットたちはクリームとの緊張した睨み合いを続けていた。
それぞれの機械的な目が彼女を鋭く見据え、冷たい瞳の奥には次なる行動を計算する意思が駆け巡っているようだった。
その時、クリームの背後からさらに5体の青のロボットが音を消すように忍び寄り、攻撃を仕掛けようとする。
その動きに気づいた獅子王アーサーは森の影から「危ない!」と声をかけようとした瞬間、クリームを中心として四方八方へと氷の斬撃を放たれた。
その凍てつく冷気は瞬く間に広がり、周囲の空気を一気に凍らせた。
獅子王アーサーは木々の陰から、突然の攻撃に体をひねり何とか避けることができました。
鋭い氷の刃が間一髪で彼の皮膚をかすめ、冷たさが残された空気の中に漂っていた。
彼が再び視線をクリーム達に戻すと、青のロボットたちは機械的な音響を立てていたが、その手足は凍りついて一切の動きが封じられていた。
クリームの表情は微動だにせず、その冷たい視線を彼らに向けた。
彼女は動じることなく、氷の破片を素早く拾い上げると、それを巧みにてこのように使い、次々と動けなくなったロボットから青いパワージェムを取り外していく。その動作は決然としており、瞬く間に10つの宝石をバックに収めた。
最後のパワージェムをバックにしまった瞬間、彼女の腕輪から断続的な大きなブザー音が流れ始め、クリームの表情が微かに動いた。
きらりと光る目を森の中に走らせ、警戒の態勢を取る。
しかし、危険な雰囲気は微塵も見せず、近くのスピーカーから陽気なマイクの声が響く。「さあ、クリーム選手が見事10ポイント満点を獲得したようだ!」観客たちはその言葉と共に歓声を上げ、一層の高まりを見せた。
「さて、ここからが本番だ!」とマイクの声が響いたその瞬間、森全土に響き渡る大きな咆哮が轟いた。
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