第41話 予選開始

選抜戦の開会宣言が終わり、観客たちの期待は最高潮に達した。

ドーム全体を包み込む歓声は、まるで生きた波のように選手たちを飲み込み、獅子王アーサーとして舞台に立つカエデの心をも揺さぶった。


壇上のマイクはその場を見渡し、満足そうに微笑んでから、手元のマイクを手に取り、声を響かせた。

「さて、それでは今回の選抜戦の流れについてご説明しよう!」


彼の明るい声に、会場の中の全ての目が彼に集中する。「まずは、予選を行う。この予選で勝ち残った人たちが次なるステージ、トーナメントに進むことができるぜ。」


マイクはわざとらしく一旦言葉を途切れさせ、観客と選手たちをじらすように微笑を浮かべ続ける。「じゃあ、予選がどんなものかって?」


彼は観客席を指差し、興奮した空気を盛り上げた。


「さあ、選手のみんな、フィールドの端、観客席の近くに寄ってくれるか!」


選手たちは観客席に近い端に移動しながら、何が待ち受けているのかとざわめきを漏らした。


マイクは選手たちがフィールドの端に到達したのを確認すると、ニヤリと笑いながら「予選のフィールドはこれだ!」と宣言した。


その言葉と共に、ドームの地面が大きく揺れ動いた。まるで生き物のように、地面から緑の木々が次々と現れる。

にょきにょきと生える大きな森が、フィールド全体を覆い尽くした。


選手たちの前で次第に形を成す森に、観客は歓声を上げ、選手たちはどよめいた。

フィールドは皆の驚きと興奮で溢れた。


「今回の予選はポイント争奪戦だ!」マイクは、森の形成に感嘆の声を上げる会場を見渡しながら続けた。

「皆さんには、この森の中で10ポイント集めてもらう。そして制限時間内にこの森にある4つの出口のいずれかから出られたら合格だ!」


「そして、君たちの相手はこちらだ!」声高に叫ぶと、空から2体のロボットが選手たちの前に降り立ち、その衝撃で地面が振動した。


観客席から驚きの声が上がる中、ロボットたちは一斉に体の向きを変え、眩い輝きを放つ宝石を露わにした。


「いいか、皆!こいつらの光ってる宝石、見えるか?」マイクは手に持ったマイクを軽く振りながら続けた。

「これは、魔物の弱点、パワージェムをモデルにして作られているんだ!」


カエデはあの宝石にはそんな名前があるんだと思った。


「ポイントを手に入れるためには、こいつらのパワージェムを壊して宝石の台座を持ってくるか、台座ごとパワージェムそのものを取って持ってくるんだ!」

マイクは説明を続ける。




選手たちの前に降り立った2体のロボットは、光り輝く宝石を擁しており、その存在によってフィールド全体に緊張感が漂った。

観客席からは興奮が止まらず、波のような歓声が響きわたる。


「まずはこいつ!」と、マイクは力強く指をさし、一体のロボットを示した。

青色を基調としたそのロボットは、四足で俊敏そうに動き、まるで鋭敏な獣を思わせる。

体長は大きすぎず、それでもその揺るぎない力が全身から溢れ出ている。

滑らかな胴体と、流れるような曲線の脚部を持ち、首の後ろには青く輝く宝石が埋め込まれていた。


「こいつは、群れで行動する習性のあるタイプだ。狙うべきは青の宝石!それぞれ傷を一切つけずに持ってくれば、1つにつき1ポイントだ!」マイクの言葉に、選手たちはその情報を静かに心に刻んだ。


次に彼が指さしたのは、さらに巨大でたくましい体格を備えた緑色のロボット。

上げるほどの筋骨隆々たるその姿は、大熊の魔物グリズィを模したようで、戦闘時の力強さを物語っている。

体毛の代わりにメタリックに輝く装甲が施され、首には緑の宝石が埋め込まれている。


「これは緑の奴!宝石の台座のみで1ポイント、傷がついた宝石は2ポイント、傷一つない状態で持ち帰れば4ポイントになる!簡単じゃないぜ!」


そして最後のロボットを指差し、

「今回の目玉はこいつだ!」マイクが言い終わると、森の背景を覆い尽くすように立つ10メートルほどの人型のロボットが空から現れた。


赤いロボットがその全貌を現すと、会場全体に再びざわめきが広がった。

観客から歓声と悲鳴のようなものが上がり、選手たちには緊張感が走った。



選手たちの目に、その圧倒的な存在感と威圧感が映し出される。

輝く赤色の装甲に覆われ、メタリックなボディが太陽の光を浴びながら輝き、絶対的な存在感を放っていた。

大きな体躯が、まるで高層建物のようにそびえ立ち、その一部が森の木々を超えて顔をのぞかせるほど。

きらびやかな赤色の装甲に覆われ、動くだけで鉄の響きを立て、力強さと威圧感を高らかに歌い上げている。


その巨体のでこには、眩いばかりの赤い宝石が埋め込まれている。

マイクはその宝石を指差し、重要な説明を続けた。「赤の宝石が狙いだけど…壊しちゃっても、傷をつけても、無傷でも、どの場合も取れば10ポイントだ!でも、くれぐれも覚えておいてくれ、この赤いのはめっちゃ強いからな!」


観客席からはさらに興奮する声が上がり、選手たちの間には微かな戦慄が満ちていた。


「この赤い奴は1体しかいない。遭遇しないようにして動くのもひとつの手だ。でも、それができるかな?」とマイクは挑発的に微笑み、ロボットの恐るべき強力さを示唆した。


「宝石が壊されたり外されたりしたら、もちろん、ロボットは動かなくなる。この試練の鍵は、いかに賢く立ち回るかってところにあるぜ!」


マイクは一通りの説明を終えると、再び会場全体を見渡し、

「もう一度言うが、制限時間内に合計10ポイントの物を持って森から出られた者がクリアだ!」

マイクはニヤリと笑った。




「そうだ、今回は出場者の関係で10グループに分けて順番に行うことになってるから、しっかり準備しといてくれ!」


そして、大きな声で宣言した。「それじゃあ、一次予選開始だ!」彼のその一声がフィールド内外に鳴り響き、観客たちはさらに高いテンションで声援を送った。

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