第11話 初めての魔物
その夜、月明かりが木々の間から柔らかく差し込む中、カエデはいつものようにアーサーと並んで森の中を進んでいた。
明日は王国での選抜戦の登録の日。早く寝る必要があったが、それでもカエデは夜の実戦訓練を欠かしたくなかった。
アーサーと共に鍛えた時間は、彼女にとって大切な心の支えだったからだ。
二人は互いに合図を送りながら、軽快に動き続ける。
徐々に周囲の木々がまばらになり、開けた場所にたどり着くと、カエデは立ち止まった。
その場には、予期せぬ魔物が佇んでいた。
カエデは驚きを隠せなかった。
アーサー以外の魔物を目にするのは初めてだった。
それもそのはず。町や森は、高い壁で囲まれており、魔物程度の知能では侵入することが難しい。
極々稀に、数年に1度あるかな以下のレベルで、壁から侵入してくる魔物はいるが
コアを応用し門以外からの侵入者を検知する仕組みになっているため
即座に警報がなり、カエデが見かけることもなく討伐されていたため、
見たくても見れなかったのだ。
町で家畜として飼われている魔物は何度か目にしたことはあるが、
それは賢い人たちが食用に改造していたため、目の前の魔物とは全く異なる雰囲気であったのだ。
その魔物は、アーサーと同じで、アリスの膝下ほどの大きさだった。
全身は濃い灰色で、バラの茎のような棘に覆われた蔓をもち、
それはまるで生き物のようにゆっくりと伸縮させていた。
顔のように見える花の部分には鋭異な歯が整然と並んでいた。
目はぱっと見ではわからないほど小さく、存在を隠すような印象を与えた。
周囲は整然とした森の一部であり、その魔物がここにいるのは不自然に思えた。
まるで、そこに突然現れたかのような違和感を強く感じた。
アーサーが前に出ようとするのを見て、カエデは手を挙げて制した。
「アーサー、この戦いは私に任せて。自分の力を試したいの。」
カエデの言葉を理解したアーサーは、少し不安そうに見えたが、やがて頼もしく頷いて後ろに退いた。
カエデは木製の剣を構え、目の前の植物の魔物を見据えた。
幸いまだこちらには気づいていない。
彼女は自分の心臓が速く鼓動するのを感じながらも、
これまでの訓練の日々が、彼女の力となり自身を支えている。
カエデは深呼吸をし、魔物に向かって踏み込む。
カエデは先制攻撃を仕掛けた。鋭い動きで魔物に迫り、木剣を振り下ろす。訓練の成果を試す、初めての実戦。
その瞬間、カエデの冒険はさらに新たな局面を迎えた。
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