第三話 魔法学校編ってやつ?


俺は魔法学校に怯えながらユキちゃんと登校道中を歩く。くっそ……本当なら部屋に引きこもる予定だったがさっきの事故のせいで予定狂ったぜ……

そう考えていたらユキちゃんが少し不安げな顔をしながら話し出す。

「そう言えば今日のテスト大丈夫かな。でも大丈夫だよね!昨日あんなに"レイン"の練習したんだし」

「"レイン"?」

聞きなれない言葉に思わず聞き返す。

「忘れたの?初級雫魔法しょきゅうしずくまほうの"レイン"。そう言えばさっきのスライムに襲われてた時も雫魔法お願いって言ったのに出来なかったし……テスト大丈夫?」

「や、ヤバいかも……」

俺は素直にそう返した。かも……というか絶対無理だが。

「ええー!!」

ユキが驚い顔をしてそう言う。

こりゃ先が思いやられるぜ……


そんな会話をしながら俺とユキちゃんは学校に着いたようだ。

王立魔法レープン学校と書かれた石の看板が校門の前にあってそれを読む。

「やっぱり魔法学校か……」

俺はそう思わず呟く。

その俺にユキちゃんは不思議そうに答えた。

「当たり前でしょ〜。今日のペスカちょっと抜けてるし本当にヤバいかもねテスト」

「だよね……魔法の教科書とかねーのか……じゃなかった。ないかな?ちょっと復習しようかなって思ってさ」

この世界に教科書なんて物があるのかは知らないが一応聞いてみた。

「うんあるよ!ってか持ってるでしょ?」

「いや……分からない」

「何でよ!いつもカバンに入れてるでしょうが!」

そう言ってユキは俺の頭を軽く叩く。

ちょっと悪ふざけな感じだ。

俺はそのノリに合わせて答える。

「ごめんごめん。そうだったね」

「ふざけてるの?もう〜。それじゃ入ろっか」


その言葉を皮切りに俺とユキちゃんは校門の先に入り、魔法学校の入り口へと足を運ぶ。

魔法学校なだけあって近未来的な様相をしていた。中央に校庭があって人工的な草が生い茂る。青く透明に光る線がその校庭の宙に浮いている。その線は0と1が交互にそして無数に書かれ細長かった。

長さは五十メートルはある。恐らく何かのプログラムが書かれた物だろう。

空には八割ガラスで出来たドーム状の突起物が覆い被さる様にあり、それが天井となっていた。ちなみに残りの二割はグレーのコンクリートであり、それが端に付いていて地面と繋がっている。

人工的な校庭と表現するとそれは分かりやすかった。

俺はそんな感想を抱きながらユキちゃんと学校の入り口に着いたようだ。

直径三メートルくらいある透明なガラスで出来た自動ドアが中央にあり、そこから入る形のようだ。

その自動ドアの手前に人の背丈ほどある透明な板があった。

それをユキちゃんが通る。

「No.75 ユキ・ホワイト。認識完了」と機械音声が鳴る。

俺はそれをみてあたふたし始める。

「な、何これ」

その俺の発言にユキがまたもや驚く。

「忘れたの?学生証認識システム。いつもやってるし……なんか本当におかしいねペスカ」

「え、ちょっとふざけただけだってごめんごめん!」

「ふーん……」

少しユキちゃん怒ってきてんな……

俺はそのユキちゃんの心境の変化を感じ取り不安になる。

と、とにかく学生証認識システムとやらを通るか。

俺はそう思いその透明な板を通る。

ちょっと怖くなって目を瞑りながら。


「No.85 ペスカトーレ・フォン・アストラ」


なんだこの名前は……俺は木毛きも 尾田おたというカッコいい名前のはずだが。

俺は自分の名前が変更されたことに若干怒るが転生というのはこういう物だと溜飲を下げる。

ユキちゃんが先程の機嫌の悪さは無くなったのか普通のノリで俺に話しかける。

「それじゃいこっか」

そう言ってユキちゃんは学校の入り口の自動ドアの前に行く。

自動ドアは静かに開いた。そのユキちゃんの向こう側に見える光景……それは青く透き通る物質で作られた大きな階段が中央にあり、その上に広い天井。壁は大きくて広いガラス張りで作られた空間だった。そのガラスから透き通る青空が綺麗だった。

これが魔法学校……綺麗すぎてこのまま昇天しちまいそうだ。

そんな感想を抱きつつ俺もユキちゃんの後を追うべく自動ドアの向こうに行く。

ユキちゃんに追いつき、さっき見た青く透き通る階段を二人で登り始める。

ユキちゃんが話し始めた。

「やっぱりペスカの名前はかっこよくて羨ましいな〜」

「そうかぁ……?木毛尾田の方が……いや何でもない」

やべ……つい俺の本名を言ってしまった。

「そんな謙遜しなくていいのに!ってかキモ……?なんて言った?」

ユキちゃんが当然だがそれに突っ込みを入れてくる。

俺はそれを濁す。

「なんかほら、肝引き締めてこうってさ。テストだし?」

肝引き締めるなんて言葉を使うのは初めてだった。

「そういう事ね!そうだね。ペスカは教室行ったら教科書読んで復習安定ね」

「なんかめんどくさー……でもやるしかないか」

本音が溢れてしまってすかさず言い換えた。

っていうか復習なんてどうせやらないけどさ。

だってこのペスカって子がどうなろうが俺は正直どうでもいい。

俺はそう内心で言葉を出す。

階段を登り切るとガラス張りの廊下が見えた。

外のお日様が入ってくる仕様になっていて、そのガラスの向こうには校庭が見える。

廊下には教室が無数にあり、どの教室に行けばいいのか分からない俺はユキちゃんの後をついていく。

ユキちゃんは2-Aと書かれた教室に入る様子だ。

そのユキちゃんの後ろをついて行く。

さて俺も……


その時だった。

「ようペスカ!」

後ろから背中を叩かれて俺は後ろをサッと振り返る。

「えっと……おはようございます」

「あれ?お前そんな謙虚でどうしたよ」

俺は思わずそう丁寧語で挨拶をした。

もしやペスカって子の友達か。俺にとっては初対面だ。どうやらペスカちゃんは普段から謙虚なキャラではないのか?

ってか男か……俺はユキちゃんとラブラブしたいって思ってたのに!

「ごめんごめんちょっとふざけただけ」

「なーんだ。テストだから緊張しておかしくなったのかと思ったぜ」

そう言ってその男は赤髪のマッシュヘアーを触る。

なんかちょっと気に触る奴だな……

その男は続ける。

「もうすぐ先生来るし一緒に復習しようぜ。実は緊張してるんだよ俺」

「へー……でも俺……じゃなかった私も内心不安だしやろうか」

俺は絶対読まないと思っていたが教科書を読むことにした。

教室の奥の方の席、一番後ろの場所に俺達は移動する。教室は奥側になるにつれて上に昇るような形状をしているようだった。


「えーと……何だっけ……二十一ページか」

目次を見て男はページを探し俺に見える様に教科書を開いた。

「初級雫魔法"レイン"……魔法陣を足元へ展開し、マナを手に集中させる。そして呪文を唱える……だったな。このマナを手に集中させるのとか難しかったよな〜」

何言ってるのかさっぱりだが俺は話を合わせることにした。特に魔法陣を展開って何。

「そ、そうだったね……」

「呪文は確か、天界の者よ我に自然の恵みをもたらさん……レイン!だな。覚えるの大変だったぜ」

「うん……」


そう俺が自信なさげに言った直後、教室の扉が開く。

教室といっても古臭い木の匂いのする木造ではなくプラスチックと金属製の物質で構成された新しい感じの教室だ。その扉もガラス製で作られていて全面透明だった。


扉から出てきたのはどうやら黒影先生のようだ。

担任って言ってたもんな。

「それではテストを行います。出席番号順に一人ずつ呼ぶので呼ばれたら教室から出て校庭まで来て下さい。それと待ち時間で復習は禁止とします。見張りも付けますのでルール破りは通りません」

そう丁寧に黒影先生は宣言する。

そして、一番目のNo.55の人が呼ばれ、校庭まで行ったようだ。

ソワソワしながら隣の席のユキちゃんが話しかけて来た。

「緊張して来た……ペスカは大丈夫?」

「正直このテストもう諦めてるよ」

「えー!!落単するよ」


そんな会話をしながら俺は番を待つ。

そして遂にNo.85が呼ばれる。

「俺……私の番か」

一瞬俺と言いかけたが気にせずに俺は席を立つ。

「頑張ってペスカ!」

ユキちゃんの応援の声。

「頑張れよペスカ」

さっきの赤髪マッシュからの応援もきた。

俺は二人に返事を返す。

「が、頑張るね!」

本心では諦めてるし頑張るつもりはなかった。


〜第四話に続く〜

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